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悪魔のおくすり屋さん  作者: とまとまと
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第1話 そして2人は出会う

精霊、妖精、悪魔、天使……人ならざる者が至る所に存在し、人間達に祝福と絶望を与える世界


その人ならざる者達の力を借りて魔法という奇跡をおこす魔法使い。医学が発達途中のこの世界では彼らが作る薬が人々の病気や怪我を治していた。


自然豊かな田舎にある小さな村。

この村に魔法使いが営むくすり屋があった。



先代の魔法使いはカルミヤ。

40代前半、明るく面倒見みのいい黒髪の女性。

彼女の作る薬はとてもよく効くと評判だったが昨年、病気で亡くなった。その後を継いだのがミカル。端正な顔立ち、銀髪で長髪の青年。いつも笑顔で温厚な性格。先代のカルミヤ同様、彼の作る薬もとても良く効くと評判だった。


彼が営む薬屋は木造の二階建ての小さな家、庭には鶏小屋と花壇があり春の花々が咲き始めていた。今はミカルが1人で薬の調合、販売をしている。ミカルは幼い頃に拾われカルミヤに魔法使いとして育てられた。




いつもと変わらない朝、薬の材料が置かれている作業部屋でミカルは薬の調合をしていた。


「……これでよし。」


薬がひとつ出来上がった。




トントン(ドアをノックする音)



「先生、いつもの薬くださいな」



村人が1人、やって来た。ミカルは魔法使い、医師ではないが村人からは先生と呼ばれていた。


「先生の薬を飲むと腰の痛みが楽になるんだよ、本当に助かるよ。」


「それは、よかったです」


笑顔で答える。彼はいつも笑顔で穏やかな青年だ。

その後も村人が次々に薬を求めてやって来た。

気がつけばもうお昼、そろそろ昼食にしようかと考えていると隣に住む陽気なおばさんが笑顔でやって来た。


「先生、お昼にサンドイッチはどうだい?たくさん作ってきたんだよ」


「ちょうど、お昼にしようかと思っていたんですよ。いつもありがとうございます。」


隣のおばさんはよく差し入れを持ってやって来る。1人で暮らすミカルを息子のように思っているようだった。テーブルの上にハム、レタス、トマトなど具がたっぷりのサンドイッチとコーヒーが用意された。



「村を出て町へ行ったうちの息子もやっと自分で商売を始めたらしいんだよ。」


「それはよかったですね。」


「この村には何も無いからね。若いもんは町へ行ってだんだん年寄りが増えていってるねぇ~。先生がカルミヤ先生の後を継いでくれて本当に助かったよ。」


「皆さんのお役に立ててなによりです。」



昼食を終えて隣のおばさんを見送り再び作業部屋に戻り薬の調合を始めた。



「……薬草が足りないな。…後で森に取りにいくか。」



薬の調合や庭の手入れ、鶏の世話…あっという間に時間が過ぎて辺りはすっかり暗くなっていた。


「…もうこんな時間か、でも明日の分の薬が足りないな。……取りに行くか。」


フードのついた上着を着て背中にカゴを背負い手にはランタンを持ち夜の森へ出かける。夜の森は野生の動物や人ならざる者が出没するので危険だ。しかしミカルは気にする様子もなく森の奥に入っていく…



暗い森に小さな光がいくつか浮かび上がる。背中に羽根を付けた小さな妖精だ。森の中に入るミカルの様子を伺う妖精たち…




クスクス


また来たわよ、あいつ…


クスクス


ひどい匂いね……なぜ人間の手助けなんてしてるのかしら?


変わり者?……それとも臆病者?


クスクス


クスクス





妖精たちがミカルの事を好き放題に言っている。

ミカルにその声は聞こえているがまったく気にしていない。目当ての薬草を見つけカゴの中に入れていく。妖精たちはその様子を伺う。薬草を取り終えて帰ろうと歩いていると明かりと人々の声が聞こえた…





「我らの神よ、どうかそのお姿をお見せ下さい 」




黒いフード付きのマントを来た集団が膝をつき両手で天を仰ぎながら悪魔召喚の呪文を詠唱していた。

集団の前には石の祭壇があり黒いフード付きのマントを着た少女が座らされていた。両手は縛られ、足枷を付けられていた。




ミカルは木の影から様子を伺う。カルト教団の悪魔召喚の儀式のようだ。見つからないようにその場を離れようと歩き始めた時、強い風が少女の黒いフードを外す。



金髪の長い髪に青い目、幼く愛らしい顔の少女の姿にミカルは目を奪われた。



おそらくカルト教団に生贄の為に買われて来たかさらわれてきたのだろう。しかし多人数相手に1人で向かっていくのは無謀だ。やはりこのまま通り過ぎる方が賢明だと身を潜める。






「 我を呼び出したのは何者だ? 」





低く地響きのような声が聞こえると同時に黒く大きな影が石の祭壇の前に姿を表した。巨大なドラゴンだ。カルト教団のリーダー格の男が喜び叫ぶ。



「我らが神よ!来て下さりありがとうございます。この生贄を捧げます!どうか私にそのお力をお分けください!」


リーダー格の男がドラゴンに懇願する。ドラゴンは少女に目をやりながら答える。



「 この程度の生贄で我の力を分け与えろと?愚かな人間どもめ!消え失せろ! 」



ドラゴンが大きな口を開け火を吹いた。辺りの草木が燃える。カルト教団の人間達は大慌てで逃げ惑う。さらにドラゴンは火を吹き続ける。逃げ惑う人間達の間をぬってミカルが少女に近づき抱えてその場を立ち去った。




今まで静かにしていた妖精たちが急に話しかける。





その子に触らないで!汚らわしい!


その子は私たちのものよ離しなさい!




妖精たちの言葉を無視して草陰に隠れる。驚いた表情でミカルを見つめる少女。


なぜ助けた?自分の行動を理解できない。ほっておけばよかったのになぜボクは助けたんだろう?





隠れるミカル達の近くにドラゴンがやってきた。




「 隠れても無駄だ。その娘を差し出せばお前は見逃してやる。出てこい! 」




少女はミカルの腕から離れ草陰から出ようとした。関係のない者を巻き込む訳にはいかない。自分が出ていけばこのヒトは助かる。ミカルは自分から離れようとする少女の腕をつかんだ。



「大丈夫だよ。」



笑顔でそう言うと少女を草陰に残しドラゴンの前に姿を表した。




「 娘はどこだ?さっさと出せ! 」




ミカルは不気味な笑顔を浮かべる。そしてドラゴンの頭に直接話しかける。



「 ……小物がよく吠えるな、誰に向かって口をきいている? 」



ミカルの銀髪がゆらめき彼の後ろに大きな黒い影が浮かび上がる。ただならぬ気配にドラゴンが後ずさりする。



「 ……お前、何者だ? 」



ミカルの目の色が赤く光る。



「 なんだ分からないのか?同族なのに?お前本当に魔族か? 」



言葉にはせずドラゴンの頭に直接話しかける。

ミカルの放つ魔力がどんどん増していく事にドラゴンの背筋が凍る。そしてドラゴンは本能的に気づく、こいつは只者ではない…相手にしない方が利口だ。


ドラゴンは何も言わずにその場を飛んで離れていった。




草陰に隠れていた少女が出てきた。ミカルが笑顔で話しかける。



「大丈夫だったろ?…君、名前は?お家はどこかな?」



少女はミカルをじっと見つめる。彼の後ろに見える黒い影を見て考えていた。このヒトは人間ではない。



「怖かったね。話できるかな?ボクの名前はミカル、近くの村で薬屋をしているんだ。魔法使いでもあるよ。」



ミカルが笑顔で話かける。ドラゴンに対して言葉に出して話してはいないし自分が人間ではない事に気づかれていないはず……それとも悪魔とバレたか?




「…………。」


知らないフリをした方がいいのかもしれない……そう思って少女は何も言わずにミカルに笑顔をみせた。



「……もしかして、声が出ないのかな?」


ミカルが聞くと少女はうなずいた。











森の中で生き残ったカルト教団の人間達が集まっていた。


「神への生贄が足りなかったようだな。あの娘は逃げたのか?高かったのにな!もしかしたらどこかで生きているかもしれんな、探してこい!」


リーダー格の男が他の男達に命令した。





「 ……あいつが他のモノに興味を示したのは初めてなのでな。あの娘を追うのはやめてもらおう。 」




リーダー格の男の目の前に赤髪で長髪、左右に2本ずつの角を生やした目つきの鋭い無表情の悪魔が現れた。普通の人間には悪魔が見えない。悪魔が人間に姿を見せようとする場合、もしくは視る力がある人間でなければ…




「ひっ!!!……もしやあなたも神ですか?」




突然、目の前に現れた悪魔に驚きながらも喜ぶリーダー格の男。




「 あの娘は諦めろ。そうすれば命だけは助けてやる。 」




「神のご命令とあれば従いましょう。その代わり私にそのお力を分け与えてください。」


リーダー格の男が懇願する。




「 どうしようもない人間だな。………」


赤髪の悪魔がそう言い終わった瞬間にその場にいた人間の首がすべて飛んで辺りは血の海になった。









ミカルは少女を家に連れ帰っていた。

手足を自由にして、少女の喉を診ていた。身体的に問題はなさそうだ。精神的な事で声が出ないのかもしれないな…



「お家はここから近いのかな?」


少女が首を横に振る。


「お父さんとお母さんは生きてる?」


少女が首を横に振る。



「……もしかして帰る家はないのかな?」


少女がうなづく。



帰る家がないのか…どうしたものかさすがにここにずっと置いておく訳にはいかない。自分は人間ではないのだ。人間の里親を探さなければ…





「お前が他のモノに興味を示すとは珍しいな…」


ミカルと少女の頭上にフワフワと浮かびながら赤髪の悪魔が話しかけた。




「アスタロトか、……通りかかっただけだ。」



「…本当か?今まで何に対してもまったく興味を示さなかったのに?ただ通りかかっただけで助けるのか?」



赤い髪の悪魔の名前はアスタロト。

何故かミカルの周りをウロウロしている。常に無表情な男。彼がなぜミカルの周りをウロウロしているのかは不明だ。



「だから!ただ通りかかっただけで………!!」



しまった!少女が目の前にいるのに普通の人間には見えないはずのアスタロトと話をしていた。

少女には1人で誰かと話しているように見える、単なる変人のように見えるな……ミカルは焦った。




「……えっと、これには訳が…」



何とかごまかそうと少女に目を向ける。

少女は天井で浮かんでいるアスタロトをジッと見つめていた。この子は視える人間か?




「………もしかして……見えてる?」



とミカルが聞くと同時に



「…そうか、アネモネというんだな、」



アスタロトが言った。



「え?」



ミカルが驚く。



「この娘、アネモネというらしいぞ。声が聞こえなくても頭に直接話しかければいいだろう?」


アスタロトはミカルをじっと見る。ミカルは相手に直接話しかけることは出来ても相手の心を聞くことはできない。今までずっと他のことに興味をもたないミカルには人の心を聴くことは出来ないらしい。



「…………この娘、お前が悪魔だと気づいているぞ」



「へっ?!」




ミカルが唖然とする。どうやら最初からバレていたらしい。アネモネに視線を向けるとミカルの服の裾を掴んでニッコリと微笑えんでいた。




そして2人は出会い、これからミカルとアネモネの物語が始まる





つづく




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