第3章 巨人の食卓(その1)
そろそろモフモフから離れないと…
ということで新章の導入にあたるお話です
よろしくお願いします
リルフェさん襲来から数日が経ったある日の朝
―もふっ ぱたぱた もふっ ぱたぱた―
顏に何かが当たる感覚で目が覚めた
「リルフェ様、寝ている間に忍び込むのはやめて頂きたいのですが…」
「わぅ?それよりリュード!またクシクシやってほしいのじゃ」
あの日以来リルフェさんはブラッシングが気に入ったらしくこうして部屋に頻繁に来るようになっていた
コボルトさんはリルフェさんを止める気は無いようだ
ブラッシングが終わり、ご機嫌なリルフェさんに尋ねる
「リルフェ様、ここ最近よくこちらにいらっしゃいますが大丈夫なのですか?」
「わぅ?まぁ大丈夫なのじゃ!…タブン…」
「私たちがリルフェ様のお仕事はお手伝いしてるから大丈夫ですよぉ~」
少し目を泳がせながら答えるリルフェさんとニコニコで答えるコボルトさん
「それよりもリュード!その'りるふぇさま'っていうのやめるのじゃ!其方まで輩下のような距離を感じてしまって寂しくなるのじゃ!」
なぜか私の膝に座りパタパタと足と尻尾を揺らしながらリルフェさんは言う
「では…リルフェさん?」
「むぅ~」
心の中ではこう呼んでいたがお気に召さなかったらしい
「リュードはいつもブラッシングしてくれるから特別に'りるふぇちゃん'って呼んでいいのじゃ♪」
「えぇ…では…リルフェさ…ちゃん」
「はいなのじゃ♪」
更にご機嫌になって返事をするリルフェさん、もといリルフェちゃん
部屋の隅ではコボルトさんが必死に噴き出すのを堪えている
そんな穏やかな時間が流れていたが…
―ズン…ズン…ズン―
腹の底に響くような音が部屋に近づいてくるとリルフェちゃんは最初に出会った時の姿になった
リルフェちゃんの姿が変わるのとほぼ同時に一人の巨人族が部屋の扉を開けた
「リルフェ ここ いたか 」
「おじ様、また食べこぼしが沢山ついてるのじゃ…」
「俺たち からだ 大きい でも 器 小さい 食べる 下手 だから 服 汚れる」
バツが悪そうに頭を掻く巨人
「むぅ、とりあえず拭いてあげるのじゃ。それでおじ様、妾に何の用じゃ?」
「リルフェ 感謝
俺 来た 呼びに おまえ
六槍 あつまる おまえ くる ひつよう」
「分かったのじゃ一緒に行くのじゃ。ではリュードまたなのじゃ」
巨人族とリルフェちゃんは連れ立って部屋を出ていった
私は部屋に残されたコボルトさんに問う
「今の方は?」
「忠臣六槍の御一人、巨人王デルガド様ですぅ。先代狼王様のご友人でもあるんですぅ」
「なるほどそれでおじ様ですか」
「はい~。でも私は巨人族の方は少し苦手なんです~」
「あまり好き嫌いしなそうなコボルトさんにしては珍しいですね。どうしてです?」
「あの人たちが通ると掃除が増えちゃうんですよぉ~」
「ああ、そういうことですか。そういえば先程デガルド様が仰っていた器が小さいとは?」
「はい~、魔王軍の食堂で使われている器は全部同じ大きさなんです~それで体の大きな方たちはとても食べるのが下手なんです~」
「では大きい食器を用意すればどうですか?」
「………」
「コボルトさん?」
「…ハッ!すみませんあまりに当たり前の事なのに何故私含め魔王軍が思いつかなかったのかショックでフリーズしちゃいましたぁ。早速メイド長様にご報告してみますね~」
少し魔王軍が心配になりながらコボルトさんを見送るのだった。
ここからお話が動き始めます
次話更新はなるべく早くする予定です