伝説に残る暇つぶしをしよう!【短編】
「暇だな……」
久しぶりの長期の休みだと言うのに、運悪く外ではウィルスくんが大繁殖で大流行で行く当てが無い。
「ゴホッ。もしもし……、どうしたの?」
「暇だったから電話してみた」
「プチッ!そんな事で電話する暇あったら!ウィルスくん殲滅してきてっ!ゴホッゴホッ!!」
ガチャン!ツーーー……。
俺が暇になった原因の一人の僧侶は、今もウィルスくんに苦しんでいるようだ。
他にもアタッカーの槍使いや魔法使いもいるが、軒並みウィルスくんにやられて寝込んでいる。
「僧侶が体調崩してちゃ世もおしまいだな」
ウィルスくんは本体を倒せば他は勝手に消滅するらしいが、タンク役の俺では倒し方も分からないし、そもそもウィルス相手に剣でどう戦えと……。
俺にあるのは前衛で戦うタンク役に必要なスキルだけだ。
敵とその攻撃を引き付けるスキルと高めに上げた各種耐性……。あと、盾関連のスキルと付け焼刃程度の剣のスキルだ。
俺だけが無事で済んだのも、この高めの耐性のおかげだ。
「つーか、本体も含めて目で見えないようなウィルスくんにどう立ち向かえってんだか……。あーでも、ウィルス耐性上げ程度ならできるか。なんたって暇だしな」
逆転の発想だった。
俺にはタンク役で鍛えた敵とその攻撃を引き付けるスキルと高めの耐性があった。
それに、外はウィルスくんうじゃうじゃで相手に事欠かない。
大流行しているウィルスくんをどうにかする必要はなく、ちょっと耐性を上げる程度でいいんだ。
なら楽勝だなとか思いつつ、俺はパンツ一丁で外へと繰り出した。
今外はウィルスくんが流行しまくってる為に誰もいない。そしてウィルスくん相手に普通の武器も防具も無意味。
俺は今でしか味わえない開放感のあるスタイルで、ウィルスくんを集めて体に取り込みまくった。
その結果無事ウィルス耐性も上がり、そして……。
「マジかよ……」
今俺はテレビカメラの前でマイクを向けられていた。
パンツ一丁の姿でだ……。
なんでかって言うとだ。どうしてもウィルスくんと戦った時の姿で出て欲しいと言われたので仕方なくだ。
「伝説に残る活躍をしたわけですが、今のお気持ちをどうぞ!!」
暇つぶしで始まった俺の耐性上げは、やがてウィルスくんの脅威から世界を救ってしまった。
そして俺はパンツ一丁のまま、伝説の英雄になってしまったのだ。
ただし、今のこの姿の俺に言える事は一つだ。
「この姿を全国放送すんじゃねーーー!!」