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自分の読書(?)遍歴

作者: 池田哲次

 最近、自分がどんな作品が好きなのかが分からなくなってきました。

 飽きっぽい性格はもちろん、そのときそのときで主張まで変わっているような気がして……

 忘れない内に自分自身というものを振り返っておこうと思います。




 小さい頃は自分は本が好きな子供でして、小学校に入学する頃には他人と遊ぶこともなく本ばかり読んでいました。かいけつゾロリとか、忍たま乱太郎とかですけど。その頃にポプラ社から漫画雑誌“ブンブン”が創刊されて、創刊号のオマケだったゾロリの腕時計に釣られて購読するようになったんですよね。

 今考えると迷走も甚だしい雑誌でしたねぇ……ズッコケ三人組が何故か一話完結の初歩的なミステリーだったり、指示されたタイミングでサイトにアクセスして音楽を聴く先進的な漫画があったり、ゾロリのレギュラーキャラクターにカエルの妹系キャラが出てきたり、男装王子×男の娘姫という配役で「雄しか居ない種族が生殖のために姫を攫う」というテンプレと呼ぶには生々しすぎる上に何かがおかしいエピソードがあったり、最期はカードゲームを販売してメディアミックスやろうとしたけど流通のコネがなかったからロクに売れずに道連れで廃刊になったり……幼少期の幼気な自分を歪めた要因の一つだと思います。

 まあ、漫画に抵抗がなくなって教育系の漫画を遠慮無く読み漁るようになったのはプラスでした。この時点で敬語と歴史を頭に叩き込んでおいたことは確実に成績を上げたはずです。


 五年生になると下手に知恵をつけたのかもっと複雑な本が読みたくなって、大人向けの本を図書館まで借りに行きました。でもやっぱり重厚なものは怖くて……で、パステルな表紙の本を見つけたんです。“赤川次郎ミステリーコレクション”。コレクションというだけあって何冊も有りましたし、手始めに読むにはちょうど良さそうに見えたんですよ。それで、ナンバリングの若い方から何冊か借りて、読んでみたんです。

 自分はあのナンバリングを考えた編集部を一生許さないと思います。一冊目が“死者の学園祭”……トラウマになるわ! 主人公と思いっきりシンクロしてたから本気で飛び降りたくなったっての! 主人公には彼氏が居るけど読書してる自分は一人なんだよ!

 これ以降、主人公とシンクロしての読書が苦痛になりましたね。角川つばさ文庫のサイトに感想書いてる人間が本気で理解できません。


 そんな傷心の自分を見かねたのか、母親が二冊の本を差し入れてくれました。

 そのうちの一冊が有栖川有栖の“孤島パズル”……知らないってことはそれだけで罪なんですね。多分あのとき初めて知りました。まあ、これは誰が犯人でも後味が悪いということがはっきりしていましたし、反省を生かして若干引いた位置から眺めるようにしていたのでそこまでダメージを受けませんでした。むしろその後味の悪さを気に入ったぐらいですね。

 これ以降は新本格と呼ばれる世代の小説を多く読むようになります。ほぼ同時期に名作である“Yの悲劇”や“怪人二十面相”を読んだんですが、価値観が現代と乖離していて理解しにくかったからです。


 小学生の頃は、いわゆるオススメ図書も読んでいましたね。先ほどの“怪人二十面相”もそういった本のうちの一冊です。

 その中で特筆すべきなのは……やっぱり宗田理の“ぼくらの七日間戦争”でしょうか。小学生のうちに読んじゃったので中学校に過度な期待をしちゃったんですよ。なんであのときまともな学校だったことを残念がっちゃったのかな……

 十歳のときに読んだ“ハリー・ポッターと賢者の石”と合わせて「小説と現実を混同しない」という当然と言えば当然の、でも自覚する必要も全くない教訓を得ました。


 中学校に上がる頃にはめぼしい新本格は読み終わってしまい、東野圭吾や宮部みゆきなんかを読みつつ過ごしていたんですが、二年生の頃に衝撃的な出会いをします。

 じん(自然の敵P)の“カゲロウデイズ”です。

 音楽だから読書に関係ないように思えますが、これがカルチャーショックだったんですよ。「こんな物語のような楽曲が有るのか……」って。それから“六兆年と一夜物語”や“悪ノ召使”なんかを聴いてボカロ曲に傾倒していくようになります。

 当時妹がAKB48にハマっていたせいで巷には恋愛の曲と応援歌というか説教臭い曲しかないと勘違いしていたせいですね。ネットというアングラ的な場所だからこそこういう自由な曲が生まれたんじゃないかと。BUMP OF CHICKENのことをよく分かっていなかったのは痛い。

 最近は物語音楽が減りましたね。未だにボカロ曲は聴きますが、歌詞を聞き取る努力は怠るようになりました。

 カゲロウデイズの小説版は知人に借りて読んだんですけど、ノリが自分に合いませんでした。その後もその知人から何冊かラノベを借りたんですけど、やっぱりノリが合わなくてラノベとの縁はそれっきりです。買いに行くのが恥ずかしかったというのもありますけどね。一応は優等生キャラで通っていたので。


 さっきBUMP OF CHICKENの話が出たので一応書いておくと、バンプを知らなかったわけでは無いんです。

 バンプの楽曲の二次創作である“間違った旅路の果てに正しさを祈る”はプレイしてたので。「の楽曲」を読み飛ばしたのか、二次創作の意味が分からなかったのかオリジナルだと勘違いしてました。進級祝いにクラスメート何人かで行ったカラオケで初めて“K”を聴いたときの呆然とした気持ちと言ったら……

 読書的な観点で言うと、まちたびの制作ツールであるWWAを弄くるのが読書以上に好きだった時期のことも外せませんね。WWAはRPGツクールの親戚ぐらいに思ってもらえれば多分間違いないです。WWAで作られた作品を片っ端からやっていた時期があります。


 小説家になろうに入り浸るようになったのはいつからでしたっけ……?

 スマホを買ってからだったというのは間違いないんですが、正確なタイミングが思い出せません。高校一年生の夏から秋にかけてぐらいでしょうか。確か、ヤンデレSSを探していて“黒の魔王”を紹介されたのがきっかけだったはずです。どうしてヤンデレ好きなんて業の深きもの発病したのかは覚えていませんが。

 なろう小説へは、理解を深めていく度に嫌悪感が増していくという何が何だか分からない状態に陥っています。根本的に精神構造が違うからなのか、同族嫌悪なのか……


 最近はニコニコ動画でTRPGのリプレイを眺めているときが一番楽しいですね。

 最初に視聴したのは何故か“オプーナと偏執病のゆっくり達”……なんでこんなもの見ようと思ったのかは覚えていません。“こちら、幸福安心委員会です。”について調べたときはparanoiaが何なのか結局分からなかったぐらいだったので、心境の変化は最近のはずなんですが……最近のことほど思い出せないのはなんででしょうか?

 リプレイはロールプレイを重視して欲しい派ですね。敵を倒すのはやってて楽しいでしょうけど、倒すことだけ楽しむならコンピューターRPGでも出来る気がするせいです。




 自分のオススメ作品を挙げていくと、こんな風になります。


①女王国の城 / 有栖川有栖 ーー新本格

②天空の蜂 / 東野圭吾 ーーベストセラー作家

③WORLD'S END UMBRELLA / ハチ ーーボカロ曲

④魔導師は平凡を望む  / 広瀬煉 ーー小説家になろう

⑤闇をゆく者達の宴 / ひまつぶし卓 ーーリプレイ動画


 “女王国の城”はどこからか寂しい感じの漂う作品です。

 舞台はバブル崩壊寸前の1990年頃。ミステリ研究会のメンバーは突然失踪した部長の足取りを追って近頃めきめきと勢力を広げる新興宗教の総本山へと赴きく。彼らは無事に部長とは会えたものの、殺人事件が発生。そのことを警察に通報しようとすると彼らは新興宗教の信者に軟禁されてしまった。事件は解決したいが警察は呼ぶな、そんな矛盾した信者達の下からの脱出を目指して、彼らは事件の捜査を行うーー

 ジャンルはクローズドサークル。孤島や客船の中など、閉鎖された環境で行う犯人当てです。この小説では「物理的には出られるが出させてもらえない」という珍しい形態をとっています。そのため、脱出を目標に大立ち回りするシーンもあります。

 ミステリーとしての評価はもちろんですが、自分が気に入っているのは登場人物達です。生き生きとしているとは言いません。でも、確かに彼らは彼らなんだなぁ、と思わせる何かがあります。自分としては作家アリスより学生アリスの方をラノベ化して欲しいんですけど、やっぱりレーベル的な問題が有るんですかね……?

 2007年刊行というだけあり、「バブル景気は弾けてからつけられた名前ではないなんて信じてもらえなくなる」や「携帯できる電話が有ればいいのに」のような1990年らしい、でも当時の小説にはまず出てこないような表現がこれまた雰囲気を良くしています。


 “天空の蜂”はそろそろ映画が公開されますね。観には行けないと思いますが楽しみです。

 自衛隊の新型ヘリコプターが盗まれ、爆薬を搭載した状態で原子力発電所の真上でホバリングを始めた。犯人の要求は「全ての原発を使用不可能にせよ」ーー

 何度見ても20年前の小説とは思えないあらすじですね。この時期の映画化には政治的意図しか……

 ドラマチックでセンセーショナルな内容を必要以上に飾らず、ドライに描いているところが好きです。何というか、お行儀が良い。メイン人物がキレない泣かない叫ばない。


 “WORLD'S END UMBRELLA”は御伽噺でしょうか。世界観がツボです。

 空を覆う傘のような建造物を親しい異性と二人で登っていく。頂上にはこれまで絵本の中でしか見たことの無かった素晴らしい景色があったーー

 大まかな筋をまとめるとただこれだけで、全体としては小綺麗に纏まっています。しかし、二番やラストなど語られていない内容を伺わせる箇所があって、考察がはかどる。これぞまさにニコニコ動画で流行る物語音楽です。


 “魔導師は平凡を望む”はざまぁ系という奴ですね。その中でも特にアグレッシブな奴です。

 馬鹿を見つけたら挑発して、偉い人と裏工作して、フルボッコにする。ターゲット以外は全員が幸せになるので文句のつけようが無い。ただそれだけ。

 好みを分けるジャンルではありますね。爽快感は文句なしなんですけど、正当化のための理屈と裏工作の長さにイライラする様な人にはオススメ出来ませんし、他人のことを嗤うという行為が好きになれない人には言わずもがなです。


 “闇をゆく者達の宴”は、ともすれば滑りかねない内容を見事に格好良く昇華しています。

 ラジオが長雨の予報を告げる中、警備のアルバイトをしていた探索者は、黄色い雨合羽を着た異形が謎の古本を古物商から強奪するところに居合わせる。同じ頃、別の探索者は羽を持つ化け物に刑事が襲撃されているところを助けることになった。彼ら四人は神話的事象に詳しい人物の下で合流し、五人で事件解決のため東京中を駆け回るーー

 ホラーゲームであるはずのクトゥルフ神話TRPGですが、シナリオ作成者兼進行役がハリウッド好きということでアクション強め。カーチェイスやチェス盤を用いた戦闘システムが手に汗握らせてくれます。

 序盤こそ中の人達がメタ的な視点でネタに走った行動なんかもしていますが、中盤から終盤にかけて状況が絶望的になっていくにつれて徐々にキャラクターと同化していく様が良い味を出しています。最終決戦の後、「・・・戦闘終了です。お疲れさまでした」というなんでもないはずの台詞に涙を流した視聴者は少なくないでしょう。




 自分が好きな作品は大人しいというか、分をわきまえています。騒いだら負け。

 ラノベも買いに行けないような小心者の自分らしいです。一人が好きで、他人と同じ位階に立つことを良しとしない無駄なプライドの賜物です。


 ストーリーなんてどうでも良かった気がしてきました。一人で居られる理由が欲しかっただけかもしれません。

 あるいは、友人にしても良いと思える人間を本の中に探していたのかもしれません。

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― 新着の感想 ―
[一言] ありがとうございます。 m(_ _)m 確かに横山さんの三国志は、「この流れでこうなって、こうなったからこうなった」という書き方が否めないので、池田さんのおっしゃる通り学び習う感がぬぐ…
[一言] なるほど。 ズッコケの名を見るのは懐かしさを感じました。あいにく、途中から読む機会を失い、雑誌として読んだのは皆無だったのも少しショックでした。 BUMP OF CHICKENのK。その…
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