第2話「幼なじみの再会と旅の決意」
桐生は手に握った父の記録を抱え、街の小路を歩いていた。朝の光が石畳に反射し、歩くたびに靴の音がカランと響く。
「……どうしよう、これ……」
頭の中で文字列や地図のことをぐるぐる考えながら、思わず息をついたそのとき、背後から柔らかい声がした。
「桐生くん?」
振り返ると、月白葵が立っていた。銀色の髪が朝日に揺れ、淡青の瞳が静かにこちらを見つめる。華奢で落ち着いた体つき、長い髪の間から光が透ける。
「葵……久しぶりだな」
葵は微笑み、少しだけ目を細めた。
「本当に、久しぶりね。でも、ずっと変わらない。……桐生くん、何かあった?」
桐生は地図を見せながら説明した。
「父さんの遺品の中に、こんなものが……“見つけてはいけないもの”って書かれてたんだ」
葵の眉が少し寄る。
「……あなた、危ないことに巻き込まれる気がするわ。でも……放っておけない」
そのとき、元気いっぱいの声が響いた。
「おーい!桐生くん、何してるのー!」
オレンジ色の髪が陽光に輝き、エメラルドグリーンの瞳がキラキラと光る凪が走り寄る。小柄だが軽やかな体つき、元気いっぱいの笑顔で桐生を引き込む。
「凪……元気そうだな」
「元気すぎて困るくらい!」凪は腕をぶんぶん振りながら笑う。
「でも、せっかく会えたんだし、一緒に行こうよ!面白そうなこと、見逃すなんてもったいない!」
桐生は二人を交互に見た。銀髪の葵と太陽みたいな凪。静と動、落ち着きと勢い。どちらも、彼の人生に欠かせない存在だと改めて思う。
「……俺、一人で抱えられないかもしれない」
葵は静かに頷き、凪は弾けるように笑った。
「なら、一緒に行こう!」
その瞬間、どこからか冷たい視線を感じた。通りの角に黒い影が立っている――漆黒の髪、鋭い赤茶色の瞳。桐生たちをじっと見つめるその人物は、まるで全てを見透かしているようだった。
「……あいつ、何者だ?」桐生は小さく呟く。
葵は微かに眉を寄せた。
「油断はできないわ。でも、まずは父さんの記録を解き明かすこと――それが最初の一歩よ」
桐生は地図と紙片を握り直す。
「……よし、行こう。みんなと一緒なら、きっと乗り越えられる」
三人の影が朝日に長く伸びる。小路の向こうには、未知の冒険が待っていた。
水面下で動く危険、嘘と秘密、そして“未来の選択権”――そのすべてを、まだ誰も知らない。




