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低能な料理番  作者: ミツル
第四章 帝国の美魔女

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 ティムロー達の村、ポラーゴはホテルから竜の背に揺られて約二時間位の距離だった。

 土地勘がないので詳しくはわからないが、上空からは周辺に都市らしい都市は見当たらなかったので、やはり僻地は僻地なのだろう。

 だが景観は素晴らしい。

 続く山々は高く、所々山頂に万年雪を抱き、砂漠を超えてすぐの土地とは思えない。

 遠くには広大な草原も見える。

 行った事はないが、中央アジアとか、その辺りをイメージした。


 山の尾根に広がる森林、ブドウ畑が見えると、十二頭の竜達はゆっくりと高度を下げ、村に着地した。


 想像していた通り、簡素な村だった。

 一番大きな建物は、村の中央にある収穫したブドウ用の保管庫。それもあちこち補修の跡が見える。

 周りに並び建つ土塀の家は、どれも一様に小さく、古い。


「思った以上にど田舎ねぇ」


 俺は敢えて口に出さなかったぞ。容赦無いなアルページュ。


「素敵だわ。理想的」


 ああ、そうなんですか…褒めてるんですね…


 村の住民達が、待ち構えていたように俺達を囲んだ。

 ティムローが話していた通り、お年寄りばかりだ。


 立派な髭を蓄えた、いかにも長老といった風情のお爺さんが、嬉しそうにティムローに歩み寄ってきた。


「ティムローや、ご苦労じゃったな。さすがわしの孫じゃ。嫁を五人も連れて帰って来るとは」

「あ、いや、じぃちゃん、その…」


 お爺さんの言う五人とは、ノーマ、アルページュ、ラサイ、カーサに、そしてリドだ。


 何故リドまでここに一緒に来たのか?


 もちろん嫁に来たわけではなくて、それにはちゃんと理由がある。


 あの後、アルページュ先生のお説教に若者達がメタメタにされていた時、リドがデザートを携えてホールに入って来た。


『あらあら、みんな今にも泣き出しそうじゃない。美味しい物食べた後なのにどうしたっていうの?』


 皇帝の時といい、リドはいつもいいタイミングで場を和ませてくれる。


 俺は事の成り行きをリドに説明した。


『へえ、いいじゃないレストラン!面白そう!』

『でも、アルコールですよ。下手したら世界を敵にする可能性だってあるんじゃ』

 当然ながらオスタニアでも、発酵品、特にアルコールはご禁制である。


『うーん。大丈夫じゃない?』

リドはあっけらかんと答えた。

『近いうちに、その規制は無くなっていくと思うわ。このイオリのおかげでね!』

 リドの平手が俺の背中にバシン、と入った。


『本当か?』


 幾つもの期待の視線が向けられてしまったので、

『任せてくれ!』

と、大見得を切ってしまった。


 まあ、後に引く気は毛頭ないのだが。


『じゃあデザートでも食べながら、作戦会議と行きましょう!』

『何を作ったんだ?』

『パイ生地が余ったから、ヨーグルトムースとブドウで、タルト風に仕上げてみたの』

『美味しそうね。さすがだわ』

『ちょっと待ってイオリ様!私達まだポレイリ料理を食べてないです!』

『大丈夫だよノーマ。ちゃんとみんなの分もある』

『やった!』


 その後再度起こった地震やら、突風やらで一瞬ホール内は騒然となったが、概ね作戦会議は和やかに進んだ。


 結果、ポラーゴ村レストランの総合プロデュースを、アルページュが引き受ける事になった。

『言い出したのは私だから、当然よ』

 そして、

『では当面の資金は私がなんとかしましょう』

とエルブジが申し出てくれた。

『私の一族はこちらで広く事業を手掛けておりますので。話を通しておきます』


 やっぱり只者ではなかったな…エルブジ。


『メニュー開発は、イオリにも協力して欲しいんだけど』

『もちろん』

『それと、デザートメニュー、リドにお願いできないかしら?』

『乗りかかった船だし。いいわ。引き受けるわ』

『ほんとですか?』

『すげえ!』

 思わぬパティシエ世界チャンピオンの参入に、ティムロー達が色めきだった。


『ただし…ワイン作りに私も参加させてもらうわ!』


 そういういきさつで、リドもポラーゴ村にやって来たわけだ。


 ティムロー達の説明に、村の年寄り達は意外にも乗り気な反応を見せた。


「村の未来の為には、ごちゃごちゃ言い訳をしていても始まらん。可能性があるなら、なんでもやらねばな」


 素敵なお爺さんだ。


「そういう事だイオリ。ワイン作り、村をあげて協力させてもらおう。まず何から始めればいい?」


 ティムローの顔つきが、やる気の満ちたいい顔になっている。

 ならば俺も全力で打ち込むまでだ。


「じゃあまずは…」

「まずは?」

「でっかい桶を作って貰おうか」

「は?桶?」


 ポラーゴ村ワインプロジェクトは、ティムローの訝しげな表情でスタートした。


 

 

 

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