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プロローグ
まだ風が冷たい三月のこと。
「来た。寝室から出てきたぞ」
「相変わらずひでえ寝ぐせだ」
そんな言葉が飛び交う交差点。数百名の人々が皆、一つのモニターに注目している。そのモニターが置かれているのは超一流ゲームブランド『ドロップ』の本店前。そのモニターには一人の男の姿があった。
「今日は、ワルギルに負けんなよ」
「そうだ絶対勝て」
と野次が上がる。もちろんモニターなので、当の本人には聞こえていない。しかし、彼の目の色はまさに一騎当千を彷彿させるかのような勇ましさがあった。