第1話 阿足さんはアニメ好き?
久々の投稿です。
生暖かい目で見守って頂ければ幸いです。
作者のモチベーション次第の不定期投稿になると思います。
「あーしこと、阿足ミクは!!!ここに!!!映像研究会設立を!!!宣言する!!!!」
「「「おーーー!!!」」」
埃っぽい部活棟の一室で木霊する、女生徒(3人)の叫び声。
「…………おーー」
1テンポ遅れて情けない男(自分)の声もひとつ。
「ンだよクソ陰キャが言いてェことでもあんのか!?」
「陰キャのクセに生意気だし」
なぜか2人に詰め寄られて罵倒を浴びせられる。ひどい。そしてこわい。
残った1人が笑顔を引き攣らせながら割って入る。
「まぁ待ちなってルカちんリオちん、青木クン怯えてんじゃん」
「っるせェなコイツがいつまで経ってもシャキッとしねェからだろうが!!文句あんのかって聞いてんだよ」
「そーだしハッキリしろし」
仲介も虚しく、再び胸ぐらを掴まれる。猛獣の手綱はしっかり握っておいて欲しいものだ。お陰で少しちびりそうだ。
「い、いえ特には……」
「じゃァ何も問題ねェよなァ!?ぶちょーサン?」
「は、はぁ」
そう、なぜか僕が部長ということになっている。
端から端まで訳がわからない現状だが、
事を説明するには30分ほど時を遡る――。
放課後の廊下、日が傾き始めて夕日が差しむ人通りの少ない休憩スペース。
それは、自販機のココアを買おうと、アニメのストラップの付いた財布を取り出した時だった。
「ねぇ青木クン、それってシカ娘の、ニホンジカたんのストラップだよね。好きなの?」
「あっいや、こ、これはその」
反射的にストラップを手で隠す。
この学校で、僕に話しかける人は少ない。それも女性となれば、ほぼいないに等しい。
しかし何故か今、話しかけられている。
声の主を振り返ろうとして、僕は絶句した。
自分で把握しているだけでも、うちのクラスには数人のオタク女子が存在するが、その内の誰でもない。
そこに居たのは紛れもなく、クラスの中心人物。
バリバリの陽キャギャルの阿足ミクさん。
その当人が、至近距離で話しかけてきている。
うん、意味がわからない。
「ねぇ、聞いてるんだけど」
「えっ?あ、あぁうん、そう、ですけど」
そう言うと阿足さんは目を輝かせてさらに近くに寄ってきた。
「やっぱそうなんだ!!青木クンはオタクっぽいなぁと思ってたんだけど、合ってたね!」
並びの綺麗な歯を出してクスクスと笑う阿足さん。
顔が上気して目を合わせられない。
「す、すみません」
「なんで謝ってんのウケる〜」
僕の脳はショート寸前だった。
一体何が起きているのか、なぜ阿足さんが僕に話しかけているのか、なぜシカ娘の話で盛り上がっているのか。
全部が意味不明すぎて、理解が追いつかない。
「……あっ!!」
「ほぇ!?」
阿足さんが突然大声を上げ、すぐいたずらっ子のような表情に切り替わる。
「あーし、イイコト思いついちゃったかも」
「は、はぁ」
何だろう、凄く嫌な予感がする。
「青木クンは何か部活入ってる?」
「いえ、特には入ってないですけど……」
阿足さんの瞳の輝きが増す。
「マ!?じゃあさじゃあさ!!青木クンが嫌じゃなかったら……あーしらと一緒にアニ研作らない?」
嫌な予感というのは、往々にして当たるものだなと痛感したのだった。
如何でしたでしょうか。
どのような形でも良いので、感想を頂ければ作者のモチベーションに繋がります!!