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低能な料理番  作者: ミツル
第一章 異世界への招待

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 “Kitchen・KUDOU”は二階が俺の住居スペースになっている。間取りで言えば2K、風呂トイレ別。だが一部屋は店の倉庫として使っているので、実質ワンルームのようなもんだった。


「すごい!薪を炊かなくてもお湯が出るなんて!画期的です!」


 ノーマは呑気に異世界人のお約束的な歓喜を上げているが、俺は全く落ち着かなかった。

 女物の衣服などあるわけがなく、俺がノーマに用意したのはパジャマがわりのロンTに短パンだけだった。


 下着がどうのとかは…聞けなかった。


「…これは…ヤバい…よな」


 何よりこの部屋にはベッドが一つしかない、当然予備の寝具などあるわけがない。


 ザブンとお湯の溢れる音が小さく聞こえた。


「あー最高!!!」

 

 ノーマの歓喜も漏れてきた。

 転移竜様はすこぶるご機嫌のようだ。


 まさか同じベッドで寝るわけにはいかないよな…幸いクッションが一つあるから、俺は床で…そうだノーマにベッドを使って貰えばいい。それで解決じゃぁないか!俺は何を若造みたいに焦っているんだ。普段女っ気がないからってそんな年じゃあるまいし。そうだあくまで紳士的にだな…


「いいお湯でした。すみませんお先に。イオリ様もどうぞ!」


 振り返って卒倒しかけた。

 ノーマが着ているロンTのサイズ感がおかしい。胸周りだけがはち切れんばかりに張りつめている。


 いや、ちょっと予測はしていたのだが…


 そしてやはり下着は着けてはいないようなのだが…

 いや、着けていない。確実に着けていないという証拠が見えていた。


「ひ、冷えるからこれでも着てて!」


 俺はタンスからカーディガンを引っ張り出すとノーマに押し付ける様に渡して風呂場に飛び込んだ。


 あくまで紳士的に、あくまで…


 心が鎮まるまで湯船に浸かっていたら、メチャメチャ手がふやけてしまった…


「イオリ様ってけっこう長風呂なんですね」


 いや、普段はそうじゃないんだが…


 大きめのカーディガンはノーマの太ももまでを覆っていて、そこから見える生足が逆に艶めかしかった。

 

「明日は早く出発したいですから、そろそろ休みましょうか?」

「ああ、そうだな。ウン!ベッドはノーマが使うといいよ。俺は床で寝るから、ウン、そうしよう!ウン!それがいい!」

 

 我ながら見事な棒読みをかました。

 

「あら、そんなわけにはいきません。この家の主はイオリ様なんですから、床でなんて」

「いいや、いいや!ノーマを床で寝させるわけにはいかないだろう。そもそも君はお客様だ!そう、それに明日転移もしないといけないわけだし…ウン」


 俺的に精一杯の紳士的対応を試みた。


「え?そんなの一緒にベッドで寝ればいいじゃないですか」

 

 俺の尽力をよそにノーマはあっさりと答えた。


「ええええええ!いやいやいや!そそそ、それはちょっと!いや駄目だ!仮にも男女がだな…いや、そんな決してやましい事を考えてるわけじゃなくて…なんだ、だから、その…」


 俺の紳士力はあっさりと底を尽いた。


「あー、そういうことですかぁ」


 なんで君はそんなに冷静なんだ?


「それなら大丈夫ですよ!」


 爛漫な笑顔はやめてくれ。今の俺には眩しすぎる。


「私今は発情期ではないので!そういうの全然平気です!」

「へ?」

「おやすみなさい!」

 

 そう言うとノーマはさっさと布団をかぶってしまった。


「へ?」


 俺が愕然としている隙に、ノーマはスヤスヤと寝息を立て始めた。


「…へぇ…そういうもんなんですか…」


 俺は電灯を常夜灯にすると、「失礼します」とそっと布団の端に潜り込んだ。すでにノーマは熟睡に入っている。竜がどこでも寝られるというのは本当らしい。その横顔を見る。世の中の可愛いを凝縮するとこれになるのかもしれない、そう思える寝顔だった。俺はノーマに背を向けて寝る事にした。これ以上は無理だ。


「そっちはそうでも、こっちはそうはいかないんだよ…」

 思わず呟いて、目を瞑った。


 当然ながら、その夜は殆ど眠ることができなかった。


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