表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
低能な料理番  作者: ミツル
第四章 帝国の美魔女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/162

18

「は?異世界?何言ってんの?」


 ミラは胡散臭そうに俺を見上げている。

 子供らしい、物怖じの無い豊かな表情だ。

 

 まぁ、そうだと思う。それが正しい反応です。


 事情を説明したのが初対面の俺だったのも悪いのだろう。


「私そんなたわ言に付き合ってる暇はないの。ウリアおばちゃん、あの子連れて帰るね」

 

 あの子というのは、家の横にいた乳牛の事だ。

 実はここはミラの家が経営する牧場の敷地内で、あの牛はそこの乳牛だった。

 放牧中に群れから離れてはウリアの元を訪ねてくるのが癖らしい。


「ちょっと待ってミラ。あなた今から工房へ帰るの?」

「うん。もちろん。今日はこれから仕込みをしなくちゃいけなから」


 仕込みだと?

 俺と同様にアルページュも目をきらりと光らせた。


 アルページュがしゃがんで視線をミラに合わせた。

「ねえミラ。よければ今からその仕込みを見せてもらえない?邪魔はしないから」

「うん、いいよ」

「あのお姉ちゃんとおじちゃんも一緒にいいかな?あのおじちゃん、ああ見えて腕のいい料理人なのよ」


 おじちゃん…ああ見えて…


 ノーマ、そこは笑うんじゃなくて怒る所だぞ。


「えー?まあ、別にいいけど…アル姉ちゃんの頼みなら…」


 俺のありったけの愛想笑いは、ジト目で打ち消された。


 牧場の敷地はとてつもなく広いようで、ミラの工房までは歩いて一時間近くかかるらしい。


 道中、アルページュがミラについて教えてくれた。


「この牧場はね、もともとミラのおじいさんがお一人でやっていたらしいの。ただもう随分お年で体力も弱っているから、今はミラが手伝っているのね」

「親御さんは?」

「うちの父さんと母さんは、牧場の仕事に興味が無いの。二人とも役所に勤めてる」

「へえ、大変だな」

「別に、私が好きでやってるから」

「君はいまいくつなんだ?」

「女性に歳を聞くのは失礼だって言われなかった?…十歳よ」


 おお、テンプレな反応が新鮮だ。ヒシャと比べるのもなんだが…


「その年で自分の好きな仕事がもうあるなんて、すごいなぁ、うらやましい」

 

 少し愛想も込めての言葉だったが、隣のノーマに、

「え?イオリ様はそうじゃなかったんですか?」

と言われて気付いた。


 そうだった。俺も小学校の卒業文集に、

『将来の夢 僕の夢は世界一の料理人になる事です。その為にまずは一流レストランで一流の料理人について修行して…』

と書いたクチだった。


 まぁ、俺の子供の時に比べると、ミラは図分しっかりしてるけどな。


「ねえ、おじちゃんってまさかアルお姉ちゃんの彼氏なの?」


「違います!」

 ノーマ、相手は子供だ。本気で怒らない。


「じゃあ、お姉ちゃんの彼氏?」

「え、あ、いや、それも、違うと言えば違うんだけど。まぁ、でも、それは、えーと、どうかなぁ」

 ノーマ、相手は子供だ。本気でモジらない。


「…ふーん」


 ミラが俺をじろじろと眺めた。


「まあどっちにしても、めっちゃ不釣り合いだと思うけどね」


 本当しっかりした子供だな、おい。


「あら、私はイオリの事好きよ」

 止めろアルページュ、相手は子供と竜だ。


「ぐるるる!」

 ノーマも唸るな。


 などと楽しい(?)会話をしているうちに、建物が見えてきた。


 これまた絵本に出てきそうな古い木造の家屋と、大きな木造の平屋。平屋は大きさからすると牛舎だろう。

 その隣に、それとは不釣り合いな近代的なプレハブ建築の建物が見えた。

 それほど大きくはないが、下町の工場程度はある。


「あれがうちのチーズ工房よ」

 

 おじいさんと少女の二人で作るチーズと聞いて、なんとなく勝手に掘っ立て小屋的な建物をイメージしていたが、なるほど、これは『工房』と呼ぶにふさわしい。


 工房の前に人が立っていた。


「お帰りミラ。お客さんかね?」

「ただいまおじいちゃん。見学希望の人」


 これもまたなんとなく、大柄で立派な髭を蓄えた寡黙なおじいさんを想像していたのだが、ミラの祖父は細身で上品そうな、いたってスタンダードな老人だった。


「お久しぶりですシュタイラーさん」

「おお、これは絶世の美女のおこしだ。元気だったかいアルページュ」


 なかなか口が回る方のようだ。


 両手を広げて歓迎のポーズをとったシュタイラーは、ノーマに気付くと「ほう」と嬉しそうに呟いた。


「こちらのお嬢さんも負けず劣らず美しい。こんな美女二人が訪ねてくるなんて長生きはするもんだな」

 そう喜びながらノーマとアルページュの後ろに回って二人の肩に手をまわした。


 ちょっと待てこの爺さん、ずいぶんお年で体力も弱ってるんじゃなかったのか?


「私達自慢のチーズ工房、是非見学していって下さい!」

 

 そう言うとシュタイラーはノーマに向かってウインクをした。


「特に君には初めて見る物ばかりで面白いはずですよ」


 ちょって待てこの爺さん、今何を言った?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ