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悪魔のおくすり屋さん  作者: とまとまと
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第8話 残された時間…

朝から雨が降っていた…ミカルが窓の外を眺める。


「…今日は一日降ってそうだな。」

アネモネが階段を降りてきた。

踏み外してコケそうになる。



「!……おっと、あぶない!」



ミカルが受け止める。

腕の中でアネモネの顔が赤く……なってない。

…それより顔色が悪い。


「………アネモネ、顔色、悪いよ。」


下を向いたまま黙るアネモネ。


「…食欲ある?」


首を振る。


「……休んでた方がよさそうだね。」


アネモネを持ち上げて部屋まで運ぶ。

ベッドに寝かせて額に手を当てる。


「…微熱があるな……すぐに薬を作るね。」


作業部屋に向かう。

季節の変わり目だから体調を崩したのかもな。

夏も終わり、秋が近づいていた。

薬をアネモネに飲ませる。

アネモネの唇が動く。



ありがとう。



ミカルが微笑む。

頭を撫でながら…



「寝てれば楽になるよ。」




階段を降りると村人が薬を買いに来ていた。


「…先生、薬ください」


笑顔で対応する。





アスタロトがアネモネの部屋の天井に現れる。



「…なぜ、そんなに弱っている?」


………。


アネモネの体が少しずつ弱っていることにアスタロトは気付いていた。



「ミカルは鈍感だから気付いてないが。……俺は違うぞ。」



…………もう、あんまり…時間が…ないみたい…



「…時間?」



…人間の体は、もろいから…



「…たしかに人間の体は、もろいが……」



…妖精の王さまの魔力が強くて、、、

この体は…耐えられない……



アスタロトが黙る。

この娘、自分の体がもたないを分かってて戻ってきたのか?



「…何故だ?…あのまま妖精の国にいれば…」




…………ミカルのそばにいたかった……。



「……………。」



なぜこの娘はミカルを恐れない?

それどころかそばにいたいと言っている。

そうなるように手伝ったが……理解できない。

悪魔のそばにいたいと思う人間の、アネモネの気持ちが…。


……その時までアネモネはもたないかもしれないな。別の方法を考えた方がいいかもしれない…


アスタロトがその場から消えた。






……思ってたより早い。

もう少し一緒にいれると思ったのに…


妖精の国で女王に言われた。



「あなたの、人間の体はもろいから王の魔力に耐えられない。このまま妖精の国で暮らせば死なないですむわ、、」



でもミカルのそばにいたい…



「……転生すれば自由になれる。」



転生?



「ええ、生まれ変わるの妖精として。」



妖精?



「人間を捨てて妖精となれば自由になれる。…その代わり、、」



その代わり?


「……記憶と肉体を捨てなければならない。」



!!…記憶と体を……



「転生すれば自由になれるけど姿や人格は変わるわ。そして記憶を失う。……だからここでわたしたちと暮らしましょう。可愛い子。あなたを死なせなくないわ…」



記憶……ミカルとの思い出。


……失いたくない。


…………でもそばにいたい……





次の日も朝から雨が降っていた。


アネモネは昨日からずっとベッドの中で横になっていた。

体が動かない…

もうダメなのかな…


ミカルが薬とスープを持ってきた。


「…起き上がれる?」


首を横に振るアネモネ。昨日より顔色が悪い…

額に手を当てる。……微熱も下がらない。


「スープ飲める?」



首を横に振る。

アネモネの唇が動く。



…大丈夫。仕事にもどって…


「…でも、、」



1階でドアをノックする音が聞こえる。


「…すぐに戻るから待っててね。」


下に降りるミカル。



アネモネのベッドのまわりに小さな光がいくつか集まってきた。妖精たちだ。


まーったく!


わたしたちの国にくればこんな事にならないのにー



アネモネが微笑む。


ごめんね…




妖精たちが魔力を使ってアネモネの体を癒す。

妖精たちとアネモネの体が光る。

異変に気づいたミカルがやって来た。


「アネモネ?!……おまえら!」



あんたの為じゃないわ、アネモネの為よ。




アネモネの体が光り何かと重なって見える。

…まただ、前に森で見た時と同じ。

……誰かと重なって見える。



アネモネがゆっくりと起き上がる。


「!…大丈夫かい?」


アネモネがうなずく。

顔色がよくなっている。

妖精たちが飛んでいく。



アネモネ、またね~♪


妖精たちに手を振るアネモネ。




心配かけてごめんね、大丈夫。

アネモネの唇が動く。



「……ならよかった。でも無理しちゃダメだよ。」


アネモネが微笑む。




転生すれば自由になれる……

アネモネは悩んでいた。





雨がやんで日差しが出始めていた…

妖精たちのおかげで体調が戻ったアネモネ。


ニワトリ小屋の前に行く。

小屋の鍵を外すとニワトリが飛び出した!

アネモネのまわりを少し走り回ると大人しくなった。


……?

…もしかして心配してくれてる?

…ありがとう。


ニワトリたちの頭を撫でる。



ミカルがその様子を見ていた。


体調をくずしただけで妖精たちがやって来た。

…なんだろ?……嫌な予感がする。

アネモネの体に何が起きている?




次の日は晴れていた。

アネモネが散歩に行こうと外に出ようとする。



「…待って、どこに行くの?」


散歩に…


「ダメだよ。病み上がりなんだから家で大人しくしておかないと!」


でも、少しだけ…


「ダーメ!ほら家の中に入って!」


うん、、明日は…行ってもいい?


「ダメだよ!僕のそばにいて。」


……うん、、



心配性なのかな?

アネモネは庭でぼんやりしていた。

すると妖精たちがやって来た。




大丈夫?


どこか痛いところある?



アネモネが微笑む。


ありがとう。今は…大丈夫。




「また、お前達か!」


ミカルがで出てきた。



あんたに会いに来たんじゃないわよ!



「…何を企んでるんだ?」



あんたには関係ないわよ!



アネモネ、またね~♪


アネモネが妖精に手を振る。



「…何しにきたんだ?」



心配してくれてるんだと思う。



「そうかなぁ?…何か企んでるかもしれないから気をつけてね。」




次の日も朝から晴れていた。


「ダメだよ!また調子が悪くなったらどうするの!!」


……でも、、少しだけだから。


「ダーメ!ぼくのそばにいて。」




「…過保護だな。少し外に出るくらいいいだろ?」


アスタロトが現れた。


「アスタロトは黙ってろ。アネモネの体を心配して言ってるの!」



アネモネが下を向いて部屋に戻る…

アスタロトがアネモネの後ろ姿をじっと見る。

ミカルは作業部屋へ向かう。



「……アネモネは小鳥か?」


アスタロトが聞く


「…ん?…鳥?……何言ってるんだアスタロト?」


「…鳥籠の中に閉じ込めるのか?」


ミカルが不思議そうな顔をする。

アスタロトが黙ったまま姿を消した。




アネモネが部屋にはいる。

ベッドに座り咳き込む。アネモネの手のひらには血が……



妖精たちが力を貸してくれたけど……


体が重い……


元気そうにしてるのもいつまでできるかな……



…ミカルのそばにいたいけど。


記憶と体と引き換えに自由になれる。



でも記憶もなく姿も違う…

……そんな私をミカルは受け入れてくれるの?



残された時間は少ない…




アネモネの部屋の天井にアスタロトが現れた。


「まったく、お子様だなあいつは。…気にせず勝手に外に出てもかまわんぞ……?」


口元を抑えて苦しそうにするアネモネ。アスタロトがアネモネのそばに寄る。


「…どうした?娘…」



アネモネがアスタロトに倒れかかり咳き込む。



「…なんだ?………!!」



アネモネが咳き込みながら血を吐いた。アスタロトの服が血まみれになる。



「アネモネー、お茶にしようか?」



1階からミカルの声が聞こえる。

返事がないので階段を登るミカル。



「……?アネモネ?……寝てるの?」



アスタロトとアネモネの姿が消える。



アネモネの部屋にはいるミカル。



「…あれ?………アネモネ?」







アスタロトとアネモネは森の中にいた。


ゴホッ!ゴホッ!


アスタロトの腕の中でアネモネが血を吐く。



「…妖精ども、いるんだろ?出てこい。」



妖精たちが現れてアネモネに近づく。



アネモネ、、


かわいそうに。



妖精たちが魔力を使ってアネモネの体を癒す。



ありがとう…




「………娘、このまま妖精の国に帰るか?」


アネモネが首を横に振る。


「…このままじゃ、、」


ミカルに言わないで…


「本当に死ぬぞ、オレには関係のない話だか。……お前を取り戻すのに手を貸したからな。」



私が決めた事だから…いいの。


覚悟を決めたらミカルには私から話すから………お願い。



「………。」


おとなしいくせに芯が強い娘だな。


「…分かった。」



アネモネがアスタロトの血まみれの服に気付く。


ごめんなさい…



「気にするな。」


そう言った瞬間にアスタロトの服の血が消える。

驚くアネモネ。


「…帰るぞ。」


アネモネがうなずく。




家に帰るとミカルが怒っていた。


「……オレが連れ回した。」


アスタロトが無表情のまま言う。



ごめんなさい…


アネモネが謝る。



「…勝手な事するなよ、アスタロト!アネモネに何かあったらどうしてくれるんだよ!」


「…何かってなんだ?」


「だから!」



ごめんなさい!


アネモネがミカルに抱きつく。


ごめんなさい…



「……。」


アネモネの背中に手をまわすミカル。


「……アネモネ。」



何故か、嫌な予感がする…。

アネモネが消えてしまうような……

ミカルはアネモネを強く抱きしめる。




つづく





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