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低能な料理番  作者: ミツル
第三章 帝国のアイドル

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24

 その竜は船を近くの安全な海岸まで運んでくれた。


 そして自分は浜辺に降り立つと、スッと一瞬で人の形に戻った。


 その姿は、あの巨大な体躯からはとても想像できないような、小さな、少し腰の曲がった、そして優しそうなおばあちゃんだった。


「おばあちゃん!」


 ノーマは船を飛び降りると、足が濡れるのも構わずにバシャバシャと水飛沫を上げながら走ってその人物に飛びついた。


「これノーマ。そんな冷たい水に飛び込んだら風邪ひいてしまうがね」

「ごめんなさい」

 

 謝りながらもノーマは顔をおばあちゃんの胸に擦り付けて、幸せそうに微笑んでいる。


「久しぶりね、ジェーン。ありがとう。助かったわ」


 アルページュが船上からおばあちゃんにお礼を言った。


「なあに、あんたからのお願いじゃ。老体に鞭打ってでも駆けつけるわい」


 ジェーンはノーマの頭を撫でつけながらニコニコと答えた。


「二人は知り合いなの?」

「まあの。アルが小さい頃から良く知っておる」

「クダコーレの事が分かった時に、タムルを飛ばしておいたの」


 タムルってどこにでもいるんだな…まあ、おかげで助かったが、それよりも少し気になることがあった。


 アルページュを子供の頃から知っている?


「ばあさん!助かった!危うく全員で死ぬところだったよ!」


 俺の思考を掻き消す勢いで、紗友里までもが船を飛び降りて、ジェーンの元に駆け寄っていった。

 あの竜を見た後で全く物怖じしないのは、さすがに紗友里だ。朽木など、まだ立ち上がる事さえ出来ていない。

 

 ふと気がつくと、ジェーンが俺の方をじっと見ていた。

 

 いかんいかん、大人としてまずは俺もきちんと挨拶をしておかないと。


 俺は船を降りて、ジェーンの前で頭を下げた。


「本当にありがとうございました。俺はイオリと申します。ノーマ…お孫さんには色々とお世話になっておりまして…グガッ!?」


 俺なりに礼を尽くした挨拶だったのだが、ジェーンは見えない速度で俺の胸倉を掴み上げ、認識できない程の刹那で俺の身体は宙吊りになった。


 あの小さい体で?え、もしかしてこの方は宇宙人とかなんじゃ…

 

 急激に意識が薄まったせいか、わけのわからない妄想が浮かんでくる。


「あんたまさかうちの可愛いノーマをたぶらかしてんじゃないだろうね!いや!まさか狙いはアルの方かい!」


 …なんの早とちりだ…


「待っておばあちゃん!イオリはそんなんじゃないから!」


 ノーマが必死にジェーンの手を振り解いてくれた。


「いやあ、両方なんじゃないか?」

 やめろ紗友里、たとえ肉親でも許せない冗談があるぞ。


「ごめんなさいイオリ様。おばあちゃん昔からすごい孫可愛いがりで…」

「びや…りゃいりょうぶ…ははは」


 九死に一生を得る、をこんな形で実体験出来るとは思わなかった。


 ジェーンかひとしきり俺に謝ってくれてから、ノーマが事のいきさつを祖母に詳しく説明している間に、アルページュが地図を広げながら俺とマイドを呼んだ。

 

 今俺たちがいるのが岬の真ん中辺り。

 そこから反対側の海まで、陸部分に赤い線がひいてある。

 

「ここのルートをジェーンに船ごと運んで貰おうと思ってるの」

 

 アルページュの言わんとしてる事がやっと理解できた。


「でも、ノーマのおばあちゃんてことは、ジェーンも転移竜なんだろう?だったらいっそのことパドーレの生息海域に飛ばして貰えば…」


 竜になったジェーンを見て分かった。

 ノーマの数倍は巨大な竜だ。

 おそらくこの船を転移させてきたのはジェーンなのだろう。

 そして多分、アルページュも。


「それなんじゃけどな…」


 いつのまにかジェーンとノーマも話し合いに加わっていた。


「あたしゃ年でね。転移はもう数年前からできんようになってしもうての。見ての通り体も弱っとるし、出来るのはせいぜい船を持って岬の反対側迄飛ぶことくらいじゃ」


 いやいや、さっきのマッハの動き、見ての通りと言われてもなぁ…


「そういうものなのか?」

「そういうものなんですよ」

 ノーマがジェーンの腰をさすりながら答えた。

 

 ほんとやさしいお孫さんだこと。


「なら早めに行った方がいいんじゃないですかね?そろそろ日が暮れそうですよ」

 やっと朽木が正常運転に戻ったようだ。

 

 確かにすでに薄暗くなっている。気温もかなり下がって、濡れた足の感覚が無くなり始めていた。


「うーん、それならここで一泊したほうがよさそうね。もうずいぶん暗いみたいだし」

「あ、その方がいいですね。どちらにしろ、あっち側に行っても暗くて航行出来ないですし」

「確かに腹が減ったな…」

「俺ももう限界ですね。いろんな意味で」

「暗くなるとわたしゃ夜目が効かないからねぇ」

「やった!おばあちゃん、一緒に寝よう!」


 全員一致でそう決まった。


「ならディナーを用意しなくちゃね」


 アルページュが俺の腰に手を回してきた。


「イオリ、手伝ってくれる?」


 背後で、なにかしらがバキリと破壊される音が聞こえた。


「初めての共同作業、てやつかしら。うふふ」


 やめてくれ、今度は孫の方に殺されかねない…

 

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