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低能な料理番  作者: ミツル
第四章 帝国の美魔女

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38

 ホテルに帰ると、待ち人が到着していた。


「ヤッホー、ノーマ!」

「リド!なんで?」


 ロビーのソファで、リドがヒラヒラと手を振っている。


「今回の助っ人に、俺が頼んで来てもらったんだ」

「皇帝がおでかけ中で暇だったから、ちょうどよかったわ」


 因みに昨晩のうちにタムルを飛ばして、早朝ラサイにお迎えに行ってもらった、という段取りをしたのはエルブジだ。


「道具はひとしきり持ってきたよ」


 大きな皮のトランクをぼん、と叩く。

 それとは別に、衛兵のサーベルくらいの長さはありそうな麺棒をリドは抱えている。


「私をわざわざ呼び出したって事は、お客様が多いんでしょ。大量に仕込むのかなと思って」


 さすがだ。察しが良すぎて怖いくらいだ。


 そんなリドが、どうして皇帝の気持ちには気づかなんだろう…


「それよりも…」


 リドは立ち上がると、つかつかとノーマに近付いた。


「ノーマ、どうしてそんなの抱っこしてんの?」

「えへへ。かーいーでしょう」

「ブヒ?」

 ノーマの胸で、ポレイリが鳴いた。


 実はあれからずっと抱っこしっぱなしなのだ。


 通常採取が済んだポレイリは、速やかに砂漠に還される。

 そういうルールらしい。

 理由はいくつかある。

 一つはもちろん自然保護の為。もう一つは人に飼われたポレイリは、しっぽの玉を作らなくなってしまうから。そしてもう一つ、あくまでもポレイリからは恵みを頂いていて、その立場は対等のものだという、白の番人達のイデオロギーに基づくもの。


 では何故いまこの可愛い貯金箱が、ノーマの胸に埋もれて、気持ちよさそうに寛いでいるのか。

 

 それにも理由がいくつかある。

 一つは、このポレイリの背中に、引っ掛かれたような傷が残されていたこと。どうやら最近外敵に襲われたらしい。それほど深い傷ではないが、厳しい自然界ではそれでも致命傷になりかねない。そういう場合、白の番人達はポレイリを保護して治療してから群れに帰す。

 

 そして一番大きな理由がある。


 ポレイリが、一瞬でノーマに懐いてしまったのだ。

 引き離そうとすると、鳴きながら暴れてノーマの胸から離れようとしない。

 

 お前さてはオスだな、と思ったがどうやらそういう理由ではないらしい。


 元々ポレイリは強い生き物ではない。砂漠では常に様々な肉食動物に狙われていて、群れの移動範囲が異常に広いのも、その外敵から身を守る為の手段の一つだ。

 それ故に自分達に害を及ぼさないが強い個体、というのに特に敏感で、よく超大型の草食獣(ビホゲルという砂漠を泳ぐ生物がその代表らしい)の傍について移動する習性があるらしい。


 つまりノーマは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、と認識されたわけだ。


 なかなか見る目があるな、ポレイリ。


「でも、勝手に連れてきたら白の番人が黙ってないでしょ?」


「それならば大丈夫だ」


 エルブジの後ろにいたカーサが答えた。


「え、白の番人?こんな所に来るなんて珍しい」

 どうやらリドは白の番人について知識があるようだ。


 カーサがついてきたのは、もちろんポレイリの為。それと、

『お前がポレイリの肉でどんな料理を作るのか是非見てみたい』

という理由からだ。

 

 どうもこの番人、俺の正体になんとなく気付いてるっぽい。


「私が許可をした。このポレイリは現在保護対象だ」

「へぇ、あなたそんな決定が出来る番人なの?かなり若そうだけど…」

「そうだな…」


 カーサが、頭の麻布を解いて素顔をさらした。


「ふわ~」

 思わずリドが感嘆した。


 そこにいる誰もが同じ感想だった。

 漆黒の髪、褐色の肌。

 そして、凛とした美しい顔つき。

 (想像はしていたが)カーサは、物凄い美人だった。


「白の番人現族長である私の決定だ。何も問題はない」


「ふわ~」

 今度は俺が思わず感嘆した。


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