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低能な料理番  作者: ミツル
第四章 帝国の美魔女

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23

 気球はふわりと浮かぶと、ゆっくりと高度を上げていった。


「うわーいい眺めですね!イオリ様!」


 頭上に迫るブレドのお腹が無ければな…


「凄―い!高い!どんどん上がっていくよ!イオリ!」


 乳房迄高さ二百メートル近くあるらしいからな…


 どうしてノーマたちはそんなにはしゃいでいられるんだろう?


「すみません。お気持ちは分かりますが、あまり騒ぐとブレドが驚いちゃいますので」

「はーい!」

「すみませーん」

 

 修学旅行の引率ってこんな感じなのかなぁ…お手数おかけします、添乗員のお姉さん。


 既定の高さ(ブレドの乳房ギリギリ)まで上がると気球の上昇は止まった。地上とゴンドラを繋ぐ何本かのロープで高さを調整しているようだ。


「すみませんちょっとお待ちください」


 お姉さんがゴンドラから伸びたロープを一本掴むと、「ふん!」と気合を入れて引っ張り上げ始めた。


 華奢に見えていたが、彼女は規格外の力持ちだった。


「ふんふんふん!ふーん!」


 掛け声というか鼻息というか、とにかくロープはあっという間にすべて引き上げられて、その先に結ばれた人ほどの大きさもある筒状の搾乳機がゴンドラの中に引き入れられた。

 搾乳機に繋がった太いホースは、地上へと伸びている。

 

 なるほど、へー、なるほどね。


「ではお先に失礼します」

 

 お姉さんは搾乳機を脇に抱えると、片手で垂直の梯子を器用に登り始めた。


「ホースが足元を通るので気をつけてくださいね」

「はーい」

「あの機械ってけっこう軽いんだね」


 いや、ミラ、間違ってるぞ。


 搾乳機が引き上げられている間のゴンドラの傾き具合からして、あれは数十キロはあるはずだ。俺が反対側でバランスをとるように気を使っていたからな。

 あれが軽いのではなく、持っている側が驚異的なのだ。

 

 何者だ、あのお姉さん。


「さあ皆さーん!どうぞ!」


 頭上から最後通告が降ってきた。


「イオリ様は登れますか?」

「ん?ああ、多分、大丈夫」

「じぁあミラ、私に捕まって」


 しゃがんだ背中にミラがおぶさると、ノーマはすっと立ち上がって、

「しっかり捕まっててよ!」

と叫びながら、超スピードで梯子を登りきった。


 あの分ならミラは、ノーマにしがみついた瞬間に天辺に到着したと感じているはずだ。


 意を決して梯子に捕まると、

「そのままで大丈夫ですよー!ふん!」

というお姉さんの声と同時に、梯子が俺ごと引き上げられ始めて、程なく俺は自動で上まで辿りつけた。


「はい!到着!」


 この人、まさか転移竜の一族か?


 天辺に設置された足場は思った以上に安定していて、目の前には俺の身長と大差ない大きさの乳首がぶら下がっていた。

 ブレド全体のスケールから考えるとかなり小さく感じるが、子ブレドの体躯からすると、なるほどそうかと納得出来る。

 乳房は全部で四本あるが、搾乳は一回に一本からしかしないようだ。


「子供にお乳を飲ませる時は、お母さんブレドはちゃんと口が届くように足を曲げて高さを合わせるんですよ。それって体重の重い親ブレドにとってはすごい重労働なんですけど、絶対に子供がお乳を飲み終わるまでは足を延ばさないんです。お母さんの愛情を感じる瞬間で、私、大好きなんですよね」

「それ、素敵ですね」

「見てみたい!」


 うんうん、いい話を聞いたね。


「じゃあ皆さんでこの搾乳機をブレドに取り付けましょう!」

 

 お姉さんが見守る中、三人で搾乳機を持ち上げて乳首に差し込む。とは言っても、ミラは手を添えている程度だ。


「うぐっ」

「大丈夫ですか?イオリ様」

 

 持ち上げた瞬間、治ったばかりの腰痛が顔を覗かせた。ハッキリ言ってノーマがいなかったら無理だっただろう。

 

 この作業をもしかして普段はお姉さんが一人で…

 まあ、この人なら大丈夫か。


 搾乳機が根元まで差し込まれたのを確認すると、お姉さんがホースとの継ぎ目にある石版に手をかざした。


「もう手を放して大丈夫ですよ」


 すぐにホースから空気の流れる音がし始めて、やがてそれは液体の流れる音にかわり、ホースの中をアイボリーホワイトの乳が流れ始めた。


「うちの搾乳と一緒だね」


 基本的にはな…スケールは違い過ぎるが…


 ミラがブレドのお腹を見上げている。


 肌色の乳房が小さく揺れている。


「…触ってみたいか?」

「…うん…」


 お姉さんを見ると、微笑みながら頷いてくれた。


「よし、じゃあ俺がミラの背になってやるよ」


 ミラの両脇を支えて、そのまま高く持ち上げた。


「あ、ありがとう…」


 ミラが緊張の面持ちでゆっくりと手を伸ばしていく。


「そっと、優しくね」


「はい」

 

 ブレドの肌に、ミラの掌が、そっと触れた。


「…あったかい」


「ブモオ~」


 ブレドが、小さく、優しく、少し気持ちよさそうに、鳴いた。


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