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低能な料理番  作者: ミツル
第二章 皇帝の夕食

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13

 ここで皇帝は一度、フォークを置いた。


 水を、今度はゆっくりと飲み始めた。


 エルブジが視線だけ動かして、こちらを見た。


 いいタイミングだ。さすが名執事。


「それではお口直しを」


 エルブジの合図で、給仕の女性がシャーベットを持ってきた。

 ごく淡い青みが美しいシャーベットだ。何かの果実のシャーベットだろうか。リドの技が光っている。 


「おお、ありがたいね」


 皇帝は嬉しそうに口直しを食べ始めた。


「皇帝、一度料理を引かせてもらってよろしいですかね?」

 ブルーノが切り出した。


「なぜだ?まだ残っているが?」

「お口直しの後に、少し味を変えてお出ししようかと」

「ほう、そのような趣向か。いいだろう」

「では、少々お待ちください」


 それを見届けて、俺は部屋を出て急いで厨房に向かった。


 厨房では既に俺がお願いしていた準備がほぼ整っていた。


「ゆで卵とピクルスのカットはこれでいいですか?あとハリムスはカットして水にさらしてます」


 オデットがボールを差し出してきた。ハリムス…玉ねぎの透き通った色がうまそうだ。


「いいね!それにマヨネーズをたっぷりと混ぜて。食感を残したいからサックリでいい!」

「なら木べらでいいですね。了解です!」


「ショウユ、シュガー、ビネガー、水、言われた分量で用意しておきました。火にかけると思ったので鍋に混ぜてますがよかったですか?」

 

 そう言いながらプジョルはもう鍋をコンロに置いている。


「ありがとう。それが沸いてきたら水で溶いた片栗粉で…」

「…なるほど、とろみをつけるということですね?わかりました!」


 やはり最高のコック達だ。


「言ってたフルーツって、これでいいの?」

「え?」


 リドが差し出してきたフルーツを見て、俺は一瞬たじろいだ。

 俺はリドに『果汁がとても酸っぱい、けどさわやかな風味のフルーツがあれば嬉しいんだが』と言ったのだ。もちろん頭の中にはレモンを浮かべていたのだが、そのフルーツはスイカほどの大きさがあって、しかも色が"スカイブルー”だった。


「これがその果汁なんだけど…」

「!」


 透明感のあるほんのりと青みのかかった果汁の香りを嗅いで俺は確信した。

 間違いない、これ、レモンだ。

 そして俺はピンときた。


「もしかしてさっきのシャーベット…」

「ああ、この果汁を使って作ったんだ」


 なんて最高のコック達だ。


「おいイオリ!急がないと皇帝が腹を空かせてしまうぞ」


 ブルートが下げてきた特大唐揚げを作業台に置いていた。

 すぐ横の火口には、特大のフライパンが既に用意してある。

 ここからの調理過程は伝えていないのに、理想の大きさのフライパンだ。


 本当に最高のコック達だ。


 フライパンに揚げ用で使ったラードを薄く引いて中火で熱する。

 温まってきたら、特大唐揚げをフライパンに投入する!

 焦げないようにひっくり返しながら、固まった表面の油を溶かすイメージで。


「ソース、出来ました!」


 おいプジョル、君は天才か!


 火を止める。唐揚げの上からたっぷりとソース…甘酢餡をかけてしっかりと絡ませる。


 振り返ると、新しい特大皿が用意してあった。

 

 俺ここで一生働きたいわ。

 

 餡ごと皿に盛り付ける。


 返す刀でオデットが混ぜてくれたソースに、リドが用意してくれた果汁、塩コショウをさらに混ぜて、タルタルソースを完成させた。


「ブルーノ、これは食べる直前に、これでもか!ってかけてくれ」

「わかった!」

 

 ブルーノは2つの器を両手で軽々と持ち上げると、皇帝のもとへ向かった。


「俺も見に行くか…」


 さてどうなる、味変チキン南蛮。

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