蛇
夜のアスファルトが雨に濡れている――亀裂となって長い蛇が這う。
毎日蛇は行きたいところへ辿り着くために、少しずつあるいは大胆にその身を伸ばす。
コンクリートの壁に遮られたならどうするのか――その時には、口惜しさに身を捩り、やがて決意してその身を収縮させた後、一気に壁へ体当たりをする。何度も何度も体当たりをする。
彼女が行きたいところとは――つまり子の許であって、命を懸けてそうする。そうせざるを得ない。身の内に巣食う愛情という炎に焼かれ、身悶えしながらそうする。
蛇は悲しまないから、真っ直ぐなのだ。余計な詮索なしに、一直線に目指す許へ進む。そうやって進むから、きっと辿り着く。待っている子の許へと辿り着き、共に丸くなり喜びを絡め取るだろう。
読んで頂いてありがとうございます。
夜、雨が降っていて、アスファルトが黒く濡れていました。亀裂が走っていました。蛇のように走っていましたから、どこへ行くのだろうと思いました。思いを遂げようとすると、何か障壁が立ちふさがることがあります。わたしなどは、時に任せてそのままにしておくことしか出来ません。しかし、純粋な蛇ならば、真っ直ぐにぶつかっていくのではないかと思います。そのようなエネルギーは、詩作の上でも同様で、いい詩を書きたいと思いながら、この蛇のように毎日進むことは叶わないのです。だからこそ、蛇のようにありたいと思いますが、そうはならない日々が延々と続いています。いつか越えて行きたい壁でもあります。
追記)
蛇を含め爬虫類には感情が無いそうです。つまり悲しみもない。ただ欲求の赴くままに生きているそうです。蛇は真っ直ぐだと書いたのは、そういう意味からでした。
夜の雨に濡れたアスファルトの路面には、不思議な艶がありました。そこから感じた詩です。