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本日の成果

ダンジョンに入ってそろそろ一時間くらい経つ頃だ。

その間に計17体のスケルトンを倒していた。

私が10体、キラリちゃんが3体、カナタちゃんが2体、ユウちゃんが2体。

やっぱりスケルトンは弱く、簡単に倒せる。

及び腰で、へっぽこな攻撃しかできなかったユウちゃんでさえ、杖で何回か殴れば倒せるくらい。

そのおかげもあって、みんな自分の力に少し自信がついたみたいだ。


また、私は計11体もスケルトンを倒しているので、それなりに経験値が溜まったようでレベルが上がった。


―――――――――――――――――――

広田未来

種族 人間

職業 魔法使い

レベル2


HP 80/80

MP 110/110

筋力 25

防御 20

魔力 35

防魔 25

素早さ 15


スキル 『炎魔法Lv1』

ポイント2

―――――――――――――――――――


全体的にステータスが上がり、少しだけ強くなった。

そう、少しだけ強くなっただけで、新しいスキルを手に入れただとか、そういうことはない。

まあ、それでもたった一時間の下見でレベルが上がっただけ十分。

今日のダンジョン探索はこんなものでいいだろう。


来た道を引き返して、ダンジョンの入り口で戻ってくる。

そしてお日様の下に戻ってくると、みんな体を伸ばして一息ついた。


「おつかれさま~。どう?初回の手ごたえは」

「まあ、こんなものかって思ったな。ダンジョンは危険。何となくそう思ってたが、実際はこの程度ってわけだ」


私の質問に、キラリちゃんが応えてくれる。

まあ、下見で行く範囲ならこんなものだろう。

もっともっと危険なところはあるけれど、初めから命に係わるほど危険ではないね。

あとの2人の反応もキラリちゃんと同じような反応で、思っていたよりも簡単で拍子抜けって感じだ。


「この調子ならやっていけそうかも。これからもよろしくね、ミライちゃん」

「うん!これからもよろしくね!」


カナタちゃんは今日の下見でこの先やっていけそうだという自信がついたようで、冒険者活動にやる気を見せてくれる。

メンバーがやる気十分なのは、リーダーとして嬉しい限りだ。


「その…よかった…」

「ホントに?私もユウちゃんと一緒にやれてよかったよ!」

「うん…!」


ユウちゃんも手ごたえを感じたようで、嬉しそうにしている。

みんな冒険者に前向きなものを感じてくれたようで、この先もこのメンバーでやっていけそう。

私もそのことが嬉しくて、笑顔…というか、ニヤニヤが止まらない。


「じゃあ、本日の成果をお金に換えに行こうか?」

「そうだな。早く行こうぜ、肩がそろそろ痛い…」

「私は痛くないよ?」

「だろうな!荷物持ちをさせられてるのは私だけなんだから!」


持ち手があり得ないほど細くなり、今にもちぎれそうなほど重くなったレジ袋。

それを持ち上げて怒るキラリちゃん。

荷物持ちをしてもらってるから、1人だけ負担が大きいんだよね。


「アハハ!ごめんごめん。わざとだよ」

「だろうな。ったく、私を荷物持ちに使うのなんてミライくらいだぞ」


キラリちゃんからの抗議を受けながらダンジョンの入り口を出て、ギルドに向かう。

ギルドの換金カウンターにやってくると、そこでキラリちゃんが持っていた袋の中身をひっくり返す。

中身は魔石とキノコと石。

この中で、石が重さを増す原因になっていた。


この石というのは、鉱石の事だ。

ただの石ころは一円でも売れないが、ダンジョンにはこうして鉱石が石ころみたいに落ちていることがある。

今回拾った鉱石は銅鉱石。

ここのダンジョンは浅いところでは銅鉱石が取れることが有名で、石ころだけでなく銅鉱脈も存在している。

まあ、鉱脈の銅を手に入れるには採掘権を買う必要があるから、今の私たちには関係ないね。


換金カウンターでは魔石と銅鉱石の価格が鑑定され、最終的に合計950円になった。


「少ないな。キノコは売れなかったし、毒も一本じゃ売れなかった。これならバイトした方が何倍も稼げるぞ」


ギルドを出ると、報酬の少なさにキラリちゃんが嘆いていた。

魔石と鉱石の値段は置いておくとして、ドウクツキノコはそれ単体では売れず、ダース単位であれば売れるらしい。

キラリちゃんが作った毒の場合も同じらしく、一本だけでは売れなかった。


「まあ、最初はこんなものだよ。初日から1万とか2万とか稼げるなら、もっといろんな人が冒険者をやってると思う」

「だよな。それに、今日はダンジョンに居た時間も1時間くらい。稼げると考える方が間違えてるのか」


まあ、冒険者を始めてすぐなんてこんなもの。

こればっかりは諦めるしかないね。

それよりも、大事な話がある。


「今日の稼ぎはみんなで山分け…と言いたいところだけど、そうもいかないんだよね」

「パーティー制度ですぐにはお金にならないんだっけな?全く、世知辛いな」


今日私たちが得たお金は、すぐには私たちのものにはならない。

私たちのお金になるのは来年の4月から。

それまではパーティーのお金として扱われる。


その理由はパーティー制度という仕組みのせいだ。

これは、冒険者が複数人で協力して活動する際、「パーティー」という法的に決まった小集団にまとめて管理する制度だ。

その目的は、収入の管理と冒険者の権利保護。

収入の管理は、冒険者の集団が獲得した利益を一度パーティーの利益として扱い、そこから税金を取るためという目的と、効率的で公正に収入を分配するためだ。

あとは消耗品の購入とか、ケガをした時の治療費とかを経費で落とす…みたいなものがあるらしいけど、詳しいことは分かってない。

まだ高校生だし。

そして、冒険者の権利保護というのは、パーティー内でのいじめ、パワハラ、セクハラ、不当な額の利益分配なんかを防止する目的がある。

仮に起こっても、証拠さえ押さえれば訴えたら勝てる。

…ただ、権利保護という割には何十時間働かされても何も言われないし、パーティー全体で収入が少なかったら法外な収入だとしても見逃されたりするので、あって無いような仕組みだね。


まあ、こういう制度があるものだから、頑張って稼いでも『今すぐお金が必要!』って時に意味が無かったりする。


「で、しかも来年の4月になったからと言って、私らが自由にお金を使えるわけじゃないんだろ?」

「そうだね。未成年冒険者制度があるからね」


この制度は、18歳未満の冒険者を守るためのもの。

けど、これもあって無いようなもの。

未成年の権利だとかどーとか色々とめんどくさい話があるらしいけど、肝心の未成年を危険な場所に連れて行くなって関係の法律がほとんど無いから、その辺は触れないでおく。

この制度で一番大切なのは、私たちの収入はすべて親が管理してるってこと。

しかも、このパーティーは未成年しかいないので、パーティーのお金関係の事は全部親に丸投げ。

下手すればどんなに頑張って稼いでも、一か月1万円のお小遣いだけって言われる可能性すらあるんだ。


「将来への貯金になるとはいえ…汗水流して働いて稼いでも、お小遣いの範囲でしかもらえないかもしれない。世知辛いよなぁ」

「まあこればっかりはね……でも、それさえ我慢すればあっ!と驚くほどお金を稼げるわけだし、我慢強くやろうよ」

「そうだな…」


法律でそう決まってるんだから仕方ない。

だから諦めて我慢するしかないんだ。


まっ、今を耐えればいいだけの話だし、何より私たちはお金に困ってない。

なぜなら私たちは高校生。

親の庇護の中で生きているんだから、お小遣いが少なくてほしいものが買えないってことはあっても、生活に困ることはない。

だから、我慢して1年後まで待つのさ。


「で?この後どうするんだ?」


暗い話はここまでにして、キラリちゃんがこの後の事を聞いてくる。

この後ね…そんなの決まってる。


「そんなことを聞くってことは、わかってるんでしょ?」

「まあな」

「よし!打ち上げってことでみんなでボウリングに――」

「その前に、勉強だな」

「――ほえ?」


私の言葉にかぶせてくるキラリちゃん。

しかもその手には英語の単語帳とノートが握られている。


…え?勉強?


「英語の授業は、毎授業初めに単語の小テストとその範囲の単語を練習してくる宿題があるよな?」

「そうらしいね…」

「だからその勉強と宿題をするぞ」

「え…今から?」

「もちろん」


…え?ホントに今から勉強するの?


「あ、明日でもいいんじゃ…」

「明日もダンジョンに来るんだろ?しかも、今日と違ってしっかり丸一日。なら、勉強をするタイミングは今しかないよな。行くぞ」


そう言って私の手を引くキラリちゃん。


「ちょ、ちょっと!?行くってどこに!?てか私勉強道具持ってないし!」

「だろうな。だから行先はミライの家だ」

「はぁ!?」


私の家で今から勉強?

ちょっと待って、それはいいとしてこの2人は勉強道具を持ってきてるの?


「い、一旦私の家でやるって勝手に決められてるのはいいとして、2人は英語の単語帳とか持ってきてるの?」


私がそう訊くと、2人は顔を見合わせて困った表情を浮かべ――鞄から単語帳とノートを取り出した。


……やられた!!


「謀ったな!?」

「まあな。こうしないと、多分やらないんじゃないかと思ってな」


くっそ~!

英語の予習なんて単語数も書くことも少ないし、宿題の分だけ休み時間にでもやればいいって思ってたのに!

これがキラリちゃんだけだったなら逃げられたのに、ちゃんと2人に根回しされてたせいで逃げられない…!


とても「嫌だ」と言い出せる空気ではなく、初めから拒否権はなさそうだった。

こうなっては仕方がない。

私は諦めて、グチグチ文句を言いながらみんなでマンションに帰ることになった。

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