第14話 覚醒
「……ちょっと!痛いじゃない!」
黒い悪魔の触手がガーベラを締め付ける。
血が大量に流れる。
「…うるさい、妖精だな」
黒い悪魔が笑う。
「さっさと殺りなさいよ!…痛いのは嫌いなの!」
ガーベラが黒い悪魔に文句を言う。
「往生際のいい妖精だな…命がおしくないのか?」
「……望むものは手に入らなかった……だからもういいの!」
「はぁ?何言ってんだ?…妖精も転生するからなぁ。1度、死んでも大丈夫って事か?」
彼の…
ミカルのそばにいる為に転生した。
もう必要ないこの体も………私も。
転生したての不安定な状態でこれだけの傷を負えばもう転生はできない。
誰かの為に使えるなら…………それでいい。
黒い悪魔の触手がさらに締め付ける。
ガーベラの意識が遠くなっていく…
少しでも、楽しかったから……
まぁ、いっか………。
「……!」
薄れいく意識の中で誰かの声が聞こえる…
…誰?
「………ラ!」
…聞いた事のある声…ね……
「……ガーベラ!!」
声のする方を見るとミカルがいた。
……ミカル?……どうして……
「お前、何してる!…魔王が知ったら承知しないぞ!」
「…アスタロトか…堅いこと言うなよ。妖精の1匹くらい。」
ミカルの目が光る。
「オマエか?…ガーベラを傷つケたノは?」
ミカルの体が黒く大きく変化する。
「ミカル!待て!俺がやる。」
アスタロトがミカルを止める。
まずい、今、暴走されるとやっかいだ。
この悪魔を早く倒さないと。
ミカルが黒い悪魔の触手を引きちぎりガーベラを取り返す。
「……ど、うし…て?」
「ガーベラ…」
傷口が深いし出血が多い…
あの時と同じだ…
どうする?
……妖精王を呼ぶか?
「それは、俺の獲物だ!!返せ!」
黒い悪魔がミカルとガーベラに襲いかかる。
ミカルの目が赤く光る。
「……うルさイ、邪魔ダ。」
ミカルがそう言った瞬間に黒い悪魔が切り刻まれた。
…すごい、あの悪魔を一瞬で…
ガーベラが驚く。
切り刻まれた黒い悪魔が元の姿に戻り始めた。
「…この、くらいで、、殺、られ…るかよ…」
黒い悪魔が再びミカルに襲いかかろうとすると後ろからアスタロトがとどめを指す。
「…ザコが、消えろ。」
アスタロトがミカルを見る。
さすがだな。
ほぼ一撃で倒すとは…
俺がトドメを刺さなくても死にかけだったみたいだが。
「ガーベラ、妖精の国ノ入口はどこ?…イそがナイと出血ガヒどい。」
「……もう、遅いわ。」
「何、言っテ…」
「これだけの…傷と出血……もう、、」
「すぐ二手当てシテもらエば…」
「…もう、いい…わ。これ…以上、存在す…る理由なんて……ないもの」
「……そンな事、言ワナいで…約束シタだろ?」
「……約束?」
ドクンッ!
何だ?
……ドクンッ!!
何かが、、
……………ドクンッ!…ドクンッ!!
「…ぐっ!!」
ミカルの中の魔力が全て開放されミカルの体がさらに大きく変化し始める。
……何だ!
誰かの記憶が…
ミカルの転生前の記憶が流れ込んでくる。
「始まったか、、」
アスタロトがガーベラを抱えてミカルから離れる。
「……もしかして、、、」
「ミカルの、、アイツの全ての魔力が開放された。」
ミカルの禍々しい魔力が周辺の草木を枯らしていく。
「…!、ガーベラ!」
妖精王がやって来た。
「…父さま、、」
ミカルの魔力の強さに妖精王も近づけない。
「おい、ガーベラをこちらに、、これ以上は近づけない。」
「…父さまは、離れて。…私は、やる事が…あるから…」
アスタロトがガーベラの体に手をかざす。
「?…何して…る、の?」
ガーベラの出血が止まる。
「治癒の魔法は使えないからな。…お前の体の時間を止めた。」
「…痛みも消してくれると、助かるん…だけど?」
「贅沢いうな。………今度は、失敗したくない、手伝ってくれ。」
「…今度は?…前にもあったのね?」
「ああ。」
「一応聞くけど、、前はどうやって乗り切ったの?」
「………乗り切ってない。」
「…え?」
「前、暴走した時は上位悪魔を集めて倒した。」
「…なるほど。それでミカルは転生したのね…」
「普段は大人しいんだが…たまに力に飲み込まれて暴走するんだ。」
ミカルの体が黒く大きく変化していく。
頭には左右3本ずつの角
背中には大きな翼
手は大きく長い爪が伸びる。
「…完全に正気を失ってるな…」
「少しでも近づけるといいんだけど…何とかできない?」
「……何か策があるのか?」
「一か八か…だけど…」
さっき、私の事をガーベラと呼んでいた。
もしかしたら、、、
ミカルの正気を取り戻せるかもしれない。
「…そうか、ならやってみるか。」
ガーベラを地上に下ろすとアスタロトがミカルの目の前に移動する。
「…どうした?……相変わらず手のかかるやつだな。」
ミカルがアスタロトを見る…
「……ぐっ!!……あ、すタロ…と……」
…俺の事は分かるみたいだな。
アスタロトが両手に魔力を集める
「もう、お前を倒すのはごめんだ、、、」
両手に込めた魔力をミカルにぶつける。
「ぐわっ!!!」
ミカルの放つ魔力が少し緩む。
これぐらいでは無理か…
アスタロトがさらに両手に魔力を集める。
「もうちょっと、頑張りなさいよ!アスタロト!」
「……口うるさい女だな、」
ミカルの手がアスタロトを掴む。
「…!アスタロト!」
ガーベラが叫ぶ。
「…まったく、バカのくせに力だけは強いな。」
「……ぐっ!!、、アスたロと……」
「…思い出せ。ミカルって名前で生きてきた日々を…」
「…み、か……ル?……ぐっ!」
「…力に飲み込まれるな!……ルシファー!お前はそんなにヤワじゃないはずだ!」
アスタロトが両手に込めた魔力をぶつける。
「ぐっ!!……」
ミカルの放つ魔力がさらに緩みアスタロトから手を離す。
ミカルの本当の名前はルシファー?
……ルシファーって父さまが言ってた。
………たしか魔王の次に力を持った悪魔じゃないの?
アスタロトが地上にいるガーベラを抱える。
「…近づくぞ。」
「ミカルの首元に連れて行って!」
自分の魔力の強さに飲み込まれるミカル。
……誰の声だ?
コロセ
…………何言ってる?
コワセ
……………うるさい!
ミカルの魔力が強くなる。
「……まずいな…緩んだ魔力が強くなった。」
「ミカル!聞いて、ガーベラよ…」
「…ガー、ベ…ラ……?」
「そうよ、アネモネの生まれ変わり…覚えているでしょ?」
「……ア、ネ……モ、ネ……?」
ガーベラが子守唄を歌う。
…コノ、こ……え……
……キ、イタ、こ…と…が………あ……ル……
…………やサ…し、イ…………声……………
ミカルの魔力が少し緩む。
ガーベラがミカルの首元に飛び移る。
「……ミカル……っ!」
アスタロトの魔力の効果がきれてガーベラの体から血が吹き出す。
ガーベラがミカルの耳元でささやく。
「………ミ、カル…………大好き………」
「………!!」
ミカルが放つ禍々しい魔力が弱まっていく。
ヒトの姿に変化していくミカル。
徐々に正気を戻していく…
「…ルシファー?」
アスタロトがミカルのそばに行く。
正気に戻ったミカルがアスタロトを見て言う。
「……ごめん、いつも世話かけるな、アスタロト。」
「……いつもの事だ、気にするな。」
ミカルが笑う。
アスタロトは無表情のままだ。
「…ガーベラ?」
ミカルが腕の中のガーベラを見る。
「……よかった、正気、戻した、みたい…ね…」
「君とアスタロトのおかげだよ…」
「………っ!」
ガーベラの体から流れる血が止まらない…
ミカルが妖精王を探す。
妖精たちがガーベラの近くに飛んでいく。
「もう、いいの。……このまま、消え、させて…」
「ダメだよ!……約束しただろ?」
「……アネモネとでしょ?」
「アネモネとガーベラは違うけど同じだよね?」
「…え?」
「アネモネとそばにいるって約束したんだよ。ガーベラとも約束した事になるんじゃないのかな?」
「…だって……あなたはアネモネがいいんでしょ?」
「ごめん、気づくのに時間がかかった…」
「ミカル?」
ミカルがガーベラの額に自分の額をひっつけて目を閉じる。
「アネモネもガーベラも何も変わらない……ドジで手間のかかる子だよ…」
「………ミカル。」
ガーベラも目を閉じる。
「どちらの君にも…そばにいて欲しい。…………ぼくには愛が何なのか分からない。………でもガーベラと一緒にいると楽しいし落ち着く。」
「……私もミカルの、そばに…いたい…。」
妖精たちがガーベラのそばに寄っていく。
魔力を使ってガーベラの傷を癒していく。
「……まーったく!じゃじゃ馬娘が!無茶をする…」
妖精王がガーベラの頭を撫でる。
隣には女王もいた。
「…ごめんなさい、父さま、母さま、」
「…ミカル、娘を返してくれ…」
「…お願いします。ガーベラと一緒にいさせてください。」
「父さま、母さま、お願い。」
「…ガーベラ、体、動くかい?」
妖精王がガーベラに聞く。
「………動かない。」
「え?…傷は治ってるよ…」
ミカルが不思議そうな顔をする。
妖精王がため息をつく。
「ミカルよ、いじわるで言ってるんじゃないんだよ。…ガーベラを妖精の国へ連れて帰る。」
「どうして…」
「最後まで話を聞きなさい。……人間から転生したガーベラの体はまだ不安定なんだよ。本当なら妖精の国で体を安定させてから人間の世界に来るべきだった…。」
「……え?」
ミカルがガーベラを見る。
ガーベラが目をそらす。
「なのに、うちのじゃじゃ馬娘は不安定な体のままこちらの世界でウロウロしてたんだよ。おかげて不安定な体がいつまでも安定しない……さらにこんなに深手を負って……よく消えなかったもんだよ!」
……妖精の国とぼくの家を行ったり来たりしてたのは体が不安定だったから?
「だから、今度こそ妖精の国で体を安定させる。……その後はガーベラの行きたい所へ行くといい。……どうかな?」
「妖精王、ありがとうございます。」
「……父さま、ありがとう。」
「…ではガーベラをこちらに…」
ミカルがガーベラを妖精王に預ける。
「…!……そういえば…さっき、」
ガーベラが何かを思い出す。
ミカルが不思議そうにガーベラを見る。
「…ドジで手間がかかるって言わなかった?!」
ガーベラがミカルを睨む。
「…そうだったかな?」
ミカルがとぼける。
「…間違ってないだろ?」
アスタロトが無表情のまま言う。
「そうだなぁ、間違いないね♪」
妖精王が笑う。
「おしゃべり…が抜けているわよ♪」
女王も笑う。
「何なのよ!皆して!」
ガーベラがふくれる。
「じゃあ、一旦、連れて帰るよ、、ミカル……いやルシファーの方がいいのかな?」
「いえ…ミカルのままで。」
「…そうか。」
妖精王が微笑む。
「じゃあね、ミカル。体が安定したら帰るね♪」
「…待ってるよ、ガーベラ。」
ミカルが微笑む。
つづく




