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低能な料理番  作者: ミツル
第四章 帝国の美魔女

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「へえ、言うじゃないか!」

 例の背の高い若者が、腕まくりをしながら前に進み出た。

「上等なのは見てくれだけじゃなく、度胸もすごいってことか?」

 

 凄んで言ってるがセリフがほぼ褒め言葉なんだよな…


「あらぁ、あなたこそ見てくれだけじゃなくて、頭の中も野蛮なのねぇ」

「な、なんだとお!」


 アルページュの才能が爆発したところで、ティムローが掌を上げて男を制した。


「やめなさいアトミクス。私達は争い事に来ているわけじゃないですよ」


 そう言うとティムローは階段をゆっくりと上がっていき、アルページュと対峙した。

 

 不必要に距離が近い。


「美しいお嬢さん」

「アルページュよ」

「ではアルページュ、つまり君は私達となんらかの勝負をして、君が負ければノーマを引き渡してくれると、そういう事を言ってるんだね」

 

 言いながらティムローはどんどん顔をアルページュに近付けていく。

 

 それに合わせて、アルページュは不快そうにどんどん顔を引いている。


 いや距離感…

 

「いきなりあの距離感ないよねー」

「…だからそういうところなのよ」

 

 ラサイとノーマの評価を聞くまでもなく、アルページュの表情を見ればわかるのだが、どうやらティムローは特に女性からの評価を下げるスキルに長けているようだ。


「で、受けるのかしら?」


 逃げられない言い方というのは存在するんだなぁ… 


「いいでしょう。受けて立ちましょう」


 アルページュとティムローが同時にニヤリと笑った。

 

「で、その勝負というのはどういうものですか?」


「イオリ!いるんでしょう?」


 いるんでしょうも何も、最初から確認してたんだろうに…


 俺はノーマとラサイを鉢植えの陰に押し入れる様に隠しながら、歩み出た。


「ああ?お前誰だ?」

 ティムローは不機嫌そうに聞いてきた。


 相手が男だと態度が変わるんだな…

 そういうところだぞ…


「彼もノーマの連れの一人よ」


 アルページュが手招きしたので、俺は男達の差すような視線の間を通って階段を登った。


「彼と私は料理人なの。特に彼は凄腕の料理人よ」

「ほお…それで?」

「私達が貴方達に料理を振舞うわ。その料理で貴方達全員を感動させる事が出来たら、私達の要望を聞いて貰うわ」

「感動しなかったら?」

「その時はノーマを焼くなり煮るなり好きにすればいいわ」


 その瞬間鉢植えの葉の隙間から、燃えるような赤い双眸が見えたが、アルページュの態度は一ミリも変化しなかった。


「判別はどうされるのです?私達がシラを切れば済む事ではないのですか?」


 お、ティムロー、自らそれを言うとは意外と正直者だな。いやそれともバカなのか。


「あらぁ?」


 アルページュはわざとらしく驚いたように見せた。


「貴方達全員転移竜なんでしょう?しかも若い人ばかりだわ。私達の料理を食べて、感情を飛ばさないわけがないもの」


 なるほど、そういう事か。

 確かにそれなら一目瞭然だが、言い方だ…


「こいつ!もう勝った気でいやがる!」

 アトミクスが吠えた。


「食材は貴方達が好きに選んでいいわ。そうね、明日のディナーという事でどうかしら?」

「ほお、いいですね」


 ティムローがアトミクスに目配せをした。


「おい、お前ら、今日の所は一旦帰るぞ。明日改めてごちそうになるとしよう」

 アトミクスの号令で、若者たちは一斉に踵を返し始めた。


「では…」

 振り返ったティムローの目には意地悪そうな色が浮かんでいた。


「明日朝一番に、村の朝採りブドウを届させましょう。それを使って料理を作って頂きたい」


 え?ブドウ?


「いいわよ。任せて頂戴」


 任されちゃったよ…


 勝負の詳細が決まったところで、ティムローが俺の目前につかつかと寄ってきた。


「ところでお前、ノーマのなんなんだ?」


「イオリはね、ノーマのいい人よ」


 アルページュウウウウウウウウウウウウ!


「ああ?」

 

 ティムローの血走った目が、俺の顔数ミリの距離まで迫ってきた。


 だからそういうところだぞ、ティムロー君…



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