内政が少しづつ実を結び始める
今年は、国親が亡くなったこともあり、いつもより評定の開催が遅くなった。
しかし、農繁期前に開催できたのなら、大きな影響は無い。
そして、採択案を持って宗珊が兼定へ報告に来る。
「一昨年の大嵐の被害は片付いたかのう。」
「峠道については、七子峠や三坂峠で一部付け替える箇所がございまして、それについてはまだ一年は先になるかと存じます。しかし、田畑についてはほぼ復旧し、堤防も順調に整備が進んでおります。民からの評判も良く、特に伊予では領主が替わって良かったとの声が世辞抜きで聞こえます。」
「これこそ善政の結果よの。河野だってやる気はあったろうが、あの状態ではとても出来なかったであろうからのう。」
「その通りでございます。それと、瀬戸が穏やかになったことで、塩の生産も増える見込みでございます。」
伯方の塩だって採れるようになった・・・
「それも大きな金を産むのう。」
「さらに言えば、今年から茶摘みが始まります。」
「もうできるのか?」
「今年は試しに行い、来年以降の出来映えを占います。それと、次の冬には蜜柑も収穫できると踏んでおります。」
「こちらもまだ若木ゆえ、まだまだであろうがの。」
「ええ、既に鰹節と陶器、清酒は当地の産物として世に出ておりますし、御所様のお陰をもちまして、中村も大変潤って来ました。」
「まだ、結んだ実は小さいが、これらが定着し、職人が増え、京や堺で評判を呼べば、さらに当地は豊かになろう。」
「はい。それと合わせて、今年の米や雑穀の収穫量にも期待できます。」
「うむ。そうして稼いだ富が次の領地を得る力となろう。これの繰り返しじゃな。」
「おっしゃる通りにございます。この宗珊、御所様の名君ぶりにいたく感激しております。」
「宗珊、褒めすぎであるぞ?」
「いえ、まこと良き主を持ったと思います。」
「それで、評定の結果はどうなったのじゃ?」
「民部からは、今治、西条に次いで、三津浜、新居浜、川之江の港整備について提案があり、これを家老衆が承認しております。また、ルイス・デ・アルメイダ殿から病院なるものの建設について要望があり、既に建設が始まっている豊後府内に人を寄越して、どのようなものかを調べさせることにしております。」
「ほう、また新しいことをするのじゃな。」
「それと、琉球にも人を送り込んで交易ができるよう、先方と交渉するとのことです。」
「まあ、何が交易品として通用するかを調べねばいかぬからのう。よいぞ。任せた。」
「それと、兵部からはフランキ砲の追加購入について提案がございました。」
「そこまでの金は無かろう。」
「はい。後回しもやむなしと考えております。」
「試射はどうなった?」
「はい。成功はしたものの、南蛮渡来の物と比べると、今一つだったようです。」
「構わぬ。麿に改良の知恵がある。」
「何と!さすがは神懸かりの御所様にございまする。」
「任せておけ。すぐに南蛮の物を超えて見せようぞ。それで、鉄砲は千を超えたかのう。」
「はい。千二百がすでにあり、長宗我部や安芸も購入を始めたようでございます。」
「まあ、今までの戦振りを見れば、欲しくなるのは分かるぞよ。他にはあるかの?」
「式部からは、当初の予定通り、4月10日に歌会を行うとのことです。」
「都からは誰かが来るのかのう?」
「今回はどなたも来られないとのことでございます。」
「まあ良い。そうやって本家を招待し続けることに意味があるのじゃ。」
「後は申次より、大友殿より、停戦の仲介に謝意を示されたそうです。」
毛利との和睦は、史実より若干早いか・・・
しかし、これで毛利への義理は果たしたし、大友に対しても、伊予侵攻時の陽動に対する返礼にはなっただろう。
「それは要らぬ戦を避けるに役立つのう。」
「最後に寺社方から、宿毛で教会の建設が始まったそうです。」
「えらく時間が掛かったのう。」
「はい。何でも資材と大工が特殊で、なかなか集まらなかったそうです。」
ということは、南蛮寺じゃない??
「うむ。では皆へ、働きに満足しておると伝えてたもれ。」
『これで少しは金子に余裕ができるのう。』
『そうすれば兵糧も買えるし、兵も増やすことが出来る。』
『賄賂も贈り放題じゃし、美味いものも食えるのう。』
『まあ、使い道は宗珊とよく相談して、皆から不満が出ないようにしろよ。』
『それではちっとも自由が無いでおじゃる。』
『いや、本家よりよっぽど自由に金を使ってるじゃないか。』
『そうかのう・・・』
『それより、京に行く万千代に何か買ってやれ。』
『そうじゃ。年明けじゃったな。』
『それを見れば父と母を思い出すような物は良いぞ。お秀にも頼めば良い。』
『そうじゃの。そういう言い寄り方もあるのう。』
何だよ、言い寄るって・・・




