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映し鏡  作者: あなぐらグラム
本編
2/10

罪の顔

本日2話目!明日も0時と18時に更新していきます。

「ど、どういうことよっ!な、なんで、なんであんたが私と同じ顔をしてるのっ!?」

 一番最初に正気に戻ったのは私と同じ顔をした少女、アウラだった。

 彼女が受けた衝撃が他の方の受けた衝撃とは別の物だったからこそ、このように早期の復活が出来たのでしょう。他の方々は断罪しようとしていたのに、現れたのは愛しい者の顔という事態に思考が停止してしまっているようですし周りの方々はそもそも話に入ってくるような無粋な真似はなさらないでしょう。


(――ですが、あなたの質問に答えるつもりはありません)


 私は、喚く彼女を放置してただひたすらに殿下の回復を待った。


(殿下、この騒動を引き起こした責任としてあなたには最後まで見届ける義務がございます)


 どこか祈るような気持ちで待つこと数分、私が殿下以外を見ていないことに気付いた方々もなりゆきを見見守る姿勢に入ったところでようやく殿下が再起動なされました。

「…ミ、ミラ……?どういう、どういう、ことだ…?」

 呆然自失となり、先程までの強気な態度がどこかへ霧散した殿下の言葉。覇気もなく、なんとか絞り出したと表現するのが適切な声でしたが、私にはちゃんと届きました。

 これから起こるであろう問題に思いを馳せそうになりますが、そんな資格がないことを思い出しぐっと堪えてから口を開きました。


「殿下。この顔は私と私の父――先代ウェラー侯爵の罪でございます」

「……罪?罪だとっ!?ま、まさかっ、アウラは――」

「――それは違う」

 殿下が明らかに見当違いな答えを言おうとしたところで、厳格な否定の言葉がかけられた。

 発したのは――

「――ち、父上っ!?」

「ハイドリヒよ、これ以上ミラ嬢から語らせるのは余も心苦しい。よって、これからは余が代わりに語ろう」

 これには私も驚きました。

「へ、陛下っ!?いけません!私のような穢れた者のために陛下にこのような話をさせるなどっ……」

「……よい。よいのだ、ミラよ。それにこれは何もお前だけのためではない……わかるであろう?」

 驚きとめようとした私に陛下の慈愛に満ちた眼差しが向けられる。その眼差しの温かさはまるで私の罪を許すかのように凍てついた心に熱を取り戻していく。

 陛下がおっしゃったように、これは私だけのためではない。

 高位貴族のウェラー侯爵家。その当主代理補佐を務める私の罪は王国の罪。それに、殿下が先程発しようとした言葉。

 ――おそらくはアウラ様と私が血縁関係にあるなどという妄言。それを発すれば、殿下の今後に大きな支障をきたすのは間違いない。この騒動を起こした段階で殿下に対する失念がいくつか寄せられている。これ以上の失態は国として、また一人の親として容認できない。

 陛下はきっとそうお考えになられたのだ。

 

(ならば、私に出来ることはただ一つ)


「出過ぎた発言をお許しください。すべては陛下の御心のままに」


(私はただ、王国の民として一人の臣下として忠義を尽くすのみ!)



「これから話すことは亡きウェラー侯爵の名誉に関することなので、出来うることならば口外したくはなかった。ことの始まりは今から14年前に遡る――


 ウェラー侯爵は野心家であった。だからこそ、彼は同い年のハイドリヒと娘のミラ嬢の婚姻を狙っていた。そのような者がいなかったとは言わないが、彼はその中でも積極的にことを進めようとしていた人物だった。

 だが、ライバルも多く思うようにことが進まなかった。

 そんな中、彼はある禁術に目を付けたのだ。

 王国に代々伝わる秘術であり、使い方を誤ればすべてが崩壊してしまうゆえに使用を禁止された術。その術は、対象の最も愛しいと思える人物の顔を張り付けるという術だった。それは対象が別の人物に好意を抱けば別の人物の顔に代わる。つまりは、愛しい相手の最愛の者の顔が張り付き続けるというものだった。

 ただし、その術は一度かけてしまえばある一つの手段以外では決して解除することができない。


 その手段というのは、対象が術をかけられた人間を心の底から愛すること。そうすることで術は解け、本来の顔に戻ることができる。


 ただし、それは難しい。なぜならば対象の前では常にその人物の最愛の者の顔になっているのだ。それでは自分のことを好いてもらうことなどできようか?なまじできたとしても、それは自分ではなく別の人物への好意ではないのか?そして、その愛は顔が戻ってからも続くのか?


 絶望しか存在しない禁術。それでも、彼は縋ってしまった。まだ幼い娘にその術をかけてしまった。

 ――その日は、ちょうどハイドリヒとミラ嬢の初顔合わせの予定日だった。めかし込んだミラ嬢はウェラー侯爵がほんの少し目を離した隙に部屋を出て行ってしまった。

 そして、彼女は運命の悪戯とも言うべきことに偶然にもハイドリヒと会ってしまったのだ。それがこの悲劇の始まり。

 曲がり角でぶつかったミラ嬢は顔を上げた時には元の顔ではなくなっていた。その顔は当時ハイドリヒが読んでいた絵本の登場人物と瓜二つだったとか…。

 父親の言いつけを守らずに出歩き、その上問題が起きたとあっては叱られるのは必至。だからこそ、彼女はハイドリヒの制止を振り切り、逃げ出した。そして、帰ってきた娘の慌てようと変貌してしまった顔を見て、ウェラー侯爵はようやくしでかしてしまったことの大きさに気付き、慄いたのだ」


「……そんなっ!?」

「ハイドリヒ、お前がかつて言っていた初恋の少女。絵本から飛び出したような少女こそがミラ嬢だったのだ。ウェラー侯爵はお前との顔合わせがあるのを知っていたがゆえに、すぐさま余の所に来て術の解除法を問いただした。だが、ミラ嬢の顔が元に戻ることはなく、それに責任を感じた彼は……」

 それだけで、会場にいた方々は父ウェラー侯爵の死の真相に行き着いたのです。突如として亡くなった真相に。


「何故ですっ!?何故、私にまで黙っていらしたのですかっ、姉上!!」

 陛下の話を聞いた弟――ニコライ。彼が怒るのも無理はない。だが、ここまで聞いて理解が出来ないようでは先が思いやられる。陛下が殿下にしたように、私も心を鬼にする必要があるようですね。

「――わかりませんか?」

 失望を隠さない冷たい声音で問い掛けるが、怯むだけで理解し様子は見られない。がっかりしたという感情を隠さないほどに大きなため息をついてしまいました。

「あなたはその時、まだ生まれたばかりでした。陛下の温情で我がウェラー侯爵家は存続することができていますが、禁止された術を使った犯罪者の一族。それを知らないように生きる。……それがどれほど幸せなことか。そして、私が家でもベールをしていたのは共に生活する家族の顔がある日突然変わったら?あなたはそれを受け入れることができますか?」

「そ、それは……」

「出来ないでしょう?それこそが私があなたに冷たく当たっていた理由です。いずれウェラー侯爵家を継ぐあなたが抱える罪を少なく、……それが母と私で決めたことなのです」

 ハーレムメンバーの弟君ニコライ。彼のことを思って行動していたミラでしたが、それは裏目に出てしまいました。

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