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低能な料理番  作者: ミツル
第三章 帝国のアイドル

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 皇帝とフランチェスカの会談の席は、前回の部屋(皇帝専用のダイニングルーム)ではなく、もう少しこじんまりとした会合専用の部屋に用意されていた。

 皇帝が重要人物と少人数で会合をする為の部屋で、当然ながらここにも見張り部屋が隣接されている。

会食は会議の後とのことで、少し時間に余裕があった俺は(もちろんノーマも一緒に)見張り室にいた。

 見張り室には見知らぬ衛兵が一人いたが、俺達が部屋に入るとすんなりと席を譲ってくれた。

 

 そういえばマイドはまだ海上を彷徨っているのだろうか?


「皇帝陛下、お久しぶりです。お元気そうで何よりです」

 

 フランチェスカはスカートの裾を丁寧に摘まみ上げ、うやうやしくお辞儀をした。


「まぁそう畏まるなフラン。君こそ元気そうで何よりだ。活躍は聞いているよ。大人気だそうじゃないか」

「いえ、これも皇室の御助力あっての事。いくら感謝をしてもしきれません」


 なんか、この前の小娘っぷりからは想像もできないお姫様がそこにいた。


「まあかけなさい」 


 フランチェスカはもう一度頭を下げると、皇帝に対面して座した。


「あれ?あのテーブル、いつもより小さいような気が…」


 さすがノーマ、よく気が付いたな。


 実はそれは俺が皇帝とエルブジに頼んで今日のメニュー用に換えてもらったものだ。

 エルブジに頼んで事前に皇帝に謁見させてもらった俺は、いくつかお願いを申し立てていた。

 その一つが会場の下見。もう一つは会食の場に俺とノーマが同室させてもらう事。

 これは今夜のメニューにはどうしても必要な事だった。

 

 それともう一つ重要なお願いをしたのだが、意外にも皇帝はどの願いも快諾してくれた。


「勝負の件は聞いている。イオリ殿の自由にやってくれていい。楽しみにしているよ」


 過度な期待はプレッシャーでしかないのですが…


「それでは早速、ご報告をさせていただきます。こちらが今期の具体的な活動報告、それとこれが収支報告書です」


 フランが分厚い資料を皇帝に提出した。


 自らそういうのをするんだ。正直、意外過ぎて感心した。


 皇帝に報告をするフランチェスカの顔は真剣そのものだった。

 自分のしている事に誇りと覚悟を持っている、そういう仕事をしている顔だ。


 それだけに、ノーマの事も真剣という事か…


 横を見ると、ノーマも真剣な眼差しでフランチェスカを見守っていた。


「では、来季の活動予定と予算の報告を…」

 

 まだまだ会議は続きそうだったので、俺はノーマを促して部屋を出た。


 厨房ではコック達が、少し不安そうに俺を待っていた。


「ねえイオリ、本当にこれで準備は全部なの?」

 さすがのリドも落ち着かないようだ。


「ああ、大丈夫だ」

「でも、ぜんぜん調理してないのに?」


 配膳用のワゴンの上には、今日の主役であるあのホーロー鍋が準備してある。


 中身は、空っぽだ。

 

 そして料理の具材達は、さっきカットして時間保管庫に入れてある。

 

 バッチリだ。


「そうだ、これが必要なんだった」


 俺は壁の棚から石(っぽい素材)で出来た箱を手に取った。

 三十センチ四方程のそれは、俺が前々から目に着けていた道具だ。


「ああ、臨時用の卓上火口ですね。そういえばまだ準備していませんでした。すみません」

「いいよプジョル。それよりも使い方を教えてくれ」


 厨房のメインの火口と同じように、それはいたってシンプルな使用方法だった。前面に張り付けられたメノウのようなプレートを長押しすると、上面の丸い火口に火がつく。あとはあてた指の左右のスライドで火力調整。さすがにメインに比べて火力は弱いが、その分弱火の微調整が秀逸で、保温だけにも使える。ブルート達はメイン食材の調理と同時進行でソースを作ったり、ストックを保温しておく為に使っていた。

 

 正直、一台うちに欲しい便利器具だ。

 

 そういえばアルページュが時間保管庫は俺達の世界では機能しなくなると言っていたが、他の便利グッズはどうなんだろうか?

 ラシームの店で見た魔法、あれがこの世界だけで作用するものだとしたら、多分多くの道具が使えない事になるのだろうが。


「会議、終わったわよ」


 厨房の入り口に、フランチェスカが立っていた。口は笑って、目は睨みつけている。


 いや器用なもんだ。


「わざわざご報告頂き、申し訳ございません」


 フランチェスカはチラリと、この時は柔らかい眼差しで、ノーマを見ると、

「さっさと準備しなさい」

と踵を返して出て行った。


 ツンデレスキルレベルマックスだな。


 さて、時間だ。


「じゃあノーマ、行きますか」

「はいイオリ様」 


 俺も誇りと覚悟を持って仕事をしよう。


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