第7話「洞窟の奥と最初の選択の結果」
洞窟の小さな広間に足を踏み入れた三人。岩に刻まれた古代文字や微かに光る石が、薄暗い空間に淡く光を放つ。
桐生は手の中の紙片を再び握り直した。小さな嘘で仲間を守ったつもりだったが、心の奥では不安がくすぶる。
「……ここに、何があるんだろう」凪は目を輝かせ、岩に近づく。オレンジ色の髪が光に映え、動くたびに森の静寂が揺れる。
葵は淡青の瞳を細め、文字を読み取ろうとする。
「……父さんの残した暗号……まだ完全には解けないわ」
桐生は洞窟の奥を見つめた。狭い通路を選んだ結果、岩の一部が崩れ、かすかな落石音が今も響いている。もし別の道を選んでいれば、この危険は避けられたかもしれない。
「……選択って、こういうことか」桐生は心の中でつぶやく。善意の嘘が、小さな事故を防いだが、結果として情報の不足が危機を呼び込んだ。
凪は小さく笑う。
「でも、みんな無事だし、楽しかったよね?」
桐生は微笑むが、眉間にわずかな影が差す。
葵は桐生の肩に軽く手を置いた。
「桐生くん……あなたが隠したことも、悪意じゃないわね。でも、私たちは知らないことに戸惑うこともある」
桐生はうなずき、少し息を吐く。
「……わかってる。でも、全部話すにはまだ時期が早すぎる」
広間の奥には、微かに揺れる光の粒があった。それは父の残した手がかりであり、洞窟の奥にある秘密の兆しだった。桐生は慎重に近づく。
「ここからは、もっと慎重に進まなきゃ」桐生は心に決めた。
凪と葵も静かに頷き、三人は奥へ進む。
だが、洞窟の奥からは、遠くで微かに誰かの呼吸や足音が聞こえる気配がした。
――影は、まだ見えない。しかし、何かが確かに彼らを見守っている。
桐生は握りしめた紙片を見つめる。
――善意の嘘は、守りの手段でもある。しかし、この先の選択で、何を失い、何を守るかは、誰にもわからない。
洞窟の暗闇に三人の影が揺れる。足元の岩がかすかに崩れる音が、次の試練を予感させていた。




