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転生!日本戦国時代!マリー・アントワネット!  作者: 白山月


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第2話:黄金の檻と、再会の「ささやき」

1. 言葉の壁と孤独


転生した真理マリーは、深い混乱の中にいた。 ここが天国でも地獄でもないことは、肌を刺す空気の冷たさや、空腹のひもじさで理解できた。しかし、視界に入るのは見たこともない意匠の衣服を纏った人々ばかり。飛び交う「日ノ本の言葉」は一音たりとも理解できず、彼女は絶望的な孤独の淵に立たされていた。

かつて一国の王妃として、言葉一つで宮廷を動かしていた記憶が、今の「何も伝えられない」無力さを、耐えがたい恐怖へと増幅させる。溢れる感情を伝えようともがくほど、口から漏れるのは赤子の泣き声と涙だけ。 泣き疲れて微睡む夢の中だけが、彼女の唯一の聖域だった。そこにはいつもエメリーがいて、真理のとりとめもない思考を静かに聞き届けてくれる。夢の中で思考を整理し、納得して目を覚ます。だが、目を開ければそこにはまた、音のない孤独な世界が広がっているのだった。


2. 笑美えみとの出会い


真理が1歳を過ぎた頃、運命が動き出す。 乳母が、新しいお世話係(腰元)として、少し年上の少女を連れてきたのだ。 「本日よりお世話係となりました、笑美と申します」 少女は丁寧にお辞儀をしたが、乳母が真理の性質を説明している間も、好奇心を抑えきれない様子で真理の顔を覗き込んできた。

「これっ、はしたないですよ!」 「だって、こんなに愛らしいのですよ。我慢せよという方が罪ですわ」 笑美は屈託のない笑顔で返し、乳母の小言を柳に風と受け流す。その物怖じしない態度は、どこか懐かしい「誰か」を彷彿とさせた。

乳母に促され、笑美が改めて自己紹介の礼をとったその瞬間、真理の心臓が跳ねた。 その指先の揃え方、首の傾け方――それは日ノ本の作法とは明らかに異なる、ヴェルサイユの侍女たちが身につけていた優雅な所作そのものだった。 (この子と、話がしたい……!) 高まる感情に任せて泣き出した真理を、笑美が慣れた手つきで抱き上げる。その時、彼女の体から微かに香ったのは、日本の香木ではなく、かつての私室を彩っていた**「乾燥させたハーブ」**の、心安らぐ香りだった。


3. 永遠の誓い


それからの真理は、明確な「笑美びいき」になった。 他の腰元が抱こうとしてもぐずるが、笑美に抱かれると魔法にかかったように泣き止む。笑美もまた、真理の瞳の奥にある「知性」に、ある確信を深めていた。

ある晴れた日の午後。庭の木陰で二人きりになった際、真理は自ら笑美へ手を伸ばした。 「真理様は、本当に笑美がお好きですね」 笑美は周囲に誰もいないことを確認すると、真理を優しく抱きかかえ、その耳元で震える声を忍ばせた。

「――Je t'aimerai pour l'éternité(永遠に、あなたを愛しております)」

その一言が、真理の脳裏に断頭台の冷たい雨、パン・デピスの甘み、そして自分を抱きしめてくれたエメリーの温もりを鮮烈に呼び起こした。 (ああ、あなただったのね……!) 声は出ない。しかし真理は、精一杯の力で笑美の頬を小さな手で包み込み、堰を切ったように涙を流した。天国でも地獄でもなく、この異国の地で再び巡り会えた奇跡。二人の魂が、時空を超えて再び一つに重なった瞬間だった。


4. 「神童」の覚醒と、遠き祖国への想い


エメリーが隣にいる。その確信は、真理の生存本能に爆発的な火をつけた。 彼女は笑美を「生ける辞書」として、周囲が驚愕する速さで言葉を吸収し始める。笑美が真理の指差すものを小声でフランス語と日本語の両方で教えることで、真理の脳内では二つの世界の知識が急速に連結されていった。

2歳を過ぎる頃には、真理は複雑な日本語を操るだけでなく、父・秀吉や石田三成が交わす高度な政治の話まで理解する「神童」として頭角を現した。 「真理姫は、前世で何百年も生きた賢者の生まれ変わりに違いない」 秀吉はその聡明さを溺愛し、重要な軍議の場にさえ彼女を同席させるようになった。

そんなある日、真理は城を訪れた宣教師から信じがたい情報を得る。 「フランスでは、アンリ4世が即位し、戦乱が終息に向かっております」 (アンリ4世……ブルボン王朝の始祖? 私たちの生きた時代より、200年も昔だというの!?) 転生しただけでもあり得ないことなのに、自分が「過去」の世界にいるという事実は、真理の価値観を根底から揺さぶった。 しかし、彼女はすぐに唇を噛み締めた。 (ならば、これは『やり直しのチャンス』ではない。私がこの手で、未来の歴史さえも変えてしまうためのチャンスなのだわ)

最愛の友・エメリーと共に、この日ノ本の地で「誰も飢えない未来」を築く。 真理は、目の前にある一切の甘えを捨て、戦国という荒波を全力で泳ぎ抜く決意を固めるのだった。


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