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悪魔のおくすり屋さん  作者: とまとまと
12/16

第12話 重なる時間…

朝、ミカルが薬の調合をしていた。



アネモネは約束通り帰ってきた…


でも、記憶がない。


僕の事を覚えていない……




ふと窓の外を見ると



「……だから!どうしてそんな目で見るのよ?!」


ガーベラがニワトリ小屋の前にいた。

ニワトリたちの目が光っている。


「…どうして、私を追い回すの?……私の事がきらいなの?」




「……遊んでいるんだと思うよ。」


ミカルが庭に出できた。


「…そうなの?」


「…アネモネとよく追いかけっこしてたんだよ。」


「アネモネ?……私の人間の時の……名前よね?」


「君が妖精王の娘なら……きっと、そうだと思う。」



「……おまえは、アネモネの事をどう思っていたの?」



「………ぼくにとって…アネモネは…………」



ぼくにとってアネモネは……何だろう?



「私にはアネモネの記憶はないわ。…でも思いだけは残ってる。」



……思い?

風が吹いてアネモネの花びらが舞う。




「おまえのそばにいたいという……強い思い。」



ガーベラが真っ直ぐな目でミカルを見る。

アネモネがミカルを見る時と変わらない目で…



ガーベラ(今の私)アネモネ(前のわたし) はチガウけど…オナジ。」




違うけど…同じ?

……ミカルは言葉を失う。



ガーベラがミカルの頬に手をのばしミカルの額に自分の額をひっつけて目を閉じる。



「…おまえのそばにいたい……この思いは変わらない。」



「…ぼくは……」





「…ガーベラ!どうして外に出るんだ。」


2人の前に妖精王が現れた。



「…もう気づいたの?」


ガーベラがため息をつく。



「まったく! ………帰るよ!」


「ちょっとくらい、いいじゃない。」


ガーベラがふてくされる。




「…先に帰ってなさい。わたしはこいつに話があるから…」


「…?」


ガーベラが妖精たちにひっぱられて連れていかれる。

妖精王がミカルをじっと見る。



「……あの子はお前のことを覚えていない…。」



「………そうみたいだね。」



「あの子はわたしの娘だ。…お前にはやらん。もう妖精の国から出られないようにする。…もうここには来ない。」



「…それは、彼女の、自由じゃないのかい?…何をするのか決めるのは彼女だ………!」




アネモネは鳥か?…鳥籠に閉じ込めるのか?



……ミカルはアスタロトに言われた言葉を思い出す。

妖精王と同じ事をしていた?

どこに行って何をするかはアネモネ……いや、彼女の自由だ。





「…あの子は妖精だ、悪魔と一緒にいていいわけないだろう?」


「………妖精と悪魔が一緒にいてダメな理由なんてないはず…」




「本人抜きで話してもらちがあかんだろ?」


2人の前に現れたアスタロトが言う。

ミカルと妖精王が黙る。



「…とにかく、もうここには来させないからな。」


妖精王が姿を消した。





チガウけど…オナジ?


記憶はなくてもアネモネと同じように真っ直ぐにぼくを見てた…

ぼくにとって、アネモネは……何だ?






妖精の国。


アネモネが転生したての時…


「………金髪ではないのか?」


「黒髪も綺麗よ。」


「たしかに。」



「キンパツ?……くろ、かみ?」


目覚めたばかりのガーベラがキョトンとする。




「おはよう、可愛い子。」



「待っていたよ、わたしの娘」

妖精王がガーベラを抱きしめる。


「……むすめ?」


「そう♪キミの父さまだよ。」


「…それにしても、不思議な子。羽根もないし耳も尖ってない。…まるで人間ね。」


「……にんげ、ん?」


「名前は何にしようかな?」


妖精王が考える。



「…なまえ?………あの花はなに?」


赤いガーベラを指さす。


「…ガーベラだよ。それがどうかした?」



「…ガーベラ?、、きれいな花。私のなまえ、ガーベラにする!」



「…え?」


「決めた♪ガーベラよ。よろしくね、父さま。」


唖然とする妖精王と女王。








「…ちょっと目を離すと、すぐに外に行ってしまうのね、ガーベラは」


女王がため息をつく。


「…だって、妖精の国、退屈なんだもん!」


「…でもね、あなたの存在は不安定なのよ。」


「だから、すぐに帰ってくるって♪」


アネモネが子供のように笑う。



「…でもね、」



「もう外に出てはダメだ!!…分かったな!ガーベラ。」


妖精王が現れて言う。



「…どうして?…すぐに帰ってくるから…」


「ダメだ!」


「ちょっとだけ…」


「ダメなものはダメ!」


「………。」


ガーベラが怒る。


「なによ!父さまのケチ!!……知らない!!」


妖精の国の入口へ向かうガーベラ。

妖精王がガーベラの腕を掴む。


「…ダメだ。」




「……………ハナシテ。」


ガーベラの目が赤く光り妖精王の腕を払う。

それでも捕まえようとする妖精王をガーベラの魔力が弾く。



「………わたしがどこに行くかは私が決める。……邪魔するなら父さまでも許さない…」


「…ガーベラ、キミのために言ってるのに」



「あなた、自由にさせてあげましょう。」



「…だけどね。」


「ガーベラ、行ってもいいけど約束してちょうだい。」


「うん♪どんな約束?」


「あちらの世界で苦しくなったらすぐに戻ってくること。あと魔力はできるだけ使わないこと。……いいわね?」



「はーい♪母さま、ありがとう♪」


ガーベラが女王に抱きつく。

そして妖精の国の入口へ向かう。



「……どうして許すんだ?」


「あの子は一度決めたら聞かないわ。ダメと言えば余計に反発する。」


「…だけどね、」


「すぐに飽きるわ♪悪魔は記憶のないあの子を受け入れられないでしょう?」


「…なるほど。」



妖精王と女王が顔を見合わせて微笑む。






夜、ミカルはソファーで本を読んでいた。


「……!……くっ!…」



…久々にきたな。

解放される魔力が増えてきたのか?

胸を押さえて苦しそうにしているミカルの背中をさする手…


「…どうしたの?」


ガーベラが心配そうにミカルの顔を見る。



………もう外に出さないって妖精王が言っていたのに。



「……大丈夫だよ、、少しすれば…落ち着くから。」


「…ヒトに化けてるからじゃないの?楽な姿になればいいのに。」


「……でも、、」



あっそうか、この悪魔は人間のフリをしてたのよね…ガーベラが家中のカーテンを閉めに行く。



「……これでいいでしょ?」


「…………でも、」



「もう!なに遠慮してんの!めんどくさい男ね!…悪魔の姿を見たくらいで驚いたりしないわよ!」



……そうか、彼女は妖精……だったな…



ミカルの姿が黒く大きく変化する。

前にアネモネに見せた姿より魔力が増えて大きくなっていく…


ガーベラがミカルを見上げる。


「…ずいぶん、大きくなるのね…もう少しで天井を突き抜けそうね。」



ガーベラがミカルに触れる。


「……コワく、ナいノ?」



「……本当に変な悪魔ね。」



ガーベラが飛んでミカルの腕に乗る。


「私を誰だと思っているの?」


ガーベラが微笑む。



「……アリガとウ。……すコし、オち着いテきた……」



「少し眠れば、いいかもね♪」


ガーベラが子守歌を歌う。

あの日のアネモネと同じように優しい声で子守歌を。





アネモネだけど………


…………アネモネ、じゃない、、


彼女は………




ミカルがヒトの姿に戻りガーベラの腕の中で眠る。


「……おやすみ。」



ガーベラが微笑む。



「…寝顔が子供みたいね………。さてと、そこにいる赤い悪魔。」


ガーベラが様子を見ていたアスタロトに話しかける。



「………まさか本当に帰ってくるとはな。」


「…? 前のわたし を知ってるの?」


「…ああ。」



「そう、、とりあえず…」


「…とりあえず?」


「この子を運ぶの手伝って♪」


「………はいはい、お姫様。」


アスタロトがため息をつく。






次の日の朝。

ミカルが目を覚ますと自分のベッドにいた。


「…あれ?」


昨日は、たしか………




「……もう帰ったぞ、あの妖精は。」


「そうか、、」


ミカルがキッチンに向かう。




アネモネと同じ子守歌…


やはりあの子は………




ミカルの目の前に黒い髪の毛が垂れてきた…



「……!」



ミカルが上を見るとガーベラがふわふわと飛んでいた。



「……もう大丈夫そうね。」


ガーベラが微笑む。



「…おはよう、昨日は…ありがとう。」


「気にしないでいいわよ。ぐっすり寝れたでしょ?」



「うん、君のおかげだよ。……よかったら一緒に朝食はどうかな?」


「…いいわね♪」


ガーベラが微笑む。

ミカルは朝ごはんを作る。



「…このお皿をテーブルに置いてくれるかな?」



「このお皿ね。」


ガーベラがお皿を持って歩き始めた途端……



ガシャーン!!



ガーベラがお皿を持ったまま額をぶつけて倒れていた…


「……!!」



ミカルが唖然とする。

どうして、何もない所でコケるんだ?



「…いったーーい!!」


「大丈夫?」


「……ごめん、割れちゃった」


「…いいよ。危ないからぼくが片付ける…」


「痛っ!」


ガーベラが破片で手を切った。



「だから、危ないって言ったのに、、見せて。」


「これくらい…大丈夫よ。」



「ダメだよ!バイ菌が入ったらどうするの!」


ミカルがガーベラの手当をする。



「ごめんね、、」


「…いいよ。朝ごはんにしようか?」


2人で朝食を食べる。



「やっぱり、変な悪魔ね。人間みたいな事して…」


「…たしかに、変かもしれないね。……でも昔、育ててもらった人間と約束したんだ。」



「…そうなんだ。」



…久々だな。

誰かと朝食を食べるのは…




「………ごちそうさま。美味しかった♪片付け手伝うね。」



「…………食器はぼくが運ぶよ。」



「もう、落とさないわよ!」


「…いや、落とすよ。」



ミカルとガーベラが顔を見合わせて笑う。

片付けを終えてミカルが薬の調合をする。

村人が薬を買いに来る。

ガーベラがふわふわと浮かびながらその様子を見ていた。

ガーベラは妖精なので村人達には見えていない。



「……ちょっと赤い悪魔。」


「どうした?」


「私、そろそろ帰るわ。…また来るって言っておいて。」



ガーベラが飛んで帰って行った。

…あの娘、どうして行ったり来たりするんだ?



仕事が一段落したミカルがあたりを見回す。


「……あれ?」


「あの妖精なら帰ったぞ。…また来ると言っていた。」



「…そうなんだ。」



明日、来るかな?

……いつの間にかあの子が来ることを望んでいる自分に気づく。


でも、あの子はアネモネじゃない…


分かってる………


でもアネモネと同じことをする。


記憶はなくても……


同じことを言う。



どうしてもアネモネの事を思い出す…


あの子はアネモネじゃないのに……





つづく



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