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第12話「温泉の夜と心の距離」
湖畔の村で一夜を過ごす三人は、宿の小さな露天風呂に向かう。湯気が立ち込め、夜空には星が瞬いていた。
凪は元気に湯に浸かりながら桐生に話しかける。
「ねぇ、桐生くん!明日はどの道を進むの?」
桐生は静かに答える。
「……洞窟の先に、次の手がかりがある。慎重に進むつもりだ」
葵は肩まで湯に浸かり、淡青の瞳で二人を見つめる。
「……桐生くん、無理はしないで。私たちはあなたの判断を信じる」
凪は少し沈黙し、桐生を見上げる。
「……でも、怖いよね。でも一緒にいるから、怖くない」
桐生は凪の頭を軽く撫で、微笑む。
「うん、ありがとう。二人がいてくれるから、俺は進める」
露天風呂に差し込む月光が三人を包む。温かい湯と穏やかな夜、笑顔と信頼。
しかし桐生の心には、父の秘密と未来の選択の重さが消えることはなかった。
――この旅の真の試練は、まだ始まったばかり。




