表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔のおくすり屋さん  作者: とまとまと
11/16

第11話 希望の花

春の日の朝。


アネモネがいなくなってから数ヶ月が過ぎていた。

春の風に吹かれてアネモネの花びらが空を舞う。


ミカルはニワトリ小屋の前にいた。

空を舞う白い花びらをぼんやりとながめていると…



クスクス


クスクス


妖精たちの声が聞こえる…


「……ん?、妖精の声………」


ミカルの周りに妖精たちがやってきた。




クスクス


ひどい顔ね…


クスクス






「…妖精か、、何しに来たんだ?」


ミカルがムッとしていると…



舞う花びらの中から大きな光が見えた。

………なんだ?





黒い髪に赤い目、


10代後半の美しい娘が飛んできた。


娘の周りに妖精たちが飛び回る。




「…………!!…アネモネ?!」



思わずミカルが叫ぶ。

………いや、違う。

どうしてぼくはアネモネだと思った?


あの娘は妖精だ……


でも人間に見える?

…耳は尖ってないし、

………羽根も生えてない。

手足も人間のようだし…


なんだ?この娘は…




「………アネモネ?」


黒髪の娘が言う。


「ちがうわ、私はガーベラ。……おまえは悪魔ね?」


「…ガーベラ?」




なんだこの妖精は…

初めて会うのに、初めて会った気がしない。




「どうして私を見て驚いているの?…私の事、知っているの?」


「…いや、君に会うのは初めてだよ。」



「そうなの?……アネモネ?……どうしてかしら?そう呼ばれると懐かしい気がする…」


ガーベラがミカルの前に降り立つ。



「…懐かしい?」


ミカルをじっと見るガーベラ。

ニワトリが騒ぎ出す。



「?………何この鳥?」


「ニワトリだよ。」


「…にわとり?」



ガーベラがニワトリ小屋をのぞき込む。

ニワトリたちの目が光る。



「………どうして、このにわとりは獲物を見るような目で私を見るの?」


「…どうしてだろ?」



とりあえず掃除するか…

ミカルがニワトリ小屋の鍵を開ける。

ニワトリたちが一斉に飛び出した。

ガーベラとミカルが驚く。

ニワトリがガーベラの背中に乗る。

ガーベラは庭の芝生の上にうつ伏せで倒れた。



唖然とするミカル。



「…えっと、……大丈夫?」


「何なんよ!このにわとり!!」


ニワトリはガーベラの背中と頭に乗ったまま動かない。

ミカルがニワトリを捕まえようとすると羽を広げて威嚇する。


「…どうしたんだ?最近大人しかったのに…」



ガーベラが手足をバタバタして抵抗する。



「早くどきなさいよ!私を誰だと思ってるの!」



ミカルかニワトリを背中からどかせるとガーベラは起き上がって逃げようとする。しかし別のニワトリたちが飛べないようにワンピースの裾をくわえる。



「ちょっと、信じられない!!…おまえのニワトリでしょ!何とかしなさいよ!」



「いや、そう言われても……こんなに暴れるのはかなり久しぶりで……」



ガーベラが低く飛びながら逃げる。

ニワトリはワンピースの裾を離さない。

他のニワトリもその後を追いかける。



思わず吹き出すミカル。


「…ぷっ、、あははは!」


「ちょっと!、笑ってないで助けてよ!」



ガーベラがまた芝生の上に倒れこむ。

またニワトリがガーベラの背中に乗る。



「ちょっと!どきなさいよ!…私を妖精王の娘だと分かってやってるんじゃないでしょうね!」



「…!!…妖精王の娘?」


ミカルが驚く。


……まさか、




………必ず、帰ってくるから……


アネモネの言葉を思い出す。




……………もしかして、、



ミカルがガーベラに近づく。


「……………………アネモネ…なのか?」


ガーベラがミカルを見上げる。



「……?、さっきも言っていたわね?、アネモネって。私はガーベラよ。」



「………そうだよね、、ちがうよね…」



「…でも、私は元…」



「コラ!外に出てはダメだと言ったろう?!」


ガーベラの言葉を遮るように妖精王が叫ぶ。



「あ、見つかった…」


ガーベラが焦る。

妖精王がガーベラのそばに行くとニワトリたちがガーベラから降りる。



「ほら、帰るよ。」


「えーー?まだ遊びたい!」


「ダーメ!帰るの!」


ガーベラがふてくされるが妖精王は無視して抱き抱える。

妖精たちも集まる。




「また、来るね♪」


ガーベラが笑顔でミカルに手を振る。

妖精王がミカルを睨む。



「ダーメ!アイツは悪魔だ。食べられるよ、ガーベラ!」



きょとんとしたガーベラが言う。


「……食べないわよ!あの顔、見たら分かるじゃない。人や妖精を食べるようなヒトじゃないわ…」



ミカルと妖精王が驚く。




記憶はないはずなのに……

…どうして、ここに来たんだガーベラは。


「帰るぞ!」


妖精王たちが姿を消した。






「……やっぱり、アネモネだ…」


でも姿も人格も違う。

…記憶もないみたいだ。


ニワトリたちがご機嫌で水を飲んでいた。


「…どうやら、君たちの遊び相手が帰ってきたみたいだよ。」


ニワトリたちを見ながらミカルが微笑む。




アスタロトが遠くから様子を見ていた。

……本当に戻ってきたな、あの娘。

あの娘といい、カルミヤといい…


…まったく、人間という生き物は謎だらけだな。









「…なによ!あんたが育てろって言ったんでしょ?」


「たしかにそうだが…えらくあっさりと引き受けたからどうしてかと思ってな。」


カルミヤがアスタロトをじっと見る。


「…なんだ?」


「あんた、なんでいつも無表情なの?」


「…?……無表情?……そうなのか?」


「自覚ないんだ…」


アスタロトの両方の頬をつかむカルミヤ。


「!!…何をする!!」


「ちょっと柔らかくしたら表情がでるかもよ?」


ニヤニヤしながら両方の頬をひっぱるカルミヤ。


「!……やめろ! …離せ!!」


アスタロトがカルミヤの手を離す。


「…悪魔ってのは感情がないの?」


「……知るか。人間が感情がありすぎるんじゃないのか?泣いたり、笑ったり、まったくうるさい生き物だ。」


「あはは!たしかに騒がしいかもね。…でも楽しいわよ。泣いたり、笑ったりするのも。」


「…口の減らない女だ。」


「感情のない悪魔ね。」



カルミヤがニヤリと笑う。





……本当に口うるさい女だったな。

そういえばあいつも芯が強った。

人間の女は皆こうなのか?

………謎だ。




「…?どうしたアスタロト?…考え事か?」


ミカルが不思議そうにアスタロトを見る。



「…いや、何でもない。」





数日後。


ミカルが薬の調合をしていると妖精たちがやってきた。



「…何だ?…また来たのか?」


あんたの為じゃないわよ!


「…私の事を心配してついてきたの」


ミカルの頭上にガーベラが浮かんでいた。


「君は……」


ガーベラがミカルの前に降りてくる。


「…何してるの?」


「…薬を作っているんだよ。」


「くすり?…どうして?」


「薬屋をやっているからね。……人間の為だよ。」


「……どうして、人間の為にくすりを作るの?」


「どうしてって……」



クスクス


変人なのよ


クスクス


悪魔なのに人間のそばにいるの


クスクス



「…そーなの?おまえ、変人なの?」


ガーベラがミカルに聞く。



「…いや、変人……ではないよ……。」


ミカルが焦る。

家の中を飛び回るガーベラ。


「……初めて来たのに、、どうしてかしら?落ち着く場所ね。」


「君は、、妖精王の娘と言っていたけど本当なのかい?」


「本当よ。私、転生したての妖精なの。……元は人間よ。」


「!!」



…やっぱり、アネモネだ。

妖精王の所へ帰ったのは転生する為。

人間を捨てるために…



「…人間の時の記憶はないの。父さまは妖精の国にいないとうるさいんだけどね。……妖精の国は退屈だし。それでこっちに来たんだけど………自然とこの場所に来ちゃった。」



「…そうなんだ…」



記憶がなくても自然とここに来た?

……アネモネだけど、、

覚えてないんだ…

今まで過ごして来た日々を。



同じだけどチガウ……


………………アネモネじゃない。




「……どうしてそんなに苦しそうな顔をして私を見るの?」


ガーベラがミカルの頬に触れる。


「…え?」


苦しそうな顔?

そんな顔してたのか…ぼくは。




「……変な悪魔ね。」


ガーベラが微笑みながら目を閉じてミカルの額に自分の額をひっつける。



…花の匂い?

ガーベラからいい香りがする…



「…どうしてかしら?おまえに触れると落ち着く…」


ミカルがガーベラの手に触れる。



「……アネモネ……。」



ガーベラが目を開ける。


「だから、わたしはガーベラよ。」



「……あっ、そうだったね…」


ミカルが焦りながら微笑む。



「……アネモネって………ん?」


ガーベラがあたりを見回る。




「…?……どうしたんだい?」


「………早いわね。」


ガーベラがため息をつきながらミカルから離れようとする。




「父さまが気づいたみたい。…帰るわ。」


「…………。」


ミカルが黙る。

ガーベラがミカルをじっと見る


「そんな寂しそうな顔しないでよ。また、来るから♪うちの父さまは心配性なのよ。」


ガーベラがミカルの額にキスをする。

ミカルが驚く。

ガーベラが微笑んで飛んでいく。

ミカルがその姿を見送る。



寂しそうな顔……をしてたのか?……ぼくは。


記憶はないのに…ぼくの心を読み取る…


アネモネみたいだけど……


……アネモネじゃない?





風にのってアネモネの花びらが舞う。


庭の花壇には赤いガーベラの花が咲いていた。


…希望の花、ガーベラ。




つづく




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ