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一条兼定なんて・・・(泣)  作者: レベル低下中
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春爛漫になる?

 春本番というより、最近は初夏を思わせる日が続く。

 田植えも始まり、食卓にも初鰹なんてものまで登場した。

 やはり、当家が金持ちということもあるだろうが、食は京の本家を上回る。


 そんな食事の場に、お秀が居ることも最早日常の一コマだ。


「お秀、今日はあなたが御所様の隣です。」

「しかしお松様・・・」


『そうだ少将。今日はお秀と祝言を挙げてから丁度一年じゃないか。』

『そうじゃったかのう。』

『これだから知力7は・・・』

『知力は関係ないでおじゃろう。』

『ならば記憶力も7しか無かったか・・・』

『麿は記憶力は良いのじゃぞ!その証拠に今、思い出したぞよ。』

『それはいいから、この一年を労い、感謝の意を表すのだ。』

『何故そんなことをするのじゃ?』

 この時代にそういった風習は無かったのか?


『いいからやれ。お秀が喜ぶぞ。』

『そうか。ならやるぞ。』


「そうでおじゃるな。もしお秀さえよければ、今日は主役の座で食するが良いぞ。それにしても、一年か。あっという間でおじゃったのう。慣れない公家の生活であるが、よう頑張ったぞよ。さすがはお秀じゃ。」

「もったいなきお言葉でございます。」

「御所の落ち着きも、長宗我部の最近の目覚ましい働きも、全てそなたあってのものよ。麿は深く深く感謝しておるぞよ。」

「それは・・・まだまだ不十分ではありますが・・・」

 俯き加減でそこまで言うのが精一杯のようだ。

 しかし、この変化は喜ばしい。


「では、今日は祝いの席ぞ。皆、楽しゅう食すとしよう。」

 こうして、いつもより少し、いや、かなり賑やかな夕食となった。

 子供たちも、「祝いの席」は騒いでいいと学習しているようだ。

 彼らがいい緩衝材となって、和やかに時が過ぎた。


 そして夜は更け、兼定は眠りにつく・・・

 と、襖が開き、人が入ってくる。兼定が目を開いたので、それがお秀だと分かった。


「うん?お秀か。」

「はい・・・」

『のうのう悪霊よ、起きておるか!』

『もちろんだ。』

『どうしよう・・・』

『どうしようって何だ!情けない。』

『いや、そうは言ってもこんなこと聞いておらぬぞ。まあ、聞いていたとしても心の準備などできなかったでおじゃるが・・・』


「あの、御所様。ご一緒しても・・・」

「ああ済まぬ。今、布団を準備させるでの。」

「いいえ、御所様・・・その、布団は一つで・・・」

『おい少将!別の布団は覚悟を決めてきた妻に対して、いささか失礼じゃないか?』

『どうすれば良いのか麿にも分からぬのじゃ!』

『取りあえず、一緒に寝ろ!夫婦だろ。』


「良いぞ。こっちに来るでおじゃる。」

「はい・・・」

「そうよの。一年越しにしょ」

『少将!』

『何じゃ!』

『そんな無粋な言い方はないだろ!もう少し女子が喜ぶ言い方をしろ!』

『わ、分かったぞよ。』


「お秀よ。麿が至らなかったばかりに、そなたにも辛い思いをさせてしもうた。それでも、これからの長い人生、共に歩んでくれると、有り難いぞよ。」

「私こそ、夫に対して失礼ばかり。誹る声があったのも仕方の無いことでございます。」

「それは麿の力不足でもある。これからは二人で力を合わせ、足りないところは叱咤してくれると嬉しいでおじゃる。」

「私の方こそ、至らない者ですが、末永くよろしくお願いします。」

 そうして身を寄せて来た彼女を強く抱きしめる。


 彼女は静かに涙を流しているようだった。

 兼定はそんな彼女の頭を抱き寄せる。コイツ、やればできるじゃないか。


「麿は今、幸せでおじゃるよ。」

「そう言っていただけて、本当に嬉しいです。その、来て・・・良かった。」

 デレた。ついにゾーンに入った。


「麿は気が利かぬゆえ、そなたにいらぬ心配を掛けてしまったのう。まこと済まんことをした。許してたもれ。」

「いいえ、秀も今、とても幸せにございます。」


 こうして、長く凍っていたわだかまりは融け、二人の初夜は本当に信頼し合う者同士のそれであった。


 不器用な者同士、上手く補い合って欲しいと心から思える、いい夜だった・・・


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