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悪魔のおくすり屋さん  作者: とまとまと
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第9話 決断の時

季節はすっかり秋になっていた。


キッチンで朝食を作るミカル。

あれからアネモネの体調はよくない。

たまに寝込む事もある。



寝ぼけながらアネモネが階段を降りてきた。


「おはよう。……熱はある?」


ミカルがアネモネの額に手を当てる。

アネモネの体調を確認するのが日課になっていた。



「…今日は大丈夫みたいだね。顔色も悪くない。」


笑顔でうなずくアネモネ。



朝ご飯を食べるとニワトリの世話をするアネモネ。

ニワトリが小屋から勢いよく飛び出す。

そしてアネモネのまわりを少し走り回ると大人しく座る。

ニワトリたちはアネモネを追いかけまわさなくなっていた。


その様子を見るミカル。



「……少しずつ弱ってる。」



カルミアが残してくれた本でいろいろ調べるがいい方法が見つからない。

人間はいつかは死ぬ…

分かっているがあまりにも早すぎる。

アネモネはまだ12歳だ。



「アスタロト…どう思う?」


「……人間はいつかは死ぬ。」


「…………。」



ため息をつくミカル。

アネモネが来てから半年が過ぎていた。



掃除を終わらせてアネモネが家に入ってきた。

ミカルのそばに来て唇を動かす。



隣のおばさんの家に行ってもいい?


「…………少しだけだよ。」



笑顔でうなずくアネモネ。

隣の家くらいなら大丈夫か、おばさんなら安心だし。

そう言えば少し前にもおばさんの家に行っていたな…




隣のおばさんの家に行くと…


「…アネモネ、よく来たね。さぁ前の続きをしようかね。」


アネモネがうなずく。





「……女同士はよく喋るからな。気が合うんじゃないのか?隣の女と。」


「そういえば、そうだね。お話好きだな、女の人は。近所のおばさん同士でよく喋ってるね。……………アスタロト、アネモネの事で何か知ってる事あるか?」


「………なぜ俺に聞く?」


「何か知ってそうだ。」


「………鈍感なミカルがめずらしいな。」


「…何を知ってる?」


「あの娘に口止めされている。本人から話すと言っていたぞ。」


「アネモネから話す?」


「ああ、、そう言っていた。」



次の日もアネモネはおばさんの家に行くと言って出かけた。

そんな日が何日か続いてすっかり冬になっていた。





夕食を食べ終わってアネモネが小さな袋をミカルの前に出した。



「…?………ぼくに?」


アネモネが微笑んでうなずく。



「…ありがとう」


袋を開けると黒い組紐が入っていた。



ミカルの髪の毛、結ぶのにいいかな?と思って…

隣のおばさんに作り方教えて貰って作ったの。


アネモネの唇が動く。



「…それでおばさんの家に行っていたんだね。」



ミカルは今、髪の毛につけている紐をほどいてアネモネが作ってくれた組紐で結び直した。


「…似合ってるかな?」


アネモネが笑顔でうなずいてミカルの手のひらに自分の手をのせた。



「…?……どうしたの?」



アネモネの唇が動く。


妖精の王さまのところへ行こうと思うの…



「え?!」



ミカル、あのね、私…



「ダメだよ!僕のそばにいるって言ったじゃないか?」



きいて、ミカル…



「なのに、どうして妖精王の所に……そんなのダメだ!」



ちがうの、きいて、、。



「ダメダメ!体調が悪いのはぼくがなんとかするから、ちょっと待ってて。必ずいい方法を探すから。」



ねえ、ミカル、きいて、、



「…この話は終わり!君は僕のそばにいて…お願いだから。」



ミカル………………!


アネモネが口元を押さえて咳き込む。



「アネモネ?」


ゴホッ!ゴホッ!


床にアネモネの血が落ちる。



「!!…アネモネ!!」



ミカル、あのね、私…の体は…もうもたない。



「…だからいい方法を探すから…」



もう、間に合わない…



「アネモネ…」



ずっと悩んでたけどやっと決心がついた。

…妖精の王さまのところに…行く…



「そんなの、ダメだ…」


ミカルがアネモネを抱きしめる。



「……ずっとそばにいるって言ったじゃないか…」



アネモネの目から涙がこぼれる…



ミカルの耳元で消えそうな小さな声でアネモネがささやく…


「…かならず、帰って…くる、から……信じて…」



「…帰ってくる?」



アネモネがうなずき、消えそうな声でささやく



「……ミカル………だいすき……」



ミカルの耳元でアネモネの子守唄が聞こえた…

消えそうな優しい声で。



「ア、ネモ…ネ……」



眠い、、

子守唄に魔力?

……眠って……しまう…………


……アネモネの腕の中で眠るミカル。


アネモネが泣きながらミカルを抱きしめる



ごめんなさい…決めたの。

でも、必ず帰ってくるから…待ってて…



アスタロトがアネモネのそばにくる。



「……連れて行ってやろうか?」



大丈夫、ひとりで行ける。

……王さまには伝えてあるから。

アスタロト…ミカルは私の事

………どう思っていたと思う?



「さぁな、俺たちには愛なんて感情はないからな。…お前達、人間みたいな愛し方は出来ない。」



そうだよね…



眠るミカルのおでこにキスをするアネモネ。


おやすみ、ミカル…



立ち上がって家を出る

ニワトリ小屋の鍵を開けてニワトリ達の頭をなでる。



ゆっくりと森へ向かう…



今までのミカルとの時間を思い出す…


半年位だったけど…楽しかった…



涙が溢れる…



村の人たち、隣のおばさん、アスタロト、、ミカル…


いろんな人達に会えた。



妖精王に女王、妖精たち…


自分の事を知ることが出来た…



楽しかった思い出…


ミカル…



声をあげて泣き始める…


アネモネのまわりの草木が枯れる



泣くアネモネの前に妖精王が現れた。


「…おかえり、可愛い子」


ゴホッ!ゴホッ!


咳き込みながら妖精王の腕に倒れこむアネモネ…


2人はその場から姿を消した。






朝、目を覚ますと自分のベッドの中だった。

起き上がる、ミカル。


「アネモネ?!」


「……もう行ったぞ。」


アスタロトが言った。


「…………どうして…」


「人間の体が妖精王の魔力に耐えられないと妖精の国に行った時に聞いていたそうだ。」



じゃあ、もう長くないのを知っていて帰ってきたのか?



ミカルのそばににいたい…



命を削ってぼくのそばにいたのか…



「…アネモネ。」


でも帰ってくるって言ってた…どういう事だ?



ドンドン!

ドアを叩く音がした。

隣のおばさんだった。


「朝早くにごめんね!大変だよ先生!!」


「え?」


「森にキノコ採りに行った村のものが見つけたらしいけど…」



クマに襲われて死んでいるアネモネの遺体が見つかったそうだ。

……妖精王の仕業だ。

人間にはアネモネそっくりの遺体に見えるだろうが、ぼくら悪魔には分かる。

……ただの人形だ。

すべてを失った気がした



…本当にアネモネは、帰ってくるのか?



分からない…



もう何も考えたくない…







妖精の国。



「……本当にいいのね?」


女王が聞く。

アネモネがうなずく。


「……決めたの。転生する」


「…姿も人格も変わるし、記憶も無くなるぞ」


妖精王が言う。



「分かってる。………お願いします。」



妖精王と女王が顔を見合わせる。

姿、人格が変わり記憶を失うと言えばこのまま妖精の国にいてくれると思ったのにアネモネは転生を選んだ。



「……姿、人格が変わればあの悪魔は君を受け入れるか分からんぞ…」


「……それでもいい。覚悟の上だから…必ず帰るって約束したの。」



「…………何を言っても無駄のようね。」



そう言うと女王が両手に魔力を集める。

アネモネの周りが光り始める…



「…可愛い子、、おやすみなさい……」



アネモネの体が光に包まれて大きな丸い玉になる。




…ミカル……


………かならず、………帰るか、ら………………





つづく




初めまして、とまとまと と申します。

つたない文章をここまで読んで下さりありがとうございます。


物語はまだ続きますが少しお話させていただきたいと思い書かせていただきました。


まずは名前について…


アネモネは花の名前です。

花言葉は「儚い恋」

悪魔に恋してしまった人間の少女の叶わぬ恋をイメージして名付けました。


あとミカルは天使長ミカエルのエをとったものです。育ての親のカルミヤが皮肉をこめて悪魔に天使にちなんだ名をつけました。


アネモネが金髪なのは妖精王の好みです。妖精王は金髪が好きという説があるらしいのでそうしました。


アネモネはミカルのそばにいる為に転生する覚悟を決めました。転生したアネモネをミカルは受け入れる事ができるのか?

この先も読んでいただけるとありがたいです。






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