表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
低能な料理番  作者: ミツル
第四章 帝国の美魔女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/156

27

 麦わら帽子の竜はノーマに気付くと、驚いた風を見せた。


 竜にもちゃんと表情があるんだな…


 そしてすぐにうれしそうに手を振った。


 だが強く振りすぎたのか、掌の風圧で枝が大きく揺れると、その竜は焦って揺れた枝を必死で抑えた。

 

 バサリと俺の倍はありそうな葉が落ちてきた。

 葉っぱもここまでデカいとさすがに重いんだな。


「ははは、あいかわらずラサイはあわてんぼうね!」

 

 いやいやノーマ、そういうのなら君もあまり負けていないと思うぞ。

 

 もしかしてそういうのが転移竜の特質なのか?

 いやジェーンはそうでもなかったな…


 などと考えていると、ラサイは麦わら帽子を脱ぐと逆さにして、俺達の目の前まで下げてきた。


「乗せてってくれるみたいです」

「あら、優しいのね」

「じゃあ…」


 俺達が帽子に乗り込むと、バサリと大きな音が響き、白い羽毛に包まれた羽が広がって羽ばたいた。


「うおおおおお」

 

 ラサイは一気に上昇して、景色が一望できる高度で止まった。


「広いわね~」


 見える範囲いっぱいに、森…おそらくブドウ畑が広がっている。


 目を凝らすと、そこかしこで竜達が作業をしているのが見えた。


 そうか、そういう事か。

 合点がいった。


 何故転移竜の一族がブドウ農家をしているのか。

 つまり、転移竜の一族じゃないとこのブドウは栽培できないんだ。スケール的に…


「あそこがうちの村です」


 森の中心に大きな湖があった。

 その湖畔に湖全体を囲むようにして、家々が建ち並んでいる。村と呼ぶには規模が大きい。


「あれ?家が普通の大きさだけど?」

「いやだイオリ様。普段は普通の姿で生活してるに決まってるじゃないですか」

 ノーマが照れたように俺の肩を平手で何回も叩いた。


 ああ、照れる事なんだ…


 ラサイは一気に森を渡ると、そのまま湖の真上まで飛んで、その勢いのまま下降し始めた。


「え?まさか湖に?」

「ちょっと止めて。この服お気に入りなのよ!」

「大丈夫です!ほら」


 水面が迫ってくると同時に湖面が波立ち始めて、次の瞬間水中から大きな丸い石舞台が飛び出してきた。


「おお!」


 ラサイは羽ばたき一つで速度を一気に落とすと、その石舞台の上にふわりと着地した。


「到着です!」


「へ、ヘリポートみたいなもんか?」

「そうみたいね」


 俺とアルページュが顔を見合わせて感心していると、上空から一陣の風が吹いてきた。


「あ、ラサイ待ってえ!」

かなりの慌てっぷりでノーマが頭上に向かって叫んだ。

 

 つられて見上げるとそこにもう竜の姿はなく、気配を感じて視線を降ろすと、そこにはノーマと同じ年頃の、ノーマと同じようにとても可愛い顔つきの、優しそうな、純朴そうな娘さんが立っていた。


 なにひとつ身につけずに…

 

 ああ、そういえばノーマも最初は裸エプロンを披露してくれたな、でも最近は転移後でもちゃんと服を着ていたな、ジェーンも変身後はおばあちゃんの恰好だったな、などといろんな思いが瞬時に俺の脳を駆け巡ったが、最後に浮かんできたのが、

『あ、この子はノーマよりも少しふくよかな体つきなんだな…』

というごく素直な感想だった。


「うわあああ!」


 ノーマが音速のダッシュでラサイに向かっていき、そのままの勢いで飛びつくように抱きついてその身体を隠すと、

「まわれみぎぃ!」

と大声で俺に向かって叫んできた。


「はい!」


 勢いに押されて急いで回れ右をしたが、俺はその直前のコンマ数秒で、ノーマダッシュを受け止めたラサイの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、ぼよんとショックを吸収する一部始終を拝見させて頂いていた。


「あらイオリ、いいもの見させて貰ったわねぇ」


 アルページュ、君は素で言ってるのかもしれないが、今は止めてくれ…


「見たんですか?」


 ごくごく背後でナイフばりにそう声を突き付けられて、俺はゆっくりと首を横に振った。


「どうしたの?ノーマったらそんなに慌てて」

 ラサイの声は、見た目通りの純朴そうな声だった。


 ノーマの深いため息が、首筋を触った。


「ラサイ、服は…」

「え?お家に置いてるけど」

「はああああ…」

 今度のはさらに深いため息だった。

 

「…これ使って」

 

 鎖が揺れるような小さな金属音がした。


「え?これダンメルト魔石じゃない!こんな高いものいいの?」

「あら、ノーマそんなの使ってたのね?」

「イオリ様と初めてあっちに行った時にちょっと大変だったんで、エルブジ様がいくつか持たせてくれたんです。皇室の備品です」

「へえ、さすが皇室ねぇ」

 

 それからちょっとの間があって、

「いいですよ」

の声に振り返ると、服を着たラサイがニコニコしながら立っていた。


「えーと、私の幼馴染のラサイです」

「いつもノーマがお世話になってます」


 ぺこりと頭を下げたラサイの胸元で、揺れたペンダントの石が紫色に光っていた。


 あれがダンメルト魔石か?なるほどそうか…そういう感じのね…機能ね…


 エルブジめ、要らんことを…


「あ?」


 俺の心を見透かしたかのように、ノーマが紗友里ばりの睨みをきかせてきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ