第十二話
※今回は書面形式ではないです。それと、いきなり春休みまで話とんじゃってます
「久しぶりやな、東京」
長い黒髪を風になびかせながらその少女はつぶやいた。
真っ白なチュニックと黒髪のコントラストが通勤中のサラリーマン達の目を引く。
だが、目を引く理由はそれだけではなくむしろ彼女の容姿にある。
きめ細かい白い肌。
バランスの取れた大きな瞳。
東京駅__というよりは軽井沢の別荘のほうが似合いそうな雰囲気だ。
だれかと待ち合わせでもしているのか、駅から離れる気配がない。
「ねえ、お姉さん♪誰かと待ち合わせ?」
一人の男がいきなり彼女に声をかけた。
声をかけられたのが自分と分かっていないのか、男の声を無視し、誰かを探す様に周囲をきょろきょろしている彼女の肩に手をのせようとしたそのとき
「ねえって「なにやってんの」
声をかけた男と違う、一人の男が今まさに肩に届きそうだった手をつかんだ。
丁寧に扱っているのか、染めているのにさらさらの茶髪に一つ筋の通った鼻。
今はつかんでいる手の主を睨みつけているが、もともとは優しそうだと推測できる澄んだ目。
黒髪の少女も綺麗だが、彼女とは違う綺麗さが彼にはあった。
彼女が大和撫子だとたとえるならば彼はさながら西洋の騎士のようである。
空気が凍ったかのようなその場にふさわしくない、アンパンマンのマーチが流れた。
少女は焦ったような感じで自分のかばんをあさっているころを見ると音の出所は彼女の携帯らしい。
手をつかんだまま茶髪の彼は少女をみて「千裕?だよね?」と目を見開いて質問している。
質問の形をとっていても、確信を持ったそれは少女の顔を笑顔にするには十分のようで続いて「千里やんな!?」と聞きなれない大阪弁で話す。
さっきの電話の相手は茶髪の男のようで、手をつかむのとは別の手で自分の携帯をいじっている。
二人は知り合いなのかだんだんと盛り上がっていく会話に、最初に声をかけた男は独りたたずむ。
「なあ、もういいだろ手、はなせよ」
いきなり二人の会話に入った男は、先ほどの笑顔はどうしたのか無愛想に千里と呼ばれた男を睨む。
「ああ、いたの。こいつ俺のだからこれから見かけても声かけないでね」
千里はそれだけを言うと手を離し、千裕と一緒にどこかへ消えていった。
東京駅から離れた二人は、千里の行き着けだとういうカフェで話をしていた。
「でもびっくりした。まさか千里がこんなかっこいいとは思ってなかったから」
抹茶ラテを飲み、微笑みながら千裕は言う。
それにブラックのコーヒーを飲みながら千里も笑って返す。
「こっちもだよ。千裕がこんなにかわいくなってるなんて」
「え?」
今、目の前の千里はなんといったか
かわいく、なってる?
まさか過去の自分を知っているわけでもないだろう。
それとも・・・
「え、千裕・・・だよな?苗字変わってるけど、昔東京に居た林千裕だろ?」
こんなことがあるのだろうか
「昔よく一緒に遊んだだろ、俺は手紙では苗字変えてるけど、甘沢千里。覚えてない?」
まさか初恋で、今でも忘れられずにいる“あの”千里が目の前に居るなんて事が
「せん、り?」
「そーだよ、ちーちゃん」
名前を呼ぶと二カッと音がしそうなほどまぶしい笑顔で彼は返事をする。
そうだ、昔はちーちゃんなんて呼ばれていた。この男にだけ。
「千里っ!」
「なに?」
こんな偶然二度とないだろう、いやあったとしても今言いたい。
ずっとずっと
誰に告白されてもふり続け
彼氏もつくらず
ひたすら小さい頃の思い出を抱えて過ごしていた千裕は、今しかないと思えた。
「好き!」
目の前の彼は目を見開きコーヒーに伸ばした手を止めて千裕を凝視している。
「ずっと、引っ越してからも千里のことが忘れられなくて
ずっと好きだった」
立ち上がった勢いのままテーブルに手をつき、前のめりになる千裕をみて笑った千里
「それ、俺の台詞だから。ほんっと千裕は昔から俺のモンとってくよね。ショートケーキの苺も、弁当に入ってたトマトも
けど、そんな千裕が好きでした。俺の彼女になってください」
この恋の始まりは一通の手紙。




