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なろうラジオ大賞6

お弁当、こ弁当

作者: 壊れた靴

 ある弁当屋では二人の若者が働いていた。

 血縁関係がないにも関わらず、瓜二つと言える程似ていたが、大きさだけが一回り違っていた。ちょうど、同じ人間の縮尺だけを変えたようである。

 ある常連客が二人を、お弁当、こ弁当と呼び始め、いつしか他の客もそう呼ぶようになっていた。

 昼のピークを過ぎ、客が途絶えた頃、カウンターに立つ二人のうち、こ弁当が口を開いた。

「以前から思っていたのだが、こうもそっくりな俺たちは、大きさも同じくらいになる可能性があったのではないか?」

「かもしれんな」

「ということはだ。違いは二人の育った環境にあるのだろう。生まれ育ったのはどの辺りだ?」

「この辺りだ」

「俺もそうだ。ベルクマン氏のせいで、てっきり寒い土地の生まれなのかと思ったが」

「個体差にも適用できるのか?」

 二人が笑う。

「子供の頃から大きかったのか?」

「うむ」

「運動なんかはしていたのか?」

「遊び程度だ」

「俺もその程度だな。睡眠時間は?」

「平均的だろう」

「俺もそう変わらないだろうな。では、やはり食べ物の影響が大きいのだろう」

「ふむ」

「そこで聞いてみたいのだが、お前は子供の頃、何を食べていたのだ?」

「何と言われてもな」

「たとえば牛乳をたくさん飲んでいたとか、そういったこともないのか?」

「さほど飲んでいないな」

「特定の物を沢山食べていたということはないのだな?」

「そうだ」

「俺も偏った食生活ではなかったはずだ。単純に量の問題か? 食べる量は多い方だったのか?」

「人並だったと思う」

「では寧ろ俺の方が多いかも知れないな。今でも賄いの弁当はお前よりも一つ二つ多く食べているしな」

「多弁なだけにか」

 二人が笑う。

「案外、その影響かもしれないな」

「と言うと?」

「つまり、俺は喋ることで熱量を消費してしまうのだろう。節約のためにサイズを維持したのではないかな」

「なるほど?」

「イメージとしても、大柄な人は無口で、小柄な人の方がお喋りではないか?」

「思い込みだろう」

「客観的なデータとして存在しないだろうか」

「基準が難しいだろうな」

「それもそうか。それにしても腹が減ったな。賄いは、いつも通り煮物弁当だな」

「うむ」

「なんでメニューに残してるんだろうな。地味すぎるし、大抵売れ行き最下位なのに。俺たちの名付け親が毎回頼むからか」

「だろうな」

 そこに店の女将が現れた。二人に代わってカウンターに立つと、二人を睨みつけた。

「あんたらは、掃除」

 二人は笑った。

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― 新着の感想 ―
地元にまだ会ったこともないのに、市内に同い年で高校生時点で190cm以上の長身で私に瓜二つという人がいるそうなので、ついこの二人に感情移入してしまいました。 (出身が一緒、高校で一緒という、まったく接…
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