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低能な料理番  作者: ミツル
第三章 帝国のアイドル

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「お疲れ様。大丈夫?」


 昼食のデザート(超巨大プリンアラモード)を皇帝の食卓に送り出したリドが、俺の腰をポンと叩きながら笑いかけてきた。


「ああ、おかげさまでなんとか」


 ノーマが仕立て直してくれた腰痛用腰帯が俺の腰を締め付けている。そのおかげで、昼食の手伝いも何とかこなせた。

 本日の昼食コース、全三十四品目をだ。


「今日はイオリの会食があるからな。一品ずつのボリュームを抑え気味にしていこう」

とブルートは言っていたが、それで品目が前より増えてるってどうなの?


「本当に無理しないで下さいね…」


 三十四品分の洗い終わった皿を片手で持ったノーマが心配そうにしている。

 俺はその皿が無事運ばれるかの方が心配になってくるよ…


「ノーマ、お皿は少しずつ運んでくれていいから…」


 プジョルが飛んできて皿を三分の一程受け持って運び始めた。


 相変わらず皇帝の厨房は楽しい職場だ。


「イオリ、この位の大きさでいいのか?」

 ブルートの顔がフライパンで隠れている。


「わぁ、大きなフライパンですね。何を作るんですか?」

「これで、今日の料理のまとめ役を作るんだ」

「まとめ役…?」


「これを使うのよ」

 リドが昨日の木箱をドカッとテーブルの上に置いた。


「あ、昨日のテペルだ」


 箱を覗き込んでノーマが嬉しそうに匂いを嗅いだ。

 真四角で真っ黒の果実からは、らしからぬ芳香が漂っている。 昨日セザンの農場で収穫したものだ。 

 真四角なので、箱にぎっちりと詰め込まれている。のでまぁまぁの重さがある。


 ので、これを持ちあげようとした俺は、腰にダメージを負ったというわけだ。


「これ全部ヘタを取って湯剥きするの?」

「ああ、じゃあ早速やるか」

「手伝うわ」

 

 俺達の会話を聞いていたブルート、プジョル、オデットの三人が、なるほどと頷きながら顔を見合わせた。


「なら俺はビリーネをみじん切りだな」

「じゃあ僕はブルルを」

「モリネの葉が要りますね」


 三人が同時に動き出した。


 どうやら俺が何を作ろうとしているのか、瞬時に悟ったようだ。


 相変わらず、楽しい職場だ。


「イオリ、昨日リドから言われたフュメはそこの保管庫に出来てるぞ」

 ブルートが自慢げに言ってきた。


 それはもうさっき確認しておいた。

 銅鍋にたっぷりと作られたフュメドポアゾン、パドーレのアラから作った魚出汁は、見ただけで完璧な出来と分かった。


「ありがとう。時間かかったろう?」

「なあに、気にするな。腰痛の辛さならそれこそ痛い程良く分かってる」 


 俺とブルートは、親指を立て合って分かり合った。 


「ノーマ、お湯を沸かしてくれる。たっぷりと」

「了解!」


 ノーマは嬉しそうに一抱えもある鍋を持ち出してきて、湯を沸かし始めた。

 ナイス判断、リド。


 湯剥きをして皮をとったテペルを小さく賽の目に切っていく。ブルートがみじん切りにしたオリムカネ(スイカ位の大きさの赤い皮の玉ねぎ)を飴色に炒めていく。プジョルはナスのように細長い形の、だが実は明らかにニンニクのブルルを、大量にみじん切りにしてくれた。

 オイルを入れた大型フライパンにブルルを入れて炒めた後、飴色玉ねぎと大量のテペルを入れて煮立たせてから、楓のような形をしたモリネの葉、香りはローリエと同じだった、を浮かべて後は弱火で煮込んで行けば、テペル…トマトソースの出来上がりだ。


 くつくつと泡を立てるソースからは、太陽の香りがした。


 リドが煮込み具合を見てくれている間に、パドーレの身から小骨を抜いていく。

 オデットがククルを研いで炊く準備に入っていた。


「よし、あとは直前に具材を全部切れば準備は終了だ」

「え?」

「あれ?」

「調理はどうするんですか?」

「ん?あ、調理?」


 俺はその三人の反応が楽しくて思わずニヤニヤしてしまった。


 その時、厨房の扉が開いて、エルブジが顔を覗かせた。


「あの、イオリ様、今でしたら大丈夫かと」

「あ、マジで?行きます行きます!」


「どこへ行かれるんですか?」

 エプロンを外した俺に、ノーマが聞いてきた。


「ん?あ、ちょっと野暮用でね…」

 また思わずニヤニヤしてしまう。


「皇帝に会ってくる」


 俺の言葉に、ノーマとコック達全員が、ポカンとした顔になった。


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