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低能な料理番  作者: ミツル
第四章 帝国の美魔女

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1

 翌日、城にアルページュからタムルが飛んできた。

 

 俺はその時ゲストルームで、机の上に積み上げた金貨十枚を見て、色々と思いを巡らせていた。

 金貨は、言うまでもなく薪会の料理番としての報酬、その前払い分だ。

 

 昨晩、俺は皇帝から正式に料理番として任命を受けた。


「薪会の再開は来月を目途に参加者の予定を調整するつもりだが、それでいいかな?」

「はい、問題ありません」


「あの、それならば…」

 そう切り出したのはノーマだった。


「料理番の報酬を先にイオリ様にお支払い頂けないでしょうか?」


 え?ノーマさん、突然何を?


「全額が難しいなら、半分とかでもいいんですが…」


 いや、そんな図々しい事は考えてなかったのですが…


「イオリ様はお金が全く無くてとても困ってるんです」


 微塵も臆することなくそう発言するノーマと、突然の申し出に目を白黒させる皇帝と、そして耳まで真っ赤に染めた俺とが、暫く無言で向き合った。


 いや、正確に言うと俺は恥ずかしくて顔を上げられなかったのだが。


「…こほん」


 エルブジのわざとらしい咳払いで、皇帝が我に返った。


「そ、そうか…それならば薪会の準備金という名目で、金貨十枚を払おう。残りは会が成功してからという事でいいかな?」


「はい!ありがとうございます」

 ノーマの屈託の無い返事と勢いのあるサムズアップと、


「…すみません…助かります…」

 超ボソボソ声で返した俺の謝罪とで、任命式は無事に終わりを告げた。 


 そして今日金貨を眺めながら、居た堪れない気持ち真っ最中だったわけである。

 もうこれ以上恥ずかしい事起きないでくれ。

 と、セルフフラグを立てた時に、顔面蒼白のエルブジが慌ただしくドアを開けて駆け込んできた。


「イ、イオリ様、大変な事になりました」


 戸惑う俺の手を引っ張って、エルブジが連れてきたのは皇帝の執務室だった。

 すでにノーマが先に部屋に入っていた。

 ノーマの顔もエルブジ同様、かなり曇っている。

 そして何より皇帝の眉間の皺が、事の重大さを感じさせた。


「何が起こったのです?」


 俺が質問すると、三人が三人とも、目を伏せてしまった。

 かなり言いにくい事が起こっているようだ。


「かなり言いにくい事なんだが、イオリ…」


 絞り出すように皇帝は話し始めた。


「君の姉、紗友里が逮捕された」


「へ?」


 何を言われているのか分からないままエルブジの顔を見ると、そっと目を逸らされた。

 すがるように移した視線は、ノーマにもそっと逸らされた。


「逮捕したのは帝国特別魔法治安機関だ」


 何それ?なんか物々しい機関名ですが?


「あの、うちの姉はいったい何をしでかしたんです?」


 意外と冷静に聞き返したので、皇帝がやっとまっすぐに俺を見てくれた。


 こう言っては何だが、今更紗友里が逮捕されたくらいで取り乱す俺ではない。なんなら俺の人生にとってそれはまあまあのデフォルトだ。今度は何をしたんだ?喧嘩か?また大人数を相手に派手に暴れまわったんじゃあ…


「飲酒だ」


 皇帝が静かに罪を告げた。


「え?ああ…」


 俺はホッと胸をなでおろした。

 

 なんだ、泥酔したとかか…いや、待てよ…

 

 俺は違和感を覚えた。


 紗友里はとんでもないザルだ。一晩中飲んで酒瓶を何本空にしていても、朝普通に朝食をペロリと平らげる、そんな鋼鉄の肝臓の持ち主だ。

 

 しかも逮捕したのがなんとか…魔法機関とかなんとか…

 

 意味不明過ぎて戸惑い始めた俺に、エルブジが耳打ちをしてきた。


「イオリ様はご存じなったかもしれませんが、この世界では、飲酒は重罪なのです」


 言われて思い出した。今までこちらのどの食卓にも、酒が出ていたことはなかった。船で料理した時、アルページュは白ワインをかなり厳重に管理していた。こちらの住人から隠すように。実はブルート達も料理の時はアルコール類は使っていない。代わりに何かの果実を絞った(多分白ブドウ的な)ジュースを使用していたが、そういう代替品だと思っていた。以前皇帝の唐揚げに使った日本酒も、コック達は初見でアルコールとは認識していなかったのだろう。


 つまり、この世界では、お酒は…


「酒は魔法治安機関が厳重管理している禁制品の一つだ。どこでどう手に入れたのかは不明だが、そういう事らしい…」

 

 そういう事と言われても…


「で、あの、その重罪というのは…」


 ノーマがぎゅっと俺の手を握ってきた。

 ノーマの掌は、びっくりするほど汗ばんでした。

 引きつりまくった笑顔が、無理に俺を安心させようとしているのは分かったが、その口が告げた言葉は、その意図とは程遠い物だった。


「…ヘタをしたら…極刑です…」


 何しでかしてんだ!あのバカ姉!


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