表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一条兼定なんて・・・(泣)  作者: レベル低下中
62/241

元親、挨拶に来る

 さて、2月に入り、長宗我部家の家督を継いだ元親が挨拶に訪れた。

 前回の評定の際に、父の代理で来ていたので、およそ半年ぶりとなる。


「ようこそ参ったの。一条家当主として歓迎するぞよ。それと、宮内少輔殿のこと、お悔やみ申すぞよ。」

「お言葉、痛み入ります。御所様のお力添えあって此度、家督を継承しました。誠に有り難く存じまする。」

「良いのじゃ。何があろうと麿がそなたを支持するでの。父の後を継いで立派な当主として、また番頭としての働きにも期待しておるぞよ。」


「我が父は、権大納言様の頃より大恩を賜り、その後も変わらぬご厚情により、長宗我部の家は繁栄と安定を享受することができました。それがしも変わらず主家に忠誠を誓い、その覇道の一助となれるよう努めます。」

「げに頼もしいことよ。そちの才は麿も知っているつもりじゃ。じゃが今はまだ、家中をまとめる時期じゃ。急がず今は休むがよいぞ。」

「まこと有り難いことでございます。しかし、恩を返すためにはあまり暢気に構えている訳にもまいりませぬ。本日は、三好についてお話ししたき儀がございます。」

「ほう、早速でおじゃるな。」


「はい。まず、讃岐の財田と白地の大西については、先年の久米田の合戦で大きな損害を被り、主家に対して大きな不満があるやに聞きます。こちらの密使に対しても気が乗っている様子なれば、こちらに引き込むも容易かと存じます。」

「そうか。それは重畳よの。三好も相変わらず飯盛山に籠もって四国どころではあるまいし、阿波も実休がいなくなって混乱しておろう。」


「おっしゃるとおり、讃岐は十河孫六郎(存保)、阿波は三好彦次郎(長治)が治めておりますが、実際は元服したての者なれば、讃岐は各国人が好き勝手に、阿波は重臣篠原右京進(長房)や対立する守護の細川讃岐守(真之)らが入り乱れ、それを本家が介入できない状況で、乱れに乱れております。」


「いつぞやの河野のような惨状よの。しかし、阿波も讃岐も主力は飯盛山で畠山や六角とやりあっておるのであろう?」

「はい。有力者のほとんどが在国していないため、大きな戦になっていないだけで、火種が一つあれば簡単に崩れます。」

「その隙を突くのが一番よの。多少の無理は仕方無いことかのう。」

「兵糧の蓄え次第ではありますが。」

「それは依然として大きな悩みよ。それと、飯盛山での戦の行方もの。」

「その通りにございます。」


「では、引き続き弥三郎殿・・・・うむ、これはこちらの話を先にしておいた方が良いのう。」

「いかがいたしましたか。」

「実はのう。先般の海賊討伐を帝に奏上して、褒美として官位を賜ったのじゃ。」

「それはまことにもって目出度きことでございます。」


 本来、公家は戦事を嫌う。兼定が京都まで呼びつけられて散々嫌味を言われたとおりだ。

 しかし、朝廷は戦以上に海賊が嫌いである。

 これまで散々朝廷の物資を強奪され、海賊追捕の命を出したことも一度や二度ではない。

 藤原純友だってこの海域で反乱を起こしたものであり、その時の戦が村上水軍の勃興に繋がっている。

 という訳で、兼定は戦をしたのに珍しく褒められたのである。


 まあ、兼定は自分の出世のため、正三位辺りの位階を狙っていたみたいだが、これを必死に止めて、従五位下の官位を二つ入手したのであった。


「そこでじゃ。そなたに従五位下、宮内少輔の位を授けるぞよ。これは正真正銘、帝のお墨付きある大変な名誉ある職じゃ。本来なら父に間に合えば良かったが、すまぬのう。」


 宮内少輔は、長宗我部家が名乗ってはいるが、これは自称に過ぎない。

 当家で本物の官位を持つのは、西園寺実充や飛鳥井雅量、河野通宣くらいのものだ。

 そして、もう一つの従五位下、大膳亮は土居宗珊にあげた。


「これは・・・まこと身に余る光栄にございます。」

「これからはまごう事なき朝臣としての振る舞いも求められるぞよ。それと、世襲ではないゆえ、子々孫々まで功を成し、家を栄えさせねばならぬ。大きな責任と覚悟も必要なこと、よくよく身に刻み、職務に励むのじゃぞ。」

「まことこのような栄誉、一条家にお仕えしてこそと存じます。これからもこの長宗我部弥三郎の活躍、ご期待いただければと存じます。」

「もちろんじゃ。こちらこそよろしく頼むぞよ。」



『これで弥三郎にも恩が売れたのう。』

『ああ。あれは野心家だから油断はできんが、掴みとしては十分だろう。』

『そうよの。こういったことは予想もしない時に、予想もしない大きさであることが寛容じゃと、養父も言っておった。』

『その通りだな。』


『でも、麿も中納言あたりの位が欲しかったぞよ。』

『いい加減諦めろ。少将ならいつでも取れると言っただろう。』

『せめて中務卿程度にはなっても良いと思うのじゃ。』

『そこで三好よ。』

『そうなのか?』

『三好は二条家と繋がり、近衛家と対立している。』

『そうか!当家と双璧を成す近衛に恩を売れる絶好の機会では無いか!それはすぐに三好攻めじゃ!』

『待て待て。今すぐはダメだ。兵糧が十分で毛利が来ないと確信できてからだ。』

『中納言・・・』


 ホント、コイツこういうの好きだな・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ