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連なるもの ~菅田の事件簿~  作者: こでまり
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噤む 後編

 菅田と鍋島は副支配人室に居た。

「直美と純子は別に犯人がいたのでしょう」

 鍋島が菅田の考えを読み取っていた。

「多分」

「多分ですか」

 鍋島はいいですけど、と言いながら、集めた写真を見ていた。

 その一つ、北見の婚約者はイシカワユウカという。

 高梨の娘だ。

 高梨の机に飾られた写真に写っていた女性は直美と純子によって自殺に追い込まれた。それを知った高梨が直美を殺したのだろう。

 あくまでも菅田の推測に過ぎないが、それを知った北見が直美を殺した犯人を純子に仕立て、直美を殺した。

 北見は高梨の罪をかぶるつもりでいるのだろう。菅田もそれ以上は追求しなかった。

それぞれが殺したいほど、あの兄妹を憎んでいた。あの時、チャペルのホールで聞いた話に菅田は瀬田のしたことの大きさを痛感した。

平井真衣の父は昌紀と知り合いだった。その縁で瀬田とも知り合い、瀬田の詐欺にあい両親は死を選んだ。昌紀は平井の父が騙したと言い張り、警察にも疑われて執拗な取り調べが行われていた。

長谷航は母が瀬田の愛人と誤解され両親が離婚した。瀬田が務めていた会社に事務員として働いていたが関わりは殆どなかったらしい。

ただ、美緒が瀬田の勤めていた会社の女性の何人かに手を出しているのを知っていた為、長谷の母も愛人で騙されていたと言っていたという。

 後に誤解だと分かったが母親は心労がたたって亡くなったと言っていた。

堀川は結婚前提の付き合いをしていたのにも関わらず、昌紀が取引先の会社社長の令嬢と婚約した途端、捨てられた。

瀬田の事件後、婚約破棄されると何事もなかったかのように戻って来て、今度は別の会社役員の令嬢との婚約話が出て来ていたという。

堀川は都合のいいように扱われるのがもう嫌だったと言っていた。

菅田は瀬田の裁判の帰りに寄った喫茶店で、置き去りにされている堀川を見かけたことがあった。

確かにあれは酷いと思う。そして、その堀川に声をかけていたのが北見だった。

今回の事件は解決済みと警察は見ている。三島にもしっかりと口止めをしておいた。

菅田はあの四人に全てを託した。自分たちからは何も言わないと約束した。

何を考えて、どう行動するかは任せることにした。

残りの一人、島崎は……。

どうするのか。

彼は犯罪者ではない。ただ、顔見知りを匿ったに過ぎない。その顔見知りも犯罪を犯していないので問題はないだろう。

それにしても佐伯はどうしてあんなことを知っていたのか不思議でならない。

「佐伯さんはどうして島崎のことを知っていたのでしょうか」

思わず呟いてしまった。

「それがあの佐伯さん所以でしょうね」

鍋島が食えないお人だからと笑っている。菅田も笑えてきた。本当に食えない人だ。

島崎はこのホテルの元従業員で瀬田の事件の時に殺された倉田卓也の実の兄だった。

倉田は養子で、倉田家は代々旅館を営んでいた。子供に恵まれなかった為、弟の家、島崎家から卓也を養子に迎えた。

島崎は海外の有名洋菓子店で働いていたパテシエのようだが、素性を隠して弟が亡くなったホテルを見にきたと言っていた。

事件を海外で知って、弟が亡くなったホテルに問題でもあったのではないかと探りに来ていたようだ。

佐伯は戻るところがなければ、ここで働けばいいのにとしきりに言っていた。

あの様子だとすでに田辺にも話しているだろう。もしかしたら、社長の三上にも話しているかもしれない。

「佐伯さん、あの不審者が逃げたのを見ていたのでしょうか」

菅田は多分そうだろうなと思いながら一応、鍋島に聞いてみた。

「見ていたでしょうね。店の外に出ると木々に覆われているとはいえ、搬入用の通路は見えましたから」

鍋島が以前スマホで撮ったカフェの前の映像を見せてくれた。

そこには搬入用の車が写っていた。

「だったらどうして言ってくれなかったのしょうか」

菅田は愚痴る。

「佐伯さんだから」

 鍋島は諦めろと言わんばかりに頷いている。

「そこも食えない人ということですか」

 菅田が聞き返すと鍋島は自重気味に頷いた。

なんてこった。

菅田は頭を抱えた。

「田辺さんも同じことを考えていた時がありましたよ」

「まさか、柏木さんの時ですか?」

「そうです。あの時、田辺さんと私、今西が必死に調べ上げたものの半分以上をあの方は知っていたようですし。私たちも教えてもらえませんでした」

菅田は安心していいのか悪いのか複雑な感情を抱いた。

「私は踊らされていたのでしょうか」

自分が情けなく聞くと、田辺さんも同じことを言っていましたと教えてくれた。

数日後、あの四人は出頭したとニュースでやっていた。その後、高梨も出頭したのでしばらく大きなニュースとして取り上げられていた。

「帰ってきた」

菅田は実家に来た。

玄関で出迎えた父は瞬きをなんども繰り返して菅田の車に積まれた荷物を見ていた。

「この荷物は?」

「マンション引き払ってきた。ここに一緒に住んでもいいよね」

「喜んで」

菅田は先日、父の言っていた言葉が耳から離れなかった。

(高梨はもう娘と住むことは出来ない)

何が起こるかわからないからと思うと腑に落ちた。

父は奥にいる母親に直樹が帰ってきたと叫んでいた。

そんなに嬉しかったのかと驚いた。

玄関に現れた母さんは目に涙を浮かべていた。

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