家臣団の構築
中村に帰還して数日後、御所に土居宗珊を呼ぶ。
「此度も世を揺るがすほどの大勝、おめでとうございます。」
「うむ。さすがの麿も恐ろしさを感じるほど、上手くいったぞよ。」
「それに、論功行賞も見事な采配ぶりでございましたな。」
「そうでおじゃろう。だが、今日呼んだのは別用じゃ。まあ、これを見よ。」
「一条家中掟、家臣心得とありますが・・・」
「今後、これを当家の決まりとしたいが、宗珊の意見を聞きたい。」
「畏まりました。ふむ。まず、一条家臣を一門、譜代、直臣、陪臣、公家衆に分けるとありますが、これはどういうことでしょう。」
「一門は分かるでおじゃろう。当家では東小路、西小路、入江、勧修寺、渡辺じゃ。譜代というのは、父の代以前から当家に仕える国人衆で土居、為松、安並、羽生たち家老の他、敷地、源を指す。直臣は一条家直轄の家臣で依岡、加久見、小島、仁井田五人衆、立石、一圓、安芸、長宗我部、香宗我部、津野、片岡、西園寺、土居、河野、北之川、越智、法華津、宇都宮、河野(守護家)、黒川、金子を指す。」
「宇都宮や安芸は姻戚による盟約を交わしている家でございますが。」
「盟約を発展解消し、当家の傘下に置くのじゃ。」
「そのようなこと、できましょうか。」
「やらねばならんのじゃ。そして陪臣は一条家、一門、譜代、直臣の家臣じゃの。そなたの家臣や長宗我部でいう吉田や久武、片岡の下に付いた久万の大野や安芸の配下となった川之江の石川などじゃな。」
「安芸や長宗我部が言うことを聞くとはとても・・・」
「今やらねば将来もできぬぞ。そして麿の代は良いかも知れんが、何かあった際には国人衆が騒ぎ出し、河野や西園寺のように戦えずに瓦解する。」
「確かにそのとおりにございます。」
「そもそも今の世が乱れているのも、在地の国人が守護より強く、守護が幕府より強いことで統制を失った結果よ。」
「確かに、各地の戦乱を幕府に抑える力があれば、こうはなっておりませんが・・・」
「守護が落ちぶれたのも、名ばかりで実がなかったせいよ。下々が勝手に争い、生き残った強者が守護や守護代を倒す。それを認めておっては、いつまで経っても乱れた世は終わらぬぞよ。」
「それは、確かにそうでございますが。」
「今、勢いのある三好や毛利などは勝ち抜いて来た者で、その過程で破った相手を配下に収めてあの大きな領地を維持しておる。当家もそうしないと図体の大きな河野に過ぎぬ。」
「確かにそうでございます。」
「河野は決して兵がいない訳でも、弱兵だった訳でもない。しかし、いざという時に僅かな兵しか動員できなんだし、離反も相次いだ。あれではどれだけ広い領地と多くの兵がいても無意味じゃ。」
「分かり申した。しかし、これをどうやって通しまするか。」
「直臣を全て中村に呼んで納得させる。」
「納得しますでしょうか。」
「納得せんなら戦じゃ。麿は負けぬ。」
「分かり申した。そこまでのお覚悟であれば、この宗珊、御所様に賭けまする。」
「よくぞ申した。では、年明けにでも皆に来てもらおうぞ。」
そして、明くる1月20日。中村に直臣に指名された各氏が集まる。
「以上が説明したとおりじゃ。一条家掟書は、今後、他の分野も書き足していくが、最も喫緊の課題である家臣団の結成については以上じゃ。誰か、意見のある者はおるかの。」
「当家は御所様に妻を差し出しておりまする。また、安芸殿の奥方は御所様の姉君でございます。それにより盟約を結んだ我らが、御所様の下に付くという理解でよろしいか。」
「その通りじゃ。すでに遠江守の領地は麿の領地に囲まれておる。他に攻め入る所などあるまい?」
「それはそうにございますが・・・」
「それがしは、阿波に向けて攻めることができ申す。」
「単独で三好に勝てると申すか?そんなてんでバラバラなことをやっておったら、いつになっても四国を平らげることなどできぬぞ。」
「四国を・・・平らげる、ですか。」
「そうよ。そうすれば結果としてそなたらの取り分も増えよう。麿がこの家の舵取りを始めて二年でどうなった。麿のほかに、誰か同じ事ができるでおじゃるか?」
「・・・・」
「もし出来るというなら、掛かってくるが良い。必ず打ち破って、其奴の領地を皆で分け合うだけの事よ!」
「分かり、申した・・・」
皆、だんまりである。
そりゃそうだろう。
西園寺と宇都宮とか、長宗我部と安芸が手を取り合って一条に歯向かう姿など、想像できない。
それにこういう時、神懸かりの噂は本当に役に立つ。
少し、いや、かなり厳しいやり取りはあったものの、強引に話をまとめることができた。
そして、新たな誓約を交わして会議は終わった。
『のうのう、麿、格好良かったであろう?』
『我の台詞をオウム返ししていただけじゃないか。』
『そう申すな。麿が言うからこその説得力よ。』
『また調子に乗りやがって・・・馬に乗れないくせに。』
『それを言うで無い!今に見ておれ!』
『はいはい。期待せずに待ってるよ。』
それにしても、これってゲームなのに、こういった戦国大名と旧来型の大名の違いまで表現できてるのね。




