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映し鏡  作者: あなぐらグラム
おまけ
7/10

if:ミラはざまぁする(コメディー風)

 おまけ第一話です。ちょっと暗かったミラを明るくしてみました。本編を読まないとわかりにくいと思いますので本編を読んでからお読みください。若干、ミラの性格が変わってるかも。

『――その性悪の素顔!醜い顔を白日の下に晒すがいいっ!!』

 殿下が私のベールに手をかけ、ひらりとベールが床に落ちる。


(この時を待っていましたわっ!!)


「「「なっ!?」」」

「…そ、その顔、はっ……!?」

 ふふっ、驚いているようですわね。ですが、ここからはあなたがたに主導権なんて渡しませんわよ!ここからは私の彼女に対するざまぁタイムなのですから!

「……えっ?誰??」

 ほ~ら、愛しのアウラ様が困ってらっしゃいますわよ?皆さん、お助けしなくてもよろしいんですか?な~んて。できませんわよねぇ?だって、この顔の持ち主は…。

 さて、そろそろ楽しませていただきましょうか。


「あら?アウラ様はこの顔に見覚えがありませんか?」


 先程まで追い詰められていたような声色は一切感じさせず、私は余裕を持った態度でアウラ様に問い掛ける。アウラ様は私の余裕が気に食わないらしくムッとした表情を浮かべますが、私の余裕の原因を知らない彼女は強がりだと考えたらしくその態度を崩すべく口撃してくる。

「――ふんっ!何よ!それほど醜くないとはいっても、私に比べたら月とすっぽんもいいところだわ!」

 同意を求めるように殿下や取り巻きの方々に振りむきますが、彼らはどこか気まずそうに視線を逸らすばかり。

「ちょっと!皆、どうしたの?これからこの女狐を断罪するんだからっ、ちゃんとしてよ!」

 彼女が怒るのも無理はありません。先程まではずっと自分の味方だったのに、それが手の平を返したように我関せずを貫こうとしているのですから…。特に、殿下。あなたに至っては隙を見て逃げようとしてますわよね?

 他の方ならばいざ知れず、あなたが逃げられるはずもないでしょうに…。

 呆れて物も言えませんわ。

 こうなる可能性があるとあらかじめお伝えしていた国王夫妻も呆れていらっしゃるようですし。

 この状況を知っていれば陛下たちの反応が当然ですわね。そして、逆を言ってしまえば状況が理解できなければアウラ様のように混乱するのも当たり前。

 事実、事情を全く知らない会場の方々は殿下たちの態度の変化に戸惑っておられるようです。とてもではありませんが、これが断罪を決行しようとしていた方々の態度だとは思えないと感じ取っておられるのでしょう。

 もはや、断罪を見守るのではなく演劇を見つめるかのようにこの先の展開に対する期待すら感じてしまえます。


 本来ならば、私が面倒を見る必要のない幕引きなのですが、関わってしまった人間として、そして何よりもこれを放置することで被害を被る方がいるので引導を渡すことにしましょう。

 ……やれやれ。何故引導を渡されるはずだった私が引導を渡す羽目になるのでしょうか…。


「アウラ様?あなたの疑問には私がお答えいたしましょう」

 挑発的な態度はもうやめにします。これ以上こんな茶番に付き合っていたら私のプライドが持ちませんもの。

「なっ、なによっ!?何を使用っていうの!」

 優しく声をかけたのに、そこまで怯えなくても…。ちょっとだけですけど、ショックですわ。

「いやですわ。それほど、怖がらないでくださいまし?アウラ様は何故殿下たちが突然関わり合いを避けるような態度を取られたのか気になっておられるようなのでその理由を説明しようとしているだけです」

「…!?ハイドリヒ様たちがこうなったのはあなたの仕業だったのね!この、雌豹!ハイドリヒ様たちに一体何をしたのよっ!」

 …まったく。少し情けをかけたらすぐに調子に乗るんですから。でもいいんです。許します。これからあなたは不幸のどん底に落ちていくと私は知っていますから。


「実は、この顔はある人物と同じ顔をしているのです」


「…………?はあ?どういうこと?」

 ふふっ、意味がわかりませんか。そうでしょうね。事情を知らないとさっぱりですよね。

「それを知るためには私の身に起こったある事件から語らねばなりません」

 面と向かい合っていたアウラ様から視線を陛下へと移す。陛下が了承して下さったのを確認してから芝居がかったような身振りで会場にお集まりの貴族の方々を見渡し、最後にアウラ様に視線を移し語りかける。私の身に起きたある出来事について――。


「私は呪いをかけられております――」




 これまでの人生で一番うまく説明できたのでは?そんな満足した語りを終えると、会場はざわめき陛下に説明を求めようとする方々が大勢いらっしゃいます。

 私が語ったのはこの国に伝わる禁術とその効果について。かつて父であり、先代ウェラー侯爵が行った罪について。

(正直に話すとスッキリしました)

 会場のどよめきなどお構いなしに一人だけ晴れやかな気分を味わっていると、私とも会場の雰囲気ともまったく異なる方々がいらっしゃいました。

 言うまでもありませんわね。アウラ様とその取り巻きの方々です。…あっ、陛下と王妃様も違うと言えば違いますが、あのお二方は呆れが過ぎてどうにでもなれと投げやりになっておられるだけですのでお気になさらず。


 さて、話を戻します。アウラ様はわなわなと震えていらっしゃりますね。怒りでしょうかそれともここまでの話がすべて食い違うような展開による羞恥からでしょうか?お顔が真っ赤に染まってますわ。そして、殿下たちはバツが悪そうなお顔をされてますわね。

 それはそうでしょうね。

 私が言ったのは私の今の顔が――殿下が本当に愛する方の顔だと言ったのですから。そして、今の顔はアウラ様とは似ても似つかない御顔立ちをしています。


 つまり、アウラ様は自分が殿下に愛されているからこそこのような断罪の舞台へと躍り出たのに、殿下は自分を愛してなどいないと公衆の面前で明らかにされたのです。

 しかも、ここに居られるのは陛下自らが招待するような国を支える方々ばかり。高貴な身分の紳士淑女の皆様がやたらと噂を広げるようなことはありませんが、人の口に戸は建てられぬもの。噂が広がるのは明白なのですから。そうなればここまで盛大に勘違いをして、自分よりも格上の存在に喧嘩を売ったアウラ様がどうなるかなどすぐにわかるというものです。

(お可哀想に。少なくとも、この国にはいられませんわね)

 形式上の憐みを向けておきましょう。どうせ、偽証罪でしばらくは表に出て来られないでしょうから大した問題ではないかもしれませんが。


 あっ、ちなみにこの顔の持ち主はつい先日王宮に訪れた踊り子の顔です。

 いや~、流石は人々を魅了するプロの顔。何もしなくてもその妖艶さが収まるところを知りません。本人のダイナマイトバディと比べると私などみすぼらし過ぎて顔だけが浮いてしまっています。

 アウラ様などは断崖絶壁にも等しい体型ですのでその差が明白。さらには顔も幼さが残っておられて化粧をしなければ見れたものでもないので屈辱でしょうね。

 彼女はこの場にこそいませんが、まだ国内で興行をしておられるはず。これからの興行のご迷惑にならないといいのですけど…。


 ――この私の予想は良い意味で裏切られることとなる。私の顔を見て、興味を持った貴族の方々が彼女の踊りを見に行き、貴族様がこぞって見に行かれる踊り子を一目見ようと平民も集まることでかつてないほどの大盛況となって国内での活動が終わったそうです。

 他国へ行く際に私に直にお礼を言いに来られたのでせっかくですから個人的に踊りを見せていただきました。


「――それにしても殿下と取り巻きの方々は本当に仲がよろしいですわね?まさか、アウラ様に続いてまたもや同じ人物を好きになるなんて夢にも思いませんでしたわ」


 私の放った一言がいい着火剤になったようでそれからのアウラ様と殿下たちの喧騒は見るに堪えないものでした。


 結果としては全員が衛兵に取り押さえられるまで暴れ続け、アウラ様は化粧が剥がれてみすぼらしい顔が晒されることに。殿下方も初めはアウラ様の誹りなどを甘んじて受けておられましたが、逆上した彼女の平手打ちを受けていたせいでお召し物やおぐしが乱れておりました。

 えっ?私は何をしてたかですって?

 その騒動に巻き込まれないようにそっとその場を離れて、王妃様の傍で茶番劇の終幕を観覧してましたが?人間あそこまでいくと醜くてお話になりませんわね!


 本来だったら、私は禁術のことが公になった時点で処刑が決まっていたのですが、あまりにもバカバカしいのでお小言を頂戴して終わりになりました。どうやら、今の顔をしている私が処刑されるのはもったいないと会場に居られた紳士貴族の方々の強い嘆願があったようだということを男が信用できないと憤慨しておられた王妃様とのお茶会で聞かされました。

 王妃様がそんななので、私が陛下との関係を修復するために苦労するのはまた別のお話。


 さて、実はこのあと殿下はあまりにも惚れっぽすぎるという理由で王太子から外され、王位継承権は第二王子に譲られることとなりました。

 ちなみに、アウラ様の取り巻きに次期ウェラー侯爵となるはずだった弟がいたのですが、不祥事の煽りを受け襲爵は取り消し。代わりに私がウェラー侯爵を継ぐことになりました。これまで隠していた顔を晒すのも面倒だったのですが、一度公に出た以上は隠す理由もない――というよりもこの顔のおかげでこれまで交流のなかった方々が援助を申し出てくれたので隠すと面倒となり、抑圧から解放され自由気ままな侯爵生活を送っています。

 これにより亡父の願いだったウェラー家の発展は果たされたようですが、何のためにニコライに心労をかけることなくウェラー侯爵家を譲る準備をしていたのか…。母と二人で呆れるしかない状況に嫌気がしたのは言うまでもないでしょう。


 それにしても…。罪を告発した後の方が快適な生活が送れるなんて世の中どう転ぶかわかりませんね。これだけは殿下の移り気に感謝です。


 そう言えば、アウラ様は表向きは王族に手を上げたからという理由で処刑されたそうですよ?正確なところは私を断罪するために陛下に嘘を吐いたのが原因なのですが…、息子の醜聞――つまりは国の恥を貴族以外に知られるのを避けるために表向きの理由が付けられたというのが正しいのでしょうね。

 そりゃあ、惚れっぽい王子のせいで大事になったなんて言えないでしょうから。


 親しき仲にも礼儀あり。アウラ様?自分への好意だと受け止めるのはいいですが、ちゃんと確認しないからこんな目に遭うんですよ?自分の顔ではありませんが、この美しい顔とあなたのようなお子様な顔では勝ち目などないのですから。

 それにしても本当に男ってのは顔しか見てないんですから嫌になりますね!

 そもそも顔で惚れるような人たちは惚れっぽいので次々と移り変わります。ハイドリヒ(笑)も例外ではなかったようです。本文では述べてませんが、ハイドリヒたちは本編であったように身分を剥奪されたりはせず、自分から身分を捨てて踊り子を追いかけていきましたとさ。ちゃんちゃん♪

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