久しぶりの休日
戦も終わり、久々の休みを楽しむ。
「みんな、いつの間にか大きくなったのう。」
峰は半年、鞠は一歳を過ぎ、よちよち歩きができるようになっていた。
志東丸はもうすぐ三歳で雅も四歳半である。
「しかし、鞠が麿の顔を見ると、泣き叫ぶのは、ちょっとのう・・・」
「致し方ございませんわ。半年近く留守にしておりましたもの。」
「また、慣れてくれると良いのじゃがのう。」
「大丈夫ですよ。すぐにととさまに甘え始めると思いますよ。」
「もう当分、戦は無いでおじゃろうからのう。」
中村でも二月は寒い。なので今日は室内だ。
「お秀も大変な時におらぬで、申し訳なかったのう。」
「いいえ。御所様がご無事でお帰りいただけただけで、十分にございます。」
「それにしても、さすがは御所様でございます。あっという間に五カ国の太守となってしまわれました。」
「そうでございます。今や御所様の神懸かりは、誰もが知るところとなりました。」
「それに、宇都宮も長宗我部も随分大きな褒美をいただき、とても嬉しゅう存じます。」
「はい。最早日の本で御所様に敵う者なしと、お方様と話していたところです。」
「いやあ、それは面はゆい。麿ならば当然とはいえ、二人にそう褒められると、さすがに舞い上がってしまうのう。」
「この子達もきっと、良い領地や嫁ぎ先が待っていることでしょう。」
「そうよの。蔵入地は沢山あるからのう。まだやることは沢山あるでおじゃるが、もっと豊かになってもっと強くなって、子らに良い思いをさせてやらねばのう。」
「ありがとうございます。私共も誠心誠意、お尽くしいたします。」
「有り難いのう。それで、子供たちに何か変わったことは無かったかの?」
「お雅は書を習い始めましたし、志東丸はやんちゃですわ。お鞠は何を言いたいのかは感覚で分かるのですが、まだまだですね。」
「志東は万千代とは全然違うのかのう。」
「そうかも知れません。でも、勇ましいのも父親譲りなのではないでしょうか。」
「そうよの。麿とお松の血を受け継いだのであれば、武辺者になっても何らおかしいことではないぞよ。」
お松似に決まってるだろう・・・
「お峰は良く泣き、よく笑います。」
「赤子は元気が一番じゃ。身体が弱いのは困るでの。まあ、長宗我部の血を受け継いでいるなら、何も心配はいらぬぞよ。」
「ありがとうございます。」
またデレてる・・・
「しかし、四人もいて、何となく御しやすいと思ったら、男が志東だけなのじゃのう。」
「そうですわね。では、次は男の子を頑張ってみましょう。」
「お松は五人目じゃの。」
「秀も早く二人目を頑張ります。」
「分かった。分かったぞよ・・・しかし、子は良いものよのう。麿も」
何か、兼定のクセにモテてるのは納得出来ないが、それ以上に兼定が意外に家庭的なのに驚く。
もっと軽薄なキャラ設定では無かったか?
『何じゃ?そこはかとなく不満そうじゃな。』
『そりゃそうだろう。我は一体、何を見せられているのだ?』
『今更じゃのう。我が家はいつも朗らかではないか。』
『それがどうにも違和感があってな。あの女狂いの少将が、これでは愛妻家のように見えるではないか。』
『まごう事なき愛妻家じゃぞ。むしろ、それ以外の麿など、想像できぬぞよ。』
『まあ、悪い事じゃないからなあ。しかし、この家が理想の家族みたいな雰囲気なのは、ちょっと納得がいかん。』
『妬くな妬くな。どうせ麿が羨ましいのであろう?そう言えば、悪霊の家族はどうした。』
『伊弉諾と伊弉冉か?』
『そんな訳なかろう。悪霊の家族じゃ。』
まだ信じてないのかよ・・・
『神としての家族以外はおらん。』
『家族がおらぬとは、寂しいのう。泣いても良いのじゃぞ。』
『何故、そうなる。』
『だって、そち以外に麿に話しかけてきた者がおらぬであろう?一人は寂しいのではおじゃらぬか?』
そう言えばそうだ。
夢の中でゲームしている気で浮かれていたが、もう、かなりの時間、兼定と二人きりの時間を過ごしている。
でも、両親や兄弟は元気に決まっているし、独身だからそういった心配はない。
仕事だって、とうの昔に諦めがついているから、今更不安もない。
『まあ、余計な心配はいらぬ。神は全てを超越した存在なのだから。』
『そうじゃの。そちが神であれ悪霊であれ、人を超越していることに、変わりは無いからのう。』
コイツが、たまにこういう知的なことを言うところも納得できんが、まあ、今日くらいはコイツを怒らせるのは止めておこう。
それにしても、私はコイツがいないと孤独なんだなあ・・・




