対外業務も増える
そうこうしているうちに、また本家から苦情が来た。
そりゃまあ、最低限などと言いながら、三カ国も攻め取ったら、怒られもするだろう。
しかも今回は、京の都にも強い支配力を有する三好との戦いである。
実際、一条本家は屋敷を三好軍に取り囲まれ、御所に逃げ込んで難を逃れたらしい。
さすがに一条を名乗るだけあって、御所は目と鼻の先ではあるが・・・
後に十三代将軍、足利義輝を暗殺してしまう三好三人衆であるが、さすがに帝に手を出すことはできず、また、三好派の公家たちの取りなしもあって、何とか事なきを得たらしいが、当然ながら本家が激おこである。
すぐに都に出てきて釈明しろと書状が届いたが、三好の勢力圏に入ることは物理的に叶わないので、「折りを見て」とお茶を濁しておいた。
おそらく、史実通りなら今回の三好攻めは後々高い評価を受けることになるだろう。
あと一年の辛抱だ。
さて、一条家周辺の状況であるが、淡路の対岸である播磨は、三好の実質的な従属勢力である赤松や別所がいる。
その北の丹波の諸将は三好と対立関係にある。
摂津は基本的に三好が抑えていることになっているが、ここの各城主は独立独歩の気風が強い上に、石山本願寺も存在する。
和泉は畠山と三好の係争地と言っても良く、始終小競り合いが起こっている。
そういう訳で、どこも淡路を脅かす決定的な勢力ではないが、油断もできない。
そして、三好であるが、新当主義継と三好三人衆の仲は微妙である。
その上、足利義輝も独自の政治行動を取り始め、幕府権力の強化に乗り出し始めた。
そして、周辺の勢力との対立構造はそのままに、松永久秀は半ば離反しているに等しい状態である。
つい先日までは、全盛期を迎えていた三好氏だが、四兄弟と嫡男が僅かの間に全て亡くなったがために、窮地に立ってしまった形だ。
その他に、備前や備中は小領主が小競り合いを繰り返している状況で、これといった大きな勢力はない。
こういった状況下で、本州上陸をしたくない一条家の戦略としては、深入りしないのが一番であろう。
気持ちとしては、反三好の将軍家、松永、畠山に協力したいところだが、かといって出兵要請などが来ても面倒なだけだし、そんなことで兵力を消耗したくもない。
どうせ、奴らは不毛な争いしかしていないのである。
しかし、これだけ大きくなった一条家には、畿内から九州まで、様々な勢力から様々なお誘いが来る。
『面倒よのう。放っておいてくれて構わんのに・・・』
『皆、一条家の助力を得たい気持ちは分かる。』
『巻き込みたい意志をひしひしと感じるぞよ。』
『だが、あまりに無下に扱っていると、今度は皆が手を組んで攻撃して来かねないしな。』
『そうよのう。三好と本格的な戦にでもなろうものなら、大人しくしていた毛利がいきなり牙をむくということもあり得るのう。』
『その牽制役としての大友も、今一つピリッとしない。今の所は当家に隙は無いし、三好も現状維持で手一杯だから安心できるが、一歩間違えればたちまち窮地に立たされる。』
『かくいう三好がそうじゃからのう。』
『そういうことだ。毛利も備前か播磨辺りまでは勢力圏に含めたいだろうし、そこには目立った勢力はいない。さあて、彼らがそこまで進んだ時に、畿内の勢力がどう出るかだな。』
『しかし、織田が出てくるのであろう?』
『その予定だ。とにかく美濃を制圧してからの彼の動きは尋常ではないからな。』
『そちがいると、先の事が分かるので便利じゃのう。』
本当に一条家が触れない部分は史実通りに進んでくれるので助かっている。
ゲームだと、突然外交関係が破棄されたり、さっきまで激戦を繰り返していた勢力同士が同盟を結び、それまでの遺恨が無かった事になっていたり、あり得ないことが結構起きるのだ。
それがゲームを面白くするための演出であることは理解するが、それまでの外交関係を前提に戦略を立てる身からすると、たまったものではない。
まあ、実際の人の思考は、ゲームを遙かに凌駕してはいるが・・・
『引き続き、大友とは友好的に、毛利とは対立しないように心掛け、守りを固める。どうしても阿波や讃岐の国人衆がこちらに定着するには時間がかかるからな。』
『今が不安定であるのは分かるぞ。それに兵力も十全ではない。』
『そうだ。三好と比べればずっといい状態だが、それでも、今は戦など考えない方がいい。』
『では、麿の得意な内政で手腕を発揮するかの。』
『少将は内政が得意だったのか?』
『またそのようなことを言う。麿の高い知識と教養は今まで散々見てきたであろうに。』
いや、見てないぞ。
確かに政治力が一番高いことは認めるが、それでも22だ。武辺者でももうちょっとある。
『まあ、これから追々納得させてみせるのじゃ。』
まあ、もうしばらくは放蕩生活に入りそうに無い、ということで良しとするか・・・




