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悪魔のおくすり屋さん  作者: とまとまと
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第4話 突然の別れ…

ミカルがキッチンで朝食を作っていた。

作り方が分れば薬も料理もたいして変わらない。

料理上手な隣のおばさんに料理のレシピを教えてもらった。器用なミカルは何でもこなせる。




ガシャーン!!




何もない場所でコケて額を直撃して床に伸びているアネモネがいた。手に持っていたコップは綺麗に割れている。



「………アネモネ………大丈夫?」



アネモネは何もない場所でコケる。……なぜだ?





慌てて割れた食器を片付けようとするアネモネが破片で手を切った。



「……ぼくが片づけるから大丈夫だよ。手を見せて。」



手を隠して首を振る。



「……早く手を見せて。」



ミカルに迷惑をかけたくないので手を隠しながら声を出さずに唇を動かす。




すこしきっただけ、だいじょうぶ。




ミカルがムッとする。


「だめ!傷口からバイ菌入ったらどうするの?ほら見せて!」


手当てをするミカル。アネモネは下を向いている。




ごめんなさい。




下を向いたままのアネモネの唇が動く。


「……気にしなくていいよ。」


そう言うとアネモネの頭をなでる。


「朝ごはんにしようか?」


朝食を食べ終わるといつも通り、村の人達が薬を買いに来る。



「えらいねぇ、お手伝い出来るんだねぇ」


「可愛いわね。」






窓の外から様子を見る妖精たち。



これじゃ誘い出せないわね

どうする?




妖精たちの後ろにアスタロトが現れた。妖精たちが振り向く。




なによ、あの悪魔の仲間ね!



「失せろ、喰うぞ」

アスタロトが冷たい目で妖精たちを見る。



あの子は私たちの子よ!



「…聞こえなかったか?喰うぞ」

アスタロトは妖精たちに近づく…



妖精たちは悔しそうにその場を離れた。



わたしたちはあきらめないわよ!





私たちの子?…なぜ妖精たちはあの娘にこだわる?

どちらにせよミカルのそばに置いておきたい。

目ざわりなモノは消すだけだ…

アスタロトが冷たい目で飛んでいく妖精たちを見ていた。









薬草が足りない…。

取りに行きたいけどアネモネを置いて行けばまた妖精たちが寄ってきそうだし、森に連れて行っても……。



「うーん、結局寄ってくるなあいつら。」



それなら連れていった方がいいか、自分がいれば寄ってきても追い払えるし。アネモネがこの家に来てから外に出てないし、いい気分転換になるかもな。



「アネモネ、森に出かけようか?」



森と聞いてアネモネの顔がくもる。生贄にされそうになったことを思い出した。



「…大丈夫、ぼくがそばにいるから。必ず君を守るよ」



ミカルが微笑みながらアネモネの頭をなでる。その言葉を聞いてアネモネがうなずいた。





「暗くなる前に帰らないとね。」

ミカルが背中にカゴを背負いアネモネの手をひいて歩く。


「たぶん、妖精たちが寄ってくるから気をつけてね。」

アネモネがミカルの手を強く握る。



森に入ると正午の日差しがアネモネを照らす。

ミカルの目にアネモネが光っているようにうつる。

……アネモネが光ってる?

いや、誰かと重なって見える?

一瞬の出来事だった。

何だったんだろ?

不思議な光景だった…



アネモネをじっと見るミカル。アネモネは不思議そうにミカルを見る。








クスクス


あら、可愛い子♪


クスクス


おかえりなさい♪


クスクス



妖精たちがアネモネに寄ってくる。



「やっぱり、来たか。さっさと失せろ!」



あんたに言ってるんじゃないの!

私たちはこの子に話しかけてるの



アスタロトも出てきた。


「どうやら、喰われたいみたいだな」



なんなのよ、あんた達!

悪魔にとって人間なんておもちゃみたいなものなんでしょ?ほかの子でもいいじゃない!



「…お前らこそどうしてアネモネに構うんだ?私たちの子ってどういう意味だ?」


ミカルが不思議そうに聞く。




あの子は人間だけど私たちと同じにおいがするの。

どうしてかは分からないけど……


「……同じにおい?」





アネモネが後ろに何かの気配を感じる………なにか、いる?

黒い影の中から鋭い槍が伸びた。ミカルを狙っている!


ミカルが殺気に気づき槍が伸びてくる方向を向くとアネモネの背中が見えた……



「!!……アネモネ?!」



ミカルをかばいアネモネの体に槍が刺さる。


驚くミカルの前で倒れるアネモネ……

ミカルはアネモネの体を抱き寄せる。

アネモネの体から大量の血が吹き出した…。



血が止まらない………


傷が深い。


人間の体は弱い…こんなに深い傷をおえば命に関わる




「……なんで、ぼくなんかかばうんだ…人間の、君の体のほうがもろいのに…」



血まみれのアネモネの手がミカルの頬をなでる。



ケガ…なくてよかった…



笑顔のアネモネの唇が動く。

その笑顔にミカルが言葉を失う。



槍を下げた森の番人が駆け寄る!


「なぜ、悪魔などをかばう!あなたは我々の……!!」





アネモネを抱えたままのミカルの目が赤く光る




「…オマエ カ? アネモネ ヲ キズツ ケタ ノハ?」




森の番人が身構える。



「おのれ!悪魔め!汚らわしい!」



ミカルの体が黒く大きく変化する。

禍々しいミカルの魔力が辺りの植物を枯らす。

そして黒く鋭い爪が伸び森の番人を掴んだ。



「!!ぐっ!!」


森の番人の体を握り潰そうとするミカル。アスタロトがその手を止めようとする。


「やめろ!!ミカル!番人に手を出すな!世界の均衡が崩れる!この手を離せ!!!」


アスタロトの言葉を無視するミカル。番人を掴む手に力をこめる。







や、め……て…




アネモネの小さな手がミカルの頬にふれる、



ミカ、ル……や…め………て……



ミカルにアネモネの心の声が聞こえた。番人を掴む手を緩める。



「……アネモ、ネ。…」



ミカルは正気を戻していく。

腕の中のアネモネを見て震えるミカル。


「アネモネ。」



悪魔の自分には回復の魔法は使えない。

これだけの深い傷なら手当のしようがない…



「……アネモネ。」




何も出来ない。どうすれば…









「やっと、見つけた……」


ミカルの目の前に妖精王が現れた。



「可愛い子よ、こんな所にいたんだな。」



妖精王がミカルの腕の中のアネモネの頭を撫でる。ミカルが妖精王をみて驚く。


「……なぜ、妖精王が、ここに?」



「……悪魔よ。その子を返してくれ。」



ミカルは黙る。



「…お前に、この子が救えるのか?」



「……アネモネは、助かるのか?」



「私に返してくれたらね。……さぁ。」



自分では救えない…。

仕方なく妖精王にアネモネを預ける。

アネモネがミカルの服を掴む。




……ミ、カル………



「アネモネ…。」





「帰るぞ、お前達。」


妖精王がそう言うと妖精と番人が一緒に姿を消した。





アネモネは助かるのか?


……でも妖精の国に連れていかれた。


おそらく二度と戻ってこない…


ミカルはその場に立ち尽くした…。




アスタロトが黙ったまま、ミカルを見ていた。






ミカルは家に戻り。いつも通り薬の調合をする…


元々、里親を探そうと思っていた。


………食器も割られなくなったし。


………………料理もする必要もなくなったし。



…………面倒な事が減ってよかった、、、



この1年、1人で上手くやってこれた…


これからも………1人でやっていける。



そう、ひとりで……



ミカルは自分に言い聞かせる。




つづく




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