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連なるもの ~菅田の事件簿~  作者: こでまり
偶然か?

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次の犠牲者 中編

「やはりそうでした」

菅田はその一言で謎が解けた。

「証言は?」

「ここに」

弁護士はSDカードを菅田に渡す。

「ありがとうございます。あの二人の処分をお願いします。私は警察に連絡します」

菅田の最終確認を聞くと弁護士は部屋を出て行く。

今年に入って採用した客室係の二人はこともあろうか、昨年の事件のことを宿泊客に話していた。

病院で聞いた噂を手繰っていくと、事件のことを調べていたのは容易に分かった。そして、その内容はホテルの従業員でしか知らない内容も含まれていたため、菅田と弁護士は宣子さんに頼んで調べてもらっていた。

昔からいる従業員はあの事件に関わっていたのが前総支配人の柏木とそれを暴いた副支配人の田辺だと知っている。

そして、田辺は現在、総支配人だ。

菅田が聞いた『副支配人の部下たち』に当てはまらない。

田辺が襲われたと聞いて一番初めに気になったのは、田辺は狙われる予定ではないということだ。

宣子さんがあの客室係の二人から聞いた話は『副支配人が事件を解決した』という内容だった。それだと菅田と今西が襲われたのは辻褄が合う。

事件のことは口外しないという念書をすべての従業員に書かせている。それに違反したのだから、情報を漏らした客室係の処分を決めた。

それとは別に田辺が襲われたのは田辺のことを聞き出した者がいたはずだった。

客室係の二人の会話が気になり、弁護士に再度聞いてもらったが、田辺の名前は出てこなかった。まだ、別の人物が誰かに話した可能性がある。再び、宣子さんに頼んで従業員の様子を探ってもらうことにした。


菅田は吉村さんに連絡をする。その後、執務室を出てカフェに向かう。

カフェに繋がる遊歩道を歩いていると反対側から老夫婦が歩いて来る。普段はこんなのんびりした風景なのだ。

菅田は時折足を止めて周囲を見渡し、何かわかるかもしれないとめぼしいところをスマホで撮影しておいた。

カフェに入るとテーブル席は半分ほど埋まっている。

菅田はカウンター席に座りコーヒーを頼む。

先程撮った写真を見ていると松本が菅田の前にコーヒーを置いた。

「昨日私が追いかけたのは女性でした」

「そうか、ありがとう」

菅田はコーヒーを一口飲む。

田辺を襲った者か……。

菅田はスマホを操作してある人物の写真を出す。正面からと背後からの映像だ。防犯カメラから抜き出した。

スマホを松本に見えるように置き、コーヒーカップを持ち上げ、笑顔を向ける。

「美味しい」

菅田が言う。

「よく似ています」

松本からの返事に菅田は考える。

カフェに扉が開いて入って来た吉村は菅田から一つ開けて座る。

「ホットコーヒーを」

菅田は先程のスマホの写真を見せた。

「似ているそうです」

「この人は!」

吉村は菅田の意図が分からないようだ。映っているのは二人。

「もう一人いますよね。似ていませんか?」

菅田はコーヒーを飲みながら言う。

「確かに」

 吉村は納得した。

「ご馳走様」

菅田はお金をカウンターに置き、席を離れる隙に吉村の手元にそっとSDカードを置いてカフェを出た。

菅田は来た道を歩いて執務室に戻る。

渡したSDカードでどこまで解るかはっきりしない。

SDカードに入っているのは弁護士が客室係から話を聞いている様子が映像として入っている。菅田はその映像を見てすぐに宿泊記録を確認したが客室係二人に話を聞いたと言う客の連絡先はデラタメだった。

菅田は急いで溜まっている仕事を片付け、昨夜の続きの動画を見始めた。

昼前に佐伯が帰って来た。直接菅田の執務室に来たのだろう。

「鍋島さんが来てくれたので交代してきました。今夜からは母親が付き添うそうです」

「佐伯さん、ありがとうございます」

菅田は頭を下げる。

「気をつけていたんですけどね」

佐伯はチャペルを見に行くという田辺に松本をつけたと言った。護衛の刑事たちがホテル内を彷徨くのは目立つからと断ったのが仇になる。

菅田と佐伯は執務室にソファーに座る。

「どんなに様子ですか?」

田辺の容態を聞く。

「副支配人、気をしっかり持ってください。総支配人はまだ、意識を取り戻していません」

佐伯に言われ、菅田の眉間にシワが寄る。あの時の悪夢が蘇る。

前の総支配人だった柏木は瀬田に横領の罪を着せられ殺された。殴られて意識を失った柏木を瀬田は真冬の海に突き落としたのだ。偶然、漁師が見つけ助け出したが意識は戻ることはなかった。

また? 否、今度はそんなことさせない。

菅田はフチなし眼鏡の鼻の部分を左手中指で上げた。

「大丈夫です。佐伯さん、信じましょう。総支配人はあの瀬田を追い詰めた人です。きっと助かります」

自分自身にも言い聞かせる。

「分かりました。何かあれば言ってください」

佐伯の言葉は心強い。

菅田が頷くと佐伯は仕事に戻ると言って執務室を出て行く。

田辺がチャペルに行くことを知っていた者。

佐伯が言うには、カフェの前を通り過ぎようとした田辺に声をかけ、チャペルに行くというので松本をつけたと言っていた。

田辺はどうして昨日、チャペルに行こうとしたのか?

内線で本館フロントの事務所へかける。何度かの呼び出し音の後に宇佐美が出る。

「菅田です。聞きたいことがあるのですがいいですか?」

菅田は周囲に誰もいないか確認してから昨日のことを聞く。

「私もよく分からないの。急に言い出したから、何かあったのかと聞いたけど確かめたいことがあると言うだけで」

宇佐美は田辺がチャペルに行くというので自分も行くと言ったが反対されたという。

「確かめたいこと?」

「それ以上は分からなくて」

 菅田は電話を切る。

急にチャペルに行こうとした田辺は宇佐美さんが一緒に行くことは反対した。

誰かと待ち合わせ? 

宇佐美さんがいるとダメな相手か? 

それなら佐伯にまで内緒にする必要はないと思うのだが。待ち合わせではないとしたらなんだ。

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