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人魂の正体

作者: モモモタ

 祖母がよく言っていた。



「昨日の夜、人魂が窓の外にいたわよ」



 人魂は、いろんな説がある。死者の体から出るリンがどうとか、光の反射とか、灯篭の明かりがそう見えただけとか、色々だ。だが、祖母の部屋は2階で、墓なんて当然見えない。それでも、祖母は人魂を何度も見たというのだ。私達は夢でも見たんだろうと話すが、祖母は頑なに譲らず。



「嘘だと思うなら、一緒の部屋で寝てみたらいいよ」



 だが、私達が見る事はなく、ある日を境に、祖母は見たという話すらしなくなった。気になったので、人魂の事を尋ねると。



「最近人魂見なくなったの? 話さなくなったけど」


「もう見なくなったから」



 言葉の意図は分からないが、私達が信じないからそう言ったのかもしれない。結局人魂の真偽は分からないまま、数年後。祖母が他界し、祖母の部屋は私の部屋になった。祖母が亡くなった悲しさを引きずりつつも、進学し、新しい生活に慣れ始めた頃。



「……うるさい」



 夜中。何かの音で目を覚ます。それは、窓を叩く音だった。



「誰よ、もう……」



 目を開けて、驚いた。そこには、緑色に光る火の玉が、3つ。宙に浮かび、窓を叩いていた。



「え、う、嘘、人魂!?」



 布団から飛び起きて、目に映るものが本物なのか疑う。目をこすり、頬をつねる。痛い。夢じゃない。本物だ。間違いなく、人魂だ。



「おばあちゃんの言っていたのは本当だったんだ」



 怖いという感情はなかった。人魂はただふわふわと窓の外で浮かんでいるだけ。私はスマホをかざし、写真を撮る。だが、フラッシュで照らされた直後。人魂は消えてしまう。



「あー」



 ちゃんと写ったかを確認しようと思い、画像を開くと。



「……っ!」



 そこには、人魂は写っていなかった。代わりに写っていたのは、苦しそうな表情を浮かべ、窓に張り付く3人の人影だった。どうしてあの部屋には人魂が来るのかはわからない。けど、祖母が人魂の事を話さなくなったのは、もしかしたら……私と同じように、証拠の写真を撮ろうとして、知ってしまったのかもしれない。人魂の正体を。



                         完

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