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ミステリアスシンドローム  作者: 柊木 渚
第一事件「猫顔男性」
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002

2024年 1月 14日 13時40分 移動中の車内にて


「なあ春樹、お前って正義のミカタって信じるか?」


 丁度信号が赤になり、停車中に寝ていると思われた彼女が何とはなしに話しかけてきた。


「正義の味方ですか・・・・・・信じますよ、僕が警察官になった理由の一つでもあるので」


 答えた後、信号が緑に変わったのを見て運転を再開した。


「それじゃあ人を殺すのは何があってもいけない事か?」


 さっきの話の続きだろうか?僕は運転に集中しながらも彼女の話に付き合った。


「僕はいけない事だと思いますね」


「そうか、ならさ、スポーツとかで予期せぬプレーによって相手の命を落としてしまってもいけない事か?」


 中々にシビアな所をついて来るな、


「いけない事ですね、そうならない様にいつもトレーニングや練習を積み重ねているんですから」


 だけど僕は素直な答えを口に出した。


「そうか、なら事件を肥大化させない為に殺す事はいけない事か?」


 急に具体的な質問になったな・・・・・・それは僕にも起こり得る状況。その時僕はどうするだろうか・・・・・・

 数分考えた後に彼女に答えを伝える


「それでもいけない事ですね、僕がその状況に陥ったらまず殺さずに済む方法を探しますね」


「そんな悠長な考え、現場での死人を増やすだけだぞ、お前が考えている時間で相手は人を一人殺すかもしれないぞ」


 そうかもしれない、僕の脳で考えた所で結局のところ死人を増やしてしまうかもしれない・・・・・・だけど、


「なら僕は安吾警視監に助けを求めますよ、僕が考えて見つからない問いでも貴方なら解いてくれるでしょ?」


「身勝手だな、俺はそこまでのお人好しじゃないぞ」


 俺?

 彼女の一人称は私だった筈―――


「春樹~~~、着いたのか?」


 考えを遮るかの如く彼女はアイマスクを外して欠伸をしながら聞いてきた。


「あぁ、後少しですよ」


「そうか、にしてもパズルやり過ぎたな、疲労感がまだ拭えない」


 いつもの彼女だ。さっきのは空耳だろう。と僕は思いながら目的である病院の駐車場に入って行き、車を停めた。


「着きましたよ」


「よし!行くか」


 僕と彼女はシートベルトを外して車外に出ると全貌の見えた伊呂波第二ほへと病院を眺めた。


「でかいですね、この病院」


 清潔感漂う白で塗りたくられた壁面と縦にも横にも大きな病院をまじまじと眺めていた。


「行くぞ春樹」


 彼女の声で我に返り、ドアを閉めて鍵を掛けた後に彼女の後ろを歩いていると


「伊呂波第二ほへと病院、医院長は伊呂波坂 塵、二年前にこの病院が建てられたが腕利きの医師たちがこの病院に集められている為、評判は上々らしいぞ」


「良く知ってますね」


 頭の中に図書館でも詰め込んでいるのだろうかと思いたくなるほどに彼女は物知りだった。


「偶にテレビから聞こえてくるからな、知ってても可笑しくないだろ」


 あのブラウン管テレビ、ほぼ毎日点いてはいるけどノイズが酷かった様な・・・・・・

 そんな事を思いながら僕と彼女は病院内に入り、サービスカウンターに向かった。


「こんにちは、この度は如何なさいましたか?」


 カウンタースタッフの女性が僕らに向かってそう言うのと同時に僕は内ポケットから警察手帳を出した後、


「少し調べものがありまして、よろしいでしょうか」


 なんて警察官人生初の試みを胸に潜めながら言葉にしてみたが、あれ?なんか聞き方間違えたかな?

 何かを察して後ろに居た上司らしき人に耳打ちで何か伝えると、椅子から飛び上がる様にしてこちらに急いでやって来るや否や


「こちらへどうぞ」


 と僕らをエレベーターに向かわせ六階右側の関係者以外立ち入り禁止と書かれたプレートがある場所の奥にある応接室に連れてきた。


「春樹、何言ったんだ?」


「何も?!」


 僕はただ話がしたいといっただけであって―――

 バタン!と大きな音が後方から聞こえてきた。振り向くとそこには汗だくになりながらこちらを見つめていた七十代ぐらいの男性で名札には伊呂波坂と書かれていた。


「こここ、このたぶはとう、びびび病院内になんのご用件でで?!」


 だいぶ緊張しているのだろうか声と言葉がガタガタだ。


「ここにいるドナー提供待ちの患者について教えてほしい」


 隣に居た彼女がそう口にするや否や伊呂波坂さんは汗を拭い、ブハア!と息を吐いた後爽やかな態度で


「そうでしたか、この病院の患者に御用があったのですね」


 と切り返した。

 いや、絶対この病院何か隠してるよね?!


「今お持ちしますので少々そちらのソファに腰を掛けてお待ちください」


 伊呂波坂さんはそう言って一度応接室を出ていった。


「安吾警視監、この病院なんか怪しいですよ」


「そうか」


「そうか、じゃないでしょ?!」


 伊呂波坂さんがタブレット端末を抱えて戻ってきた。


「こちらが現在、当病院のドナー待ちの患者様達です」


 タブレットを彼女に渡し、そのタブレットを持った彼女は物凄い速さで上にスクロールしながら全てを見終えた。


「ふ~~む、ありがとう」


 彼女はタブレットを返すとすぐさまソファから立ち上がり、扉に向かった。


「どちらへ?」


 伊呂波坂さんの言葉に首だけむけて答えた。


「犯人のいるところ」


「「犯人?!」」


 僕と伊呂波坂さんは同時に同じ言葉を言っていた。僕はこの短時間で見つけてしまう彼女に対しての驚きであり、伊呂波坂さんは今聞いた何かの事件の犯人がこの院内に居るという衝撃に。


「ほらぼさっとしてないで行くぞ春樹」


「はい」


 すぐさま僕もソファから立ち上がり応接室を後にした。

 伊呂波坂さんはどうやら色々な情報が脳内を駆け回ったためパンクしてしまったらしく僕らの正面にあったソファで目を回していた。


 エレベーターに入ると彼女は迷いなく四階のボタンを親指で押して扉を閉めた。


「本当に分かったんですか?安吾警視監」


 僕は疑いの目でそう問いかけると


「粗方の予想はついていたからな、まあ実際には聞いてみないと分からないが」


「そうですか」


 一回目の事件同様この人が捜査に介入するとすぐに終わってしまう、彼女にとって事件というのはパズルよりも簡単な作業でしかないのだろうか?


「ここだな」


 エレベーターを出て左に曲がってカウンターを抜けて三番目の部屋にノックも無しに彼女は入って行った。


「こんにちは皆元 千代さん」


 その部屋は個室であり、ベッドから驚いた顔でこちらを見ていた。


「貴方たち、誰ですか?」


 震えるた声が僕らに向けられていた。


「警視庁の警察です」


 彼女は警察手帳を取り出すと皆元さんに見せた。

 一瞬目を見開いた後に


「警察の方が何の御用件ですか?」


 と丁寧に言葉を返してきた。


「なに、奥多摩湖でおきた事件の事をお聞きしたくて参ったまでです」


 深々と皆元さんにお辞儀した後に彼女はにこりと笑いながら言った。


「この事件、貴方が犯人ですよね」

 

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