アリバイ
菅田は美緒が怪我をした時の本館の防犯カメラを見ていた。三島が以前見た物とは違う、別のカメラが捉えた映像だ。
美緒は誰かを庇っている、それが誰なのか知ることで今回の事件を明らかにすることが出来ると思っていた。
警察は一定の解決を見ているようだが菅田はそうは思わない。
チャペルが終わる時刻から何度も見ているが、本館のフロント付近は人で賑わっていた。鍋島は原田がいなくなった日の防犯カメラをの映像を見ていた。
「あの二人、美緒が菅田さん達を襲うことを知っていたというのですか?」
鍋島がパソコンで映像を見ながら聞いてきた。
「あの二人は美緒を陥れようとして、美緒が私を襲った時にあの場所にいたとしたらと思ったのです」
菅田はそうでなかったら、美緒の後をつけてあの場を撮影しないだろうと思った。それにあの様子を見ても警察に届けようとしなかった様子から初めは友人を庇ってと考えたが、宇佐美の話から別の意味を考えてみた、その答えだった。
二人で映像を見ながら、二人が何を目的にここに来たのかという話になっていた。
「あの二人がもっと前に美緒を脅していたのだとしたら、美緒を突き落としたのは二人のうちどちらかではないかと思うのですが」
鍋島が言うのも分かる。菅田はそれなら宇佐美が感じたあの三人の関係性に疑問が出てくる。
美緒が怪我をした時点で脅していたのだとしたら、二人が美緒に気を使うこともないはずだ。それに能村の遺書にも矛盾が出てくる。もし、美緒を脅していたのだとしたら原田が亡くなった後、木村との関係を鍋島が見た時ではないかと考えた。それなら遺書とも辻褄があう。ただし、それでは別の疑問が出てくる。原田は本当に木村と言い争いで亡くなったのかと言うことだ。
堀内と美緒の兄、大崎正樹の遺体は見つかっていない。本当に木村純子が殺したのか?
どうやって?
田辺を襲ったのは大崎昌紀だろうか。菅田も今西もホテルで襲われている。田辺だけがホテル内、それもチャペルの庭園で傍に人がいる状況で襲われている。これはどう説明するのか。
美緒と昌紀ははかなり念入りに計画を立てていたはずだ。それなら田辺を襲ったのは今西の時と同じ予定が変わったと言うことだろうか。
あれほど念入りに計画を立てて犯行に及んだ昌紀と美緒がどうして田辺の時はチャペルで襲ったのか菅田はその理由も考えていた。
美緒が怪我をしたことが原因か?
確か医者は美緒の怪我は治っていると言っていた。そういうことか、菅田は映像をもう一度見直す。どこかにきっと残っているはずだ。
「ありました」
鍋島が声をあげた。
「誰ですか」
「大崎美緒です」
菅田は顔を歪めた。映像を見ると美緒はゆっくりだが、しっかりした足取りで原田をつけていた。
「木村はどうしていますか」
菅田は木村の事が気になった。
木村の遺書では原田を殺したのは自分だと言っていた。それなら原田と一緒にいたことにはるが、そこに美緒がいたとなると話は違ってくる。
「出ていきましたね」
鍋島は映像を見ながら言い、更に早送りして見ている。
菅田は鍋島の隣に座り直す。
一緒に映像を見ていると人影が映し出される。
「帰ってきましたね。一人です」
そこに映っていたのは木村だった。
その後、映像を見続けて美緒が帰ってきたのは木村よりも一時間も後だった。
「どういうことでしょうか?」
鍋島が美緒と能村が出て行った時間と帰ってきた時間を見て呟く。菅田も二人がホテルを出てからの行動が分からなかった。
確か、警察では二人はホテルの部屋にいたと言っていたはずだ。その後、木村の遺書では原田と言い争いになって殺したと書かれていた。その為、菅田たちは原田と木村は原田の遺体が発見された場所に行っていたのだと思っていたが、木村がホテルを出てから帰るまでの時間で、遺体発見場所の往復は誰か協力者がいないと時間的に難しい。
それに美緒の行動も気になっていた。何処に行っていたのか。
菅田は美緒の怪我をした日の映像を見始めていた。鍋島はその後、堀内が木村を呼び出した日の映像を見始めていた。美緒が隠している何かを見つけ出したかった。
どれくらいの時間が経ったのか、二人はひたすら映像を見続けた。
菅田は本館のフロントに入ってくる見覚えのある人物を見つけた。何度か映像を確認する。そこには原田がいた。
原田はあの時、部屋にいたと言っていたな。ここでも嘘があった。
菅田はそのまま映像を見ていると、木村も本館の入り口から入ってくるのが映っていた。
ますます分からなくなる。
映像を流れるように見ていくと原田と木村の行動は隠れるように本館の入り口から入ってきて、団体客に紛れるように部屋に戻っていく。
菅田はもう一度初めから見始めた。
美緒が本館を出ていくのが映っていた。その後、原田が出ていき続いて木村も出ていく。美緒は誰を庇っているのだろうか。




