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シリウスに行くまでにツカキは十日間かかった。
「一番速い乗り物でも、十日間かかちゃったなー。あっ!居たトト兄さん。」
「トト兄さーん‼」
「おうツカキ久しぶりだな。何かあったのか?」
「俺王国の騎士になる事にしたんだ。」
「えっ?」
「だから、応援して下さい。俺の事。」
「あ、あぁ。頑張れよ、オレはいつもお前の事…応援しているから。」
「どうしたんですか?王国の騎士になったらダメでしたか?」
「…いや、別になんでもないよ。気にしないでくれ。」
「なら良かったです。トト兄さんも王様としてこれからも頑張って下さい。」
「なぁツカキは全部背負いすぎて大失敗した時の事、覚えているか?」
「はい!あの時は一人で背負いすぎました。」
「だから…無理するなよ!いつでもシリウスに来てくれて良いから。」
「はい!トト兄さん。それじゃあまた」
「あぁまたな。ツカキ。」
トトは思った。(ツカキも大人に近づいていくんだな。今日六年ぶりにあったな。)
「花夢ー来たぞ!」
「ほんとに来てくれたの?嬉しい夢見ているのかな?」
「ここは現実だ。」
「そうだよね。やったー!」
とても幸せそうな表情だった。
「それじゃあツカキぼくについて来てね。今からイノリ兄さんの所に行くから。」
そして歩いているとエルトがやって来て、
「ツカキ⁉騎士になるってほんと?」
「はい!星の国はトト兄さんが居るので。」
「でもそうしたら…。やっぱりやめた方が良いよ。」
「エルト。でも俺は騎士になると決めたんだ。だから…」
(もしかして俺が騎士になったら五千年後エルトを守って死ぬってことか?
騎士になったらエルトを傷つけてしまう。トト兄さんもだから悲しそうだったのか。)
「分かりました。騎士になりません。今日は遊びに来たって事にします。」
するとエルトはとても安心した顔で、
「ツカキありがとう。」と言った。
「当たり前でしょ。約束したじゃないですか。絶対に裏切らないって。」
「ねぇツカキはトト様の事しか考えていないんだろ。
口では誰かの為って言っているけど、心の中ではトト様との約束の為だろ?」
「なんで、分かるのですか?」
「ぼくも同じだから。」
そこに、「イノリだ。おれに用がある奴はツカキお前だな?」
「はい!」とツカキは言った。
「じゃぁツカキこの部屋に入ってくれ。」
「それで、用とは?」
「今日ここに泊まりに来ました。」
「なら、好きな部屋を使ってくれ。それでは」
「あっ待ってください。あなたと喋りたいんです。」
「あぁ。でもおれは面白く無いぞ。それでもか?」
「はい!聞きたい事があって、エルトって未来が読めるんですか?」
「あぁ。あいつは読める。エルトには義理のお兄さんが昔、居たんだ。
エルトはお兄さんがとても好きでだから兄と約束した事をずっと守っているんだ。」
「そうなのですね…でも居たって事は亡くなられてしまったのですか?」
「残念なことに殺されてしまったんだ。」
「えっ?そんな、可哀そうな方なんですね。」
「でもな、エルトはお前に出会ってから変わった。また信じようとするようになった。
おれにできなかった事をしてくれてありがとう。本当に感謝している。」
「イノリさんって本当に優しい方なんですね。」
「ありがとう。ツカキ、でもな優しいっていうのは人によって感じ方が違うのだ。
例えばしっかり自分の事を叱ってくれる人を優しいと思うか、困っている人を、
放って置けない人を優しいというか、人によって違うだろ?でも、
それに共通しているのは、きっと自分の為に行動してくれるって事だな。」
「そうですね。」
「ツカキは優しいとおれは思う。たとえそれがエルトと同じ兄との約束だとしても。」
「エルトはどうしてそのお兄さんが好きなんですか?」
「それはな、エルトが挫けそうな時、諦めたいと思ってしまうような時、
大失敗してしまった時、兄が励ましてくれて次頑張ろうって言ってくれたからだと思う
おれに分かるのは、このくらいだ。」
「イノリさんって本当に優しい方ですね。」
「違うよ。だっておれは…。と、とにかく、みな良い所と悪い所があるんだ。
ツカキこれだけは忘れるなよ。だからみな、自分のダメな所があって当然なんだ。
それは絶対わすれるなよ。ツカキ。」
「はい。分かりました。」