不在の間の仕事を片付ける
さて、留守は羽生監物に任せていたとは言っても、仕事は大量に溜まっているし、戦後処理やこれからやるべき事もある。
当分は忙しいのを覚悟しておかなくてはならない。
史実では、若い頃こそ熱心に当主をしていた兼定だったが、次第に政治に飽き、放蕩生活を送るようになったと言われている。
実際は脚色された歴史が伝わっているのだろうが、このゲーム内の兼定は、放っておいたらすぐにそうなりそうな性格設定である。
なので、サボらないよう、しっかり指導しながらのお仕事である。
『もう飽きたぞよ。何で勝ったのにこんな目に遭わないといけないでおじゃるか?』
『文句言うな。負けたら最後は命が無かったかも知れない。そういう世界に生きてるんだから。』
『もう、一回くらい負けたからと言って、死ぬほど小さい家では無いぞよ。』
『この家の強さは、家柄と神懸かりという、何とも当てにならない物で支えられている。負けたら途端に窮地に追い込まれるぞ。』
『分かったぞよ・・・』
などと、心の中で会話しつつ、仕事を進めていく。
まず発出したのは、城郭整理令だ。
一国一城令ほど極端なものではないが、とにかく城が多すぎる。
実際には作っては壊し、といった感じなのだが、とにかく非効率で不経済なのだ。
そんなことをしているくらいなら堤防でも作れ、といいたくなるほどの現状である。
そこで、各城主の居城となる城を重点整備し、それ以外は地区ごとに支城を配置する場所を決め、そこだけを整備することにした。
これは、今後の戦を視野に入れた物で、防衛ライン上にある重要な城の周辺のみ、大軍を収容するために支城を設置するという考えだ。
例えば、来島城なら、対岸の糸山や海峡を見下ろす遠見山、最寄りの港である波方、海峡の入口である高縄半島の先端、これらは来島から全て一里以内にある。こういった所のみを現状より整備した上で、維持管理し続ける考えだ。
また、違う例で言えば、現状で土佐国内には数百の城がひしめき合っているが、これを一条直轄の城として管理するものを安芸、香宗、岡豊、高知、朝倉、蓮池、須崎、姫野々、中村、板島の10として整備し、その他の領主の城として、野根、奈半利、馬路、夜須、豊永、本山、本川、佐川、池川、久礼、窪川、三崎などを整備させるというものである。
これ以外に小領主の城は残るが、それは彼らの家なので仕方無い。
この政策は、これまでのような領地拡大から、領地防衛主体に舵を切ったものと言える。
続いては、水軍の整備である。
河野、津島、御荘、来島、能島、淡路の海賊衆と浦戸、海部、撫養の有象無象は全て、一条家臣団に組み込む。津島や御荘は抵抗するだろうが、そこはゴリ押しである。
法華津は今回例外としたが、ここは他に比べて格段に力があるので、押さえつけられない。
そこで、第一弾として、法華津支配下の来島・能島を再度切り離すことで、将来の法華津水軍取り込みの布石とした。
この結果、それぞれの規模こそ小さいものの、全軍集結すれば瀬戸随一の規模になった。
運用は今まで通り、足の速い小舟中心で、信長が作らせたような安宅船や鉄甲船などの建造予定は無い。
あんなもの、維持費ばかりで通常はお荷物なのだ。
そして、現在進行中の防衛拠点づくりとしては、勝山(松山)、中村御所を整備しているほか、これから徳島城と高知城を建設し、白地と洲本を大々的に拡張する。
そして、近江から安太衆を招聘し、高石垣を要所に備えることにした。
こういった城を皆に見せれば、今の数を整備・維持できないことを理解してもらえるだろう。
また、今回兵力増強に効果のあった一領具足を更に推進するとともに、直轄地における兵農分離も進めていく。
内政面においては、河内(高知)と徳島で干拓を始め、街地の確保に乗り出す。
これらは江戸初期に行われたものだから、今の技術でも可能だろう。
また、讃岐では、塩田の本格整備に入る。これも大きな収入の柱だ。
更に、麦の栽培も奨励した。
土地は広いが、水は少ないのである。
阿波においては、藍の生産を奨励する。
勝瑞城付近は現在も藍住町と呼ばれる阿波藍の一大産地だ。
これを、既に進めている絣の原料にする。
堤防は、吉野川下流域という、とんでもなく大規模な課題が横たわっている。
正直、一条家の実力では手に余りそうだが、これが完成した際の恩恵も莫大なものがある。
史実通り、川を付け替えて海までスムーズに流れるようにした方がいいと思う。
それを踏まえた城下町の設計となる。
長宗我部氏は、落ち着くまでは勝賀城を拠点にするようだが、ここは高松市街地の西の外れである。
より中心部に近い紫雲山にある室山城にゆくゆくは拠点を移し、城地を現在の栗林公園に確保するのが現実的だろう。
『しかし、直轄地だけでも大変なのに、これを四国中に下知するとなると、一体いつまで掛かることやら・・・』
『身を守るために必要なことだからな。避けては通れん。』
『ちょっとは遊んでも良いかのう。』
『ちょっとだけなら良いが、今日は真面目にやれよ。』
『分かったぞよ・・・』
これら大量の仕事を政治力22を騙し騙し操作しながら指示するのは大変であるが、完成すれば見違えるだろう。
何と言っても、他家に先立ち、一足先に天下太平を実現したアドバンテージは大きい。




