第1章 コボルトさんの悩み(その2)
「…毛玉?」
「わざわざ聞き返さなくていいですよぅ!そうです毛玉ですぅ!」
コボルトさんは少し怒らせてしまったようで犬面をむくれさせている
その様子を見て私は寺院に住み着いていた犬の事を思い出してしまった。
(そういえば荷物の中に大都市で買ったブラシがあったな)
「コボルトさんコボルトさん、こんなものをご存知ですか?」
「はい?」
私は荷物の中から犬用ブラシを取り出した
(犬と同列で扱って怒られたりしないのか)
少しの不安もコボルトさんの反応で吹き飛んだ
「それって人族が使ってるブラシとかいうものですよね!?以前遠い同族が使ってもらってるのを見たことがあって気にはなってたんです!とても気持ちよさそうにしてましたから!もしかして私にしてくれちゃったりするんですか!!??」
尻尾をちぎれんばかりに振り、コボルトさんは詰め寄ってきた
「ははは、そんなに食いつきがいいとは思いませんでしたが、いつもお世話になってますしこんなので良ければ「是非!お願いします!!」
とても喰い気味に返事をされてしまった。
そんなこんなでコボルトさんのブラッシングが始まったのである
コボルトさんの毛並みに根元からブラシをかけていく
「わふぅ…あ~いいですねぇ」
「この辺りはどうですか?」
耳の付け根から背中にかけて丁寧に毛並みを整えていく
「ひゃぁ!ちょっとくすぐったいですぅ…けどだんだん気持ちよくなってきて…」
いつの間にかコボルトさんは寝息を立てていた
「コボルトさん!コボルトさん!終わりましたよ」
「ふぇ!?ああ、気持ちよくて寝ちゃってました~」
向くりと起き上がって自分の毛並みを確認するコボルトさん
「わふぅ!毛並みがこんなにサラサラのふかふかに!リュードさんありがとうございますぅ~」
大喜びで尻尾を振っているコボルトさん
そこまで喜んでもらえるとこちらも嬉しくなってくる。
「皆に自慢しちゃいます!」
「そんなに大したものじゃないけど喜んでもらえてよかったです」
コボルトさんはその日ルンルンで帰って行った
私も嬉しい気持ちになっていた
噂が広がりコボルトさんの上司に当たる人にまで噂が広がっていくとも知らずに…
ここまで読んでいただきありがとうございます。
短いですがコボルトさんの悩み編はここで終わりになります。
次回は新しい登場人物が出てくる予定です。