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俺だって自由に将来を考えたいわけです

作者: 雨月

読んでて 合わない! っと思われたら逃げてー!超逃げてー!!無理はダメよー!!


ツイッターの診断メーカーで「あなたは50分以内に8RTされたら、同じバイト先の知り合いの設定で浮気と勘違いして喧嘩するお嬢様と見習い執事の、漫画または小説を書きます。」 と診断されたので頑張って書きました。

1時間13分だったけどね!RTされてないけどね!! ←

誤字脱字報告期待 (まて)



親に内緒で働いているバイト先に新しく入ったバイトの子は、どこか上品で、そして目の離せないほどのドジだった。


「ねぇ、出来た?」

「は、はいっ!もうちょっとで出来・・・あっ。」

「え、何?なんなの?」

「・・・・・・・で、でぇたが・・・・・・・」

「・・・真っ白、だな。」


今日も残業かなぁー

残業許されるかなぁー


天井を仰いで、そんなことを考えていると、今日もドジした鈴宮は肩をふるふると震わせて唇を噛んでいた。


「前に一回全消ししてから、こまめにデータをセーブしとけっていったから、してるだろ?」

「はい・・・。」

「で、どこまでのところでセーブしたんだ。」

「半分、です。」

「そうかー。半分かー。今度は、4分の1出来たらセーブとか、そのぐらいの頻度にしような。」

「はい・・・。」


小さい声で返事をしつつも凹む鈴宮の小さい背中を叩く。


「はい、次々!凹む前に繰り返さずやり直す!・・・俺も手伝うから、さ。」

「はい・・・!!」


頑張ります! と言わんばかりに顔を上げれば、頭上に緩く編まれたツインテールが跳ねた。


 か、可愛いなんて思ってないからな!!


高校の友達の親が勤めている会社で、集計やデータ入力等の事務作業のバイトをやらせてもらってる俺の親は、大金持ちの家の執事なんてものをやっていて、小さい頃からその家に生まれた”オジョウサマ”を最優先にされて、自分でも親に対して かーなーりっ ひねくれていると思う。


 高校までは親に金を出してもらうとして、大学は自分の金と奨学金とかとってなんとか好きなところに行きたいよなぁ。


なんだかんだとこのまま次の執事として教育されつつある俺はなんとか親の敷いたレールから外れようと必死で、親の前では静かな手のかからない子 と思わせていようとそれなりに優秀な子供でいるように努めていた。


 器用貧乏とか、言われたことあるけど、そんなんじゃないからなっ!!


と、バイトを紹介してもらった友人からの台詞を思い出しつつ、鈴宮の仕事を手伝う。

高校卒業したらここで働かない? と笑いながらであるが、言われるくらいには仕事をこなしていると思う。

会社としては新しく、社長も若いせいか社員の年代も若い・・・と俺に仕事を教えてくれた社員の春若さんが言っていた。

これから大きくなる可能性を、いや、その片鱗を見せている会社だと、やる気に満ちた顔で言っていた春若さんを見て、この会社に入りたいと、少なからず俺に思わせた。


 問題は親、だよなぁ。


もう少し、とキーボードを打ちつつ考える。


 そろそろ執事としての仕事を覚えてもらう とか言ってたっけ。


今度の夏休みは寮が改装工事をするとかで、必ず帰らなければならず、その旨を親に話すとそんなことを言われた。


 俺が執事になりたい って、思ってるんだろうなぁ。


あーやだやだ。

とため息をつけば、隣で びくっ と身体を揺らす鈴宮に驚いて振り向く。


「す、すみません・・・も、もう出来るので、瀬蓮せはすさんはお先に」

「いや、まだ鈴宮のほう全然終わってないから無理だよな?あと30分で出来る?7時には帰らなきゃ行けない って、俺聞いてるんだけど。」

「うっ、で・・・」

「出来ないよな。はいはい。続き続き。手、止まってるぞ~」

「すみません。で、でも、瀬蓮さん、この後、ご予定があるんじゃ・・・」

「いやないけど?」


おろおろと困った様子の鈴宮も可愛い・・・ とか、いや違う。そうじゃない。

なんでそんなに気を使うのかと首をかしげて思い至った。


「あー、もしかしてさっきのため息?」

「っ・・・はい。」

「いやー、今度の夏休みに実家に帰って女の子の世話をしなきゃいけなくて。」

「そ、そうなんですか?」

「あぁ、すっごい可愛いらしいんだけど・・・気が進まない。」

「親戚の女の子・・・なんですか?」

「いや、まったく。」

「どういう、関係なんでしょうか?」

「どういう関係なんだろうなぁ。」


首をかしげる鈴宮と同じ方向に首をかしげる。


「まっ、俺がいない間もしっかり頑張れよっ!」


乱暴に頭を撫でれば小さく悲鳴をあげながらも可愛らしく声を上げて笑った。







この日が来てしまった と思いながらも鏡に映ったコスプレのような執事服を着た自分を見つめる。


千夜ともや、支度はできたのか?」

「はい、父さん。」

「ここでは父さん、ではなく、執事長と。」


 あー。この時代倒錯した呼び方とか、もう本当にどうにかならないかなぁー。


一瞬遠い目になりつつも、笑顔を貼り付け呼びなおす。


「あと、お前はお嬢様の婚約者候補だから。」

「・・・は?」


目が点になる。

という言葉通りの状況になった。


「ほら、間抜けな顔をしていないでさっさと行くぞ。」

「いや、そういう問題じゃ・・・!!」


自分がお嬢様の婚約者候補だと聞いて、瞬間に 嫌だ と、そう思った。

脳裏にあのドジで、気弱で、それでも頑張る、柔らかな微笑みの少女が浮かんだ。


 絶対に、嫌だ。


勝手に決められそうになっている仕事も

勝手に決められた婚約者候補も


 あんな、親に・・・


一人熱を出して寝込んだ夜

誰も来ない父兄参観


 あんなのを、親と、思いたくない。


いつだって自分は二の次の癖に、何故こんなにも決められなければいけないのだ。

そう、思っていた心が限界だと叫んだ。


「早く来い。」


そう言って促す父親の後ろをうつむきながらついていく。

この父親に言っても口先で丸め込まれるのは経験済みだ。

言うならば、そう。


「失礼いたします。・・・旦那様、お嬢様、こちらが愚息の千夜ともやと申します。さぁ・・・」


父親に連れられてうつむき入った部屋には、壮年の男性と淡い色のワンピースを着た同い年くらいの少女。

二人が目に入った瞬間、促されるように一歩前に出て、思いっきり頭を下げた。



「お嬢様の婚約者候補から僕を外してください!!」



しんっ と、室内が静まり返った。

直角に頭を下げた姿勢のまま返事を待つ。


千夜ともや、お前はなんということを・・・!!」

「・・・瀬蓮、ちょっと黙っていてくれないか?」


父親の叱責を止める声に僅かに身体が震える。

人の上に立つ、指示を出すことに慣れた声だった。


千夜ともやくんと言ったね。君はまだ、候補であるだけだ。それですら嫌なのかい?それほどまでに私の娘は気に入らなかった?」

「いえ、・・・好きな人が、いるだけ・・・です。」

「そう。まだ、付き合ってない・・・いや、告白もしていないのかな。」


低い声は面白がっているようにも聞こえたが、婚約者候補から外してもらうまでは とだんだんと辛くなる姿勢を保ち続けた。


「だ、そうだけど、私の可愛い娘さん。・・・ショックで言葉も出ない?」

「お、お父様・・・。」


聞いたことのある声に頭が真っ白になる。


 ・・・え?


思わずといったように顔を上げると、清楚で淡い色のワンピースを着た少女はバイト先で一緒に働く鈴宮だった。


 なん、で・・・


と声にならなずに、ただ口をぱくぱくと開けては閉じる。


「せ、瀬蓮さんに、す、好きな人が、い、いらっしゃったんです・・・ね・・・」


ただただ悲しそうに、目に浮かぶ涙をこらえるに口元を きゅっ ときつく噛む様子に焦って一歩踏み出す。


「鈴宮、な、なんで、あぁ、そんな風に強くかんだら可愛い唇に跡がつくだろ、ほら、あーん!」

「あ、あとくらい、いいんです!!わ、わたしのほかに、す、すきなひとが、いる、いるなんて!!」

「いやいや、何言ってんだよ、俺まだ告白してないしお前の他に好きな奴いないし、なんで浮気したみたいに言われてんの俺!?」

「だって、だって、だっ・・・・・・・・え?」

「・・・・・・あれ。」


どさくさに紛れて何かを言った気がする。

鏡を見なくてもわかる。

顔が熱い。

もしかしたら火が出てるかもしれない。

真正面にいる鈴宮も似たようなもので、頭の中では どうしよう という言葉がぐるぐると何度も回り続ける。


「若いねぇ。」

「旦那様・・・」


この後の記憶はあやふやで、結局二人で中庭に出され、綺麗に整えられた花壇の前で、もう一度きちんと告白し直した。

嬉しそうに頷く鈴宮が可愛くて可愛くて、抱きしめようとしたら磨きに磨かれたスプーンが俺の頭めがけて飛んできて必死に避けた。


親父は俺を殺す気か!!


親父は親父で俺のことを考えているのだと、鈴宮に言わたので、少しずつ、少しずつ親との会話も増やして未来を考えようかなぁ などと、可愛い彼女が出来た俺は考えるわけです。




だがしかし、デートの邪魔だけは許さん!!



俺とお嬢様の未来はまだまだこれから。






フォークでもナイフでもなく、スプーンを投げたあたりに父親の愛を感じて頂ければ、それだけでもう嬉しい限りです ←

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