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低能な料理番  作者: ミツル
第四章 帝国の美魔女

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 体つきのたくましい竜が二匹、協力して山から大木を運んできた。

 アトミクスとティムローだ。

 

「おーい!うまくできそうか?」


 上に向かって叫ぶと、同時にギロリと睨みつけられた。


 うーん、分かっていてもやはり怖いもんだな…


『…大丈夫だ。俺達は村で使う道具は殆ど手作りしてる』

『間違って踏み潰しそうだからあっちに行ってろ!』


 へー、こいつら竜の姿でも喋れるんだな。

 

「念話です。この村の竜の特徴というか、得意技なんです」

ノーマが教えてくれた。


 ノーマは(ついでに抱えられたポーちゃんも)俺にべったりとくっついている。


「いーよねー。あれ便利だよね」

 ノーマの横でラサイが羨ましそうに竜達を見上げている。


「じゃあまずはブドウを見に行きましょう。丁度収穫したのが倉庫にあるらしいわ。長老が案内してくれるそうよ」

 俺を挟んでノーマの反対側にはアルページュがいる。


「ここまで甘い香りがするね。良いブドウなんだろうな」

 アルページュの隣ではリドがクンクンしている。


「ブドウの葉はポレイリのいい餌になる。後で貰っていくとしようか」

 背後でカーサが呟いた。


 …何故俺の周りに女性陣が全員集合しているのか?


 別にモテ期到来というわけではない。


 原因は、この村の年寄り達、特におばあちゃん軍団、にあった。

 

「あれまあ、あなためんこいわね~」

「ほんに大きな胸だこと。ええ乳出そうだわあ」

「なんて白いお肌。向こうが透けて見えるんでねぇかね?」

「あんた甘いいい匂いがするねぇ!クンクン」

「あらあらそんなに日に焼けて。美人が台無しじゃないか」

 着いた早々ノーマ達はあっという間におばあちゃん達に囲まれてしまった。


「おいばあさん供!その人らは嫁に来たわけじゃないぞ。若い娘を見るのが久しぶりだからって、あんまり構うと迷惑だろ」

 一応ティムローが注意してくれたのだが、そんな言葉にひるむようなおばあちゃん達ではなかった。


 しまいにはそれぞれ腕だのほっぺただの太ももだの胸だのを触り始めて、これはピチピチじゃあ、ぜひうちの孫の嫁に、などとのたまい始めた。


「お前達やめんか!みっともない!」

 長老の一括でなんとか解放されたノーマ達は、それからずっとおばあちゃん達の熱い視線を気にしながら、俺の周りに密集して移動している、というわけだ。


 なるほど、ティムロー達の嫁探し大作戦の大元、というか元凶はあれなんだな…


「どうぞご覧になって下さい。村の自慢のブドウです」


 保管庫に集められているブドウを見て、俺は思わず見惚れてしまった。

 マスカットグリーンの山が、(屋根に空いた穴から差し込む陽光で)輝いている。


「いいワインができそうだな」

「この種だと、白ワインを作るの?」

「いや、正確にはちょっと違う。白は培養酵母がいるから…」


「ねぇねぇ、このブドウからどうやってワインを作るの?」


 俺達の会話を隣で聞いていたリドが質問してきた。


「そうだな。ちゃんと一通り説明しておこうか」


 ワイン作りは工程だけで言えば比較的シンプルだ。

 まずブドウを潰して果汁を絞る。

 絞った果汁を発酵させる。

 この工程で黒ブドウ種から作られる赤ワインは皮ごと、白ブドウ種から作る白ワインは果汁だけを発酵させる。

 そして発酵したワインを寝かせて熟成させる。


「え?それだけですか?」

ノーマが目を白黒させた。


「もちろん途中で撹拌したりろ過したり、細かい作業はいっぱいあるけどな。単純に言えばそうだ」

「でもチーズの時って、なんでしたっけ、えーと、スクーター?みたいなのとかありませんでしたっけ?」

「スターターな。わざと言ってんのか?」

「今回、スターターは必要ないわ。でしょう、イオリ」

「ああ」

 

 酒もチーズも、納豆にしても、発酵食品のほとんどが、そのルーツは『勝手に出来ていた』から始まっている。

 発酵食品とは、()()()()()そのものなのだ。

 そのメカニズムを研究し、安定した生産を目的に人工的に作られたのがいわゆる『培養酵母』だ。

 いまやワイン酵母だって、通販で気軽に買える。


「その()()()()()()()()張本人、目に見えない微生物ていうのは、この世界の至る所に、わんさか住んでいるんだ」


「それが、天然酵母と呼ばれるものよ」

「へぇー!凄い」


 アルページュに肝心の所を持っていかれたので、ちょっと面白くなかったが、ノーマもリドも、ラサイやカーサまでもが、真剣に聞き入ってくれている。


 悪くない。モテ期では、無いけど。


「で、ブドウの場合、ワインを作る天然酵母が、ここに住んでるんだ」


 俺はブドウの表面をぺちぺち叩いた。


「だから実を崩して果汁を絞り、その果汁と皮を一緒にしておけば、天然酵母が仕事をして発酵を進めてくれる。シンプルだけど、ワインはそうやって生まれたんだ」


 実はワイン作りをすると決めた時から考えていた。


 下手な小細工はせずに、俺の世界では古いとされる、伝統的で基本的な工程でワインを作ろうと。


 それがこの世界では、もっとも新しくて、根本となる技術なのだから。


『おい、イオリ。桶が出来たぞ!』


 倉庫の外からティムローの念話が送られてきた。


 確かに便利だな。

 

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